【俺は好きなんだよ】第６４回
『ロックンロールは◎×△！？ 検閲なんかぶっ飛ばせ！』(2002)
アメリカであった実話を元にしたテレビ映画。
実話のおかしさを軽く楽しませるロック・コメディの秀作。
スタッフ。
監督：マーク・Ｓ・ウォーターズ
製作：ハワード・グリフィス、ジョン・Ｊ・マクマホン
製作総指揮：メリッサ・コッブ、スティーヴン・ハフト、スティーヴン・タオ
脚本：ジェイ・マーテル
撮影：アレックス・ネポンニアシー
編集：パメラ・マーティン
音楽：クリストファー・レナーツ
出演。
ジェイソン・プリーストリー
マリエル・ヘミングウェイ
ディー・スナイダー
デボラ・イエーツ
ロイス・チャイルズ
ティム・ギニー
グリフィン・ダン
物語。
１９８６年。
上院議員の妻たちが設立した団体“ＰＭＲＣ”（音楽の悪影響から子供を守る会）は、“露骨で下品な歌詞”から、子供たちを極悪な表現から守るために、音楽の歌詞にも、チェック機関が必要だと主張していた。
彼らは、注意すべき１５曲を掲げて、主張を広めていく。
この主張の広がりに、音楽業界も無視できなくなっていく。
そこで、対抗するために、音楽業界のロビイスト（陳情者。政党と院外利益団体との仲介者）らは、ＰＭＲＣと公聴会で対決することに。
夫である上院議員たちを味方にしたＰＭＲＣは強力で、ロビイストらは、逆転の手をロックスターを公聴会に呼び、語らせることで対抗しようと思いつく。
だが、名だたるロックスターは、ソレに応じない。
応じてくれたのは、表現の自由に歯向かおうと活動しているプログレッシブ・ロックのフランク・ザッパと、槍玉に挙げられることが多かったメタルのTWISTED SISTERのディー・スナイダーだけ。
これでは勝てないと、誰もが納得する健全なミュージシャンを呼ぼうとロビイストらが思いついたのは、カントリーのジョン・デンバーだった。
当然、ミュージシャンの３人は、ロビイストらの戦うためのワシントンのルールには全く従わず、思い思いに作戦を練ってしまう。
果たして、このジャンルも主張もバラバラな３人で、音楽の表現の自由を守れるのだろうか。
そして、ついに公聴会の幕が開く・・・。
アメリカであった実話を元にしたロック・コメディ。
当時、ＭＴＶのニュースで、ヘヴィメタやラップ系レコードを弾圧されていたぐらい、この動きは大きく、アメリカで音楽ＣＤに貼られている警告シールは、この動きから始まった。
ＰＭＲＣの主要メンバーには、今話題のアル・ゴアの夫人ティッパー・ゴアがおり、アル・ゴアも公聴会に出席しているのが、感慨深い。
フランク・ザッパは、この音楽表現規制への抗議活動を、丸々、自分のアルバムにしてしまったくらい闘っていた。
なにより、窮屈な堅苦しい場所で、不良の象徴のようなミュージシャンたちが、真面目に取り組む姿勢と反抗心に胸が打たれる。
しかも、ディー・スナイダーは本人が本人役で出演しているほど。
で、邦題のコメディにありがちな、ずれたタイトルをつけられてしまっているのが、口惜しい。
最近では、『バス男』（原題『ナポレオン・ダイナマイト』は主人公の名前で、この仰々しい名前とキャラのギャップを狙っている、日本では言えば、伊集院光みたいなものかな）や、『ハイスクール白書 優等生ギャルに気をつけろ！』（原題『エレクション』は選挙の意。生徒会長選挙の物語なので）など。
で、『ロックンロールは◎×△！？ 検閲なんかぶっ飛ばせ！』の、原題の『WARNING: PARENTAL ADVISORY 』は、音楽ＣＤの警告シールの文面をそのままタイトルにして、二つの意味を持たせている。
この警告シールについての映画であること、と、この映画には、警告に値する内容が含まれているのです、という皮肉もこめている。
そうそう、この映画のエンドロールは、おいらの偏愛する演出があるのよね。
『バカルー・バンザイの８次元ギャラクシー』とか『スクール・オブ・ロック』とかで、結構イロイロな作品で使われている、おなじみというか、定番の演出なんですが。
いつか、あれをやってみたいなぁと思うのよね。
『フィルム・メモワール』ＤＶＤ発売！
http://ip.tosp.co.jp/i.asp?I=entanohosi
下の方にある
『Film Memoire～フィルム メモワール～』
をクリックしてください。
