菱沼康介の、丸い卵も切りよで四角。

日々の悶々を、はらはらほろほろ。

クズはどっちだ? 『野獣の血』

2023年01月26日 00時00分33秒 | 映画(公開映画)

で、ロードショーでは、どうでしょう? 第2179回。


「なんか最近面白い映画観た?」
「ああ、観た観た。ここんトコで、面白かったのは・・・」

 

 

 

 


『野獣の血』

 

 

 

釜山の港町、ヤクザ稼業から足を洗おうとした男が二つの組の間に立たされるノワール。

キム・オンスのノワール小説を映画化。

 

監督・脚本はチョン・ミョングァン。
彼自身が韓国のベストセラー作家でもあるが、別の作家の小説を映画化。
1964年生まれの58才での商業長編監督デビュー作がジャンルものというのがグッとくるよね。

 

主演は、『善惡の刃』、『偽りの隣人 ある諜報員の告白』のチョン・ウ。
共演は、キム・ガプス、チェ・ムソン、チ・スンヒョン、イ・ホンネ。

 

 

物語。

1993年春の韓国・釜山の寂れた港町クアム。
養護施設で育ったパク・ヒスは、ホテルを経営して町を仕切るヤクザのソン派のソン社長の右腕として一目置かれている。
同じ町の武闘派のヨンガンが海外逃亡から戻り、洗濯屋を開いたが、ソン派に喧嘩をふっかけてくる。それは、新しい商売の邪魔をするという警告だった。
加えて、利権をめぐって隣町の巨大組織ヨンド派のナム会長は、クアムを狙っていた。ナムはヨンド派のエースでヒスの親友チョルジンを使って彼を懐柔しようとする。
だが、ヒスはヤクザから足を洗おうと考えていた。同じく養護施設育ちの幼馴染インスクと共に巨済島(キョンド)でペンションを経営する夢を抱いていた。
ヒスは、インスクの弟アミも出所してきたので、ついに夢に動き出そうと、金貸しのホン社長と組んで酒類販売を始めるため、ソン社長に足を洗いたいと直訴する。

原作:キム・オンス 長編小説『熱い血』(2016) 文学村 刊

 

 

出演。

チョン・ウ   (パク・ヒス/ソン派のエース)

キム・ガプス    (ソン/社長/ソン派の頭)
チェ・ムソン    (ヨンガン/武闘派のヨンガン派)
チ・スンヒョン   (チョルジン/幼馴染/ヨンド派)
ユン・ジヘ     (インスク/幼馴染)
イ・ホンネ     (アミ/インスクの弟)

キム・ヘゴン    (ヤンドン)
ユン・ジェムン   (ホン/金貸し社長/酒類販売者)
チョン・ホビン   (チョン・ダルホ)
キム・ジョング   (ナム会長/ヨンド派の頭)

チョン・ヨンジュ  (ユン夫人)
イ・ヨンソク    (タルジャ)
チャ・スンベ    (オク社長)
ホ・ドンウォン   (トダリ/ソンの甥)
イ・ホチョル    (タンジャ)
イ・ソンウ     (チョンベ)
ペ・ミョンジン   (テヨン)
チョン・ギソプ   (ファン)
キム・ガンイル   (パッカ)
ソン・ナッキョン  (ホジュン)
ヒョン・ボンシク  (パドゥク(囲碁))
ユ・スヌン     (チェ議員)
チェ・ホンイル   (ハン社長)
ペク・スヒ     (ジェニー)
ホ・ジウォン    (フィンガン(白い川))
ヤン・ヒミョン   (ソッキ)
チョン・ヨンノク  (マナ)
ユン・デヨル    (チホ)
ユン・タク     (ク班長)
チェ・グァンジェ  (トンチル)
ヤン・ジス     (チョン・ダルホのおい)
ソ・ジョンウ    (テンチョル)
シン・ミヨン    (屋台 女主人)

 

 

スタッフ。

PD:チョン・ウヒョン (PGK)
助監督:ソ・ギュソク

撮影:カン・グッキョン (CGK)
照明:キム・ヒョソン
美術(プロダクションデザイン):イ・ジェソン
武述:イ・サンハ

編集:キム・チャンジュ
音楽:ユン・イルサン

 

 

 

『野獣の血』を鑑賞。
90年代韓国釜山の港町、ヤクザをやめようとした男が二つの組の間に立たされるノワール。
キム・オンスの同名ノワール小説を映画化。
監督・脚本は自身がベストセラー作家でもあるチョン・ミョングァンが1964年生まれ58才にして、別の作家の小説で長編監督デビューに挑む。
韓国では初登場1位を記録し、そこそこの評価を得ている。
『善惡の刃』、『偽りの隣人 ある諜報員の告白』のチョン・ウが、その優しい雰囲気で慕われる人情任侠から、じょじょに野獣の道へと進む変化を見せていく。脇に渋めのキム・ガプス、チェ・ムソン、ユン・ジヘのいい感じで、リアル寄りのバランスの顔をそろえているのも意図が見える。中でも、若手のイ・ホンネが活きがよくていい。本来は、ダブル主役になるであろうチ・スンヒョンは俳優顔立ちだし、存在としてもやや弱いか。リアルな大人数と複雑な人間(組織)関係を穂湧現しており、韓国映画慣れしてないとちょっと追いつくのが大変な人もいるかも。 
この大人数でリアルさを出したかったのだろうな。
エモを掻き立てる回想エピソード省いたのは、さばけた非情感を出そうとしたんだろうけど、4人の幼馴染が出てくるので、もう20分増やして、そこを描いていたら、一般的には見やすかったのかも。(原作にはあるのかな?)
ただ2時間に収めたスピード感がいいのよね。
韓国ノワールにしては、残酷秒sがリアルな方向ではあるけど、残酷描写というよ類、他の国のギャングマフィアものより抑え目(とはいえ、やってることはけっこうエグイし、ビニール窒息などはしっかり見せるし、ウニ拷問などちょこちょこ面白い攻撃もある)なので、激しさを求めると少し物足りないかも。
韓国ノワールの定番ポイントを押さえた感じの内容になってる。
そういえば、2022年には、かなり似た感じの『狼たちの墓標』もあったね。
田舎ヤクザものの方が地味めにドラマになるのが韓国風味。
音楽の使い方とか、夜の撮影とかにちょっと昔の感じがあるのも味。編集もテンポがいいので、見やすいしね。ただ、構成をもう少しじらしてって方向性もあった気もしないではない。
東映プログラムピクチャー的なヤクザもの群を思い出させる。
今の韓国映画の層の厚さが、これを平均にしてしまう。
海含めて液体がライトモチーフなのね。
海の上の会合シーンの緊張感よき。
タイトルの「血」ってもっと奥深いものとして描きたかったのだろうな。セリフにもあるし。年齢からくる体験が映されている裏も感じる。血って熱い言葉なのだなと気づく。
作家×作家なので、けっこうセリフがいいのよね。でも、微妙に翻訳が弱い気がする。
「屑(クズ)」につける言葉で「星」のような、すごくする言葉が出てきます。
そう考えると、『野獣の血』は少しズレてる感じもしてくる。
血に染まった手をじっと見る海作。

 

 

 

おまけ。

原題は、『뜨거운 피』。
『熱い血』。

英語題は、『Hot Blooded』。
『熱血』、『血気に逸った』、『熱血漢の』。

 

2022年の作品。

 

製作国:韓国
上映時間:120分
映倫:PG12

 

配給:アルバトロス・フィルム  

 

 

受賞歴。

2022年の第58回 百想芸術大賞(映画部門)にて、男子新人演技賞(イ・ホンネ)を受賞。

チョン・ウ主演の韓国ノワール「野獣の血」1月公開、ヤクザたちの抗争描く(動画あり) - 映画ナタリー

뜨거운 피' 확장판, 5월 26일 개봉…삭제된 액션신 추가 : 네이트뉴스

공식 정우 주연 뜨거운 피 3월 23일 개봉 확정 | 텐아시아

 

 

 

ネタバレ。

好みのセリフ。

「戦いはためらったものが負ける」

「お前みたいな人間には、二つしか道はない。どん底に落ちるか、王になるか」

「どん底の人間を甘く見るな。奴らには後がない」

「なぜ俺の側についた?」「あんたは最高のクズだ」

「生まれ変わったら、もっといい父親の元に生まれよう」「父親がよかったからって、俺たちは変わるのか?」

 

この最後のセリフが、この映画を撮りたかった理由の一つな気がするね。
タイトルから受け取る、いわゆる熱血とか血が滾るを超えて、もっと因果だったり、国のようなものを描きたかったのではないか。
原作にあるなら、原作の意図かもしれない。
親いない子ら、結局、親(ヤクザ)の争いに巻き込まれる子というところにも。
1964年生まれの50代だからこその軍政権時代の終わり1985年あたりに大学生ってとこだろうしね。
そう見ると、「最高のクズ」も意味深いし、ヒスがアミの血で染まった手を見るカットもそういう意味も含めてあったのだろうし、妙に凝った返り血の付き方もそこを伝えたかったのかも。

構成で盛り上げが少し安くなってしまった気がする。
冒頭で、ヒスが銃のプレゼントを、ヒスが持った時、弾が入ってるのが分かるカットを入れるだけで、撃つかどうかまで見せない方がよかったのではないか。
撃つことで後半展開が少し読める。
もちろん、同じ方向に、ソンとナムの二人がいるので、どちらを撃ったかまでは分からないのだが。
リボルバーでなく、トカレフ(安全装置がない)にして、その手に銃の重さを感じるだけでもよかったかも。

 

 

ヨンガンが手打ちの会合の場に銃を持ち込めたのは、ナム派についていて、抗争の対象ではなかったし、別組織の頭でもあり、狂犬と言われるほどの武闘派ゆえに部下のチェックが甘くなったとも見える。それなら、あの安い黒ビニールじゃなくて、プレゼント用の箱にしても面白かった気はする。
だが、あの安いビニール袋から考えるとナム派が容認していて、ヒスがソンを撃つことを知っていた工作ともとれる。

 

 

 

 

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