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菱沼康介の、丸い卵も切りよで四角。

日々の悶々を、はらはらほろほろ。

東部劇   『グッド・バッド・ウィアード』

2009年09月01日 00時00分17秒 | 映画(公開映画)
で、ロードショーでは、どうでしょう? 第72回。



「なんか最近面白い映画観た?」
「ああ、観た観た。ここんトコで、面白かったのは・・・」







『グッド・バッド・ウィアード』




韓国製西部劇。
東洋製の西部劇ってこと。
キムチ・ウエスタンと名づけられていますね。
イタリア製西部劇をマカロニ・ウエスタンと呼ぶことからの名前でしょう。
(アメリカンドでは、スパゲティ・ウエスタンというんですけどね)

日本にも、岡本喜八監督による西部劇『独立愚連隊』シリーズなどがあります。
こちらはいうなれば、スシ・ウエスタンか、テンプラ・ウエスタンか、ミソシル・ウエスタンてとこですかね。

と書いてる内に、『スキヤキ・ウエスタン・ジャンゴ』があったのを思い出しました。



西部劇は、世界中の作家にファンがいますから、
きっとスペインのパエリア・ウエスタンや、
イギリスのティー・ウエスタンや、
インドのカレー・ウエスタンや、
タイのトムヤムクン・ウエスタンや、
メキシコのチリ・ウエスタンや、
トルコのケバブ・ウエスタンや
ロシアのピロシキ・ウエスタンや、
アメリカのハンバーガー・ウエスタンなんてのがありそうだ。
 
え、アメリカはウエスタンの本場だから、ウエスタンだけでいいだろうって?
いやいや、これだけ世界中にウエスタンがあるなら、
もう区別するために、何かつけないとね。

ウエスタン映画祭とかやったら、ファンが集まりそうだね。

あ、中国のラーメン・ウエスタンは、もう『タンポポ』で使っているので、
シューマイ・ウエスタンとかになるのかしら?
 
 
 
で、『グッド・バッド・ウィアード』。

キム・ジウン監督は、昔の『鎖を断て』という韓国製西部劇を見て、この映画を発想したそうなんだけど、このタイトルは、実は、マカロニ・ウエスタンの名作『続・夕陽のガンマン/地獄の決斗』の英語題『THE GOOD, THE BAD AND THE UGLY』のもじり。
(原題は、『IL BUONO, IL BRUTTO, IL CATTIVO』)
セルジオ・レオーネ監督のマカロニ・ウエスタンの傑作の一本で、“続”がついてますが、続編じゃないです。
クリント・イーストウッド、リー・ヴァン・クリーフ、イーライ・ウォラックが出演してます。

原題の方は、『正義漢、悪者、卑怯者』という意味ですが、こちらは『正義漢、悪者、怪人』という感じ。
(『善い者、悪者、曲者』でも面白いかも)


面白いのは、こちらは怪人が主役なこと。
そして、混沌の満州での国を失くした朝鮮人という設定がいかしてる。
そこらへんが上手く、メキシコ系の雰囲気を出しているのよ。
マカロニ・ウエスタンは、メキシコを舞台にしたのが多かったしね。
というわけで、ストーリーは、もうね、ほとんどキャラクターとアクションのためにあるだけ。
宝の地図は、ただのスターターに過ぎなくなっちゃうし、テグとチャンイの因縁も分かりづらいしね。
でも、そのユーモア、残酷さ、アクション、キャラクター、ケレン味は、まさにマカロニ・ウエスタンの味を完璧に取り込んで、楽しませてくれます。
これ大事。
銃撃戦、チェイスを見せたいってのが、この映画の原動力だってのが分かるから。

そうそう、での戦闘はちょっと香港風味です。
ところどころに、東洋色を取り込んでいるのよね。


東洋色といえば、大きな敵は一応、日本軍になっているのです。
で、満州浪人の設定に重要な日本軍(関東軍かな)もほとんど脇役扱いで終わるのよね。
しかも、あんま憎憎しく描かれていないのは、実はあったけど、カットしたんでしょうか?
そのせいでボロが出てないというのはあります。
(ちゃんと白竜さんとか、日本の俳優が演じていますし)


で、カットといえば、実は、日本上映版はイ・ビョンホンに演じる悪役が指をカットするカットがカットされています。
劇中、指を切り落とすシーンはあるんですが、直接的にそれを映している映像は無いってこと。
どうやら、グロいからってことですが、マカロニなこの映画としては、やっぱ必要だったと思うなぁ。
指切り魔は、この映画のストーリーの重要な要素でもあるわけだしね。


そういや、昔、早川雪舟がアメリカでスターになったのは 『チート』って映画で、婦人に焼きゴテを当てるような悪役を色っぽく演じたというのもあったなぁ。



なにより、ソン・ガンホ、イ・ビョンホンがいい!
実は、グッド担当のチョン・ウソンも入れて3人がタイトル・ロールなんですけど、こりゃ、分が悪い。
マカロニでは、アクの強いヤツがやっぱよく見えるものだから。

まず、イ・ビョンホンがいい!
手加減なしで、悪を演じている。
一つもいいところが無い。
ゆえにそれが最もいいところに見えてくるのが、物語の面白いところ。
『アイ・カム・ウィズ・ザ・レイン』、『G.I.ジョー』でも演じているけど、出演順番的には、こちらが先。
ここで、開眼したのかもしれぬ。


ソン・ガンホは、得体の知れない怪人を、喜々として演じている。
言うなれば、いつもの暴れっぷり。
いつものことを、レベルを下げないでやれるところは、恐ろしいことですからね。
彼がいなかったら、今の韓国映画界の隆盛は、もう3割減だったんじゃないかしらね。
あと、チェ・ミンシクね。


チョン・ウソンは、いいアクションをやってるんだけどね。
だから、二人が凄すぎたからだな。



ただマカロニ・ウエスタンの多くの作品と同様に、ちょっとグダリますがね。
特に、後半、オリジナルに敬意がかなり払われて、そのせいもあって、惜しい感じなのよね。
良くも悪くも。




いわば、マカロニをキムチに漬けた感じ。
ミスマッチに思えるそれが、マカロニの造詣の愉快さと歯ごたえを、辛さと酸っぱさが包み込んで、裏メニューな喜びを堪能させてくれます。
例えるなら、新しい明太子スパゲティってとこです。
 

 




おまけ。
ネタバレ含む。
これ書いた後にいろいろ読んだら、日本版は、6分もカットされているそう。
その中身は、ユン・テグが指切り魔であることの伏線や、最後あの二人が生き残った理由もあるそう。
そりゃないぜ!
 
あと、この映画、監督(directer)の表記が無いです。
なんと、ORIENTAL WESTRN by KIM JEE-WOON(WESTRN by KIM JEE-WOONとも)と表記されます。
西部劇をやりたかったんだなぁ。









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