※本館「現代編」設定の2人です※
「あれは・・・マズいんじゃないかな」
マズイ?
「どうしてよ」
「いや、どうしてって言うか・・・」
口ごもる高彬に、ピンとくるものがあった。
さては高彬のやつ・・・
「もしかしてクラゲ?」
心配性の高彬のことだから、きっと近年、大量発生しているとか言うクラゲのことを気にかけているに違いないわ。
「それならまだ大丈夫よ。クラゲが出るのはお盆過ぎよ」
安心させようと自信たっぷりに言うと
「はぁ?クラゲ?」
高彬は頓狂な声をあげ、それが思ってもみない反応だったので
「え?クラゲじゃないの?」
と思わず聞き返してしまった。
「何だよ、クラゲって」
「え。てっきり、あの水着がダメな理由って、クラゲに刺される率が高いからだと思って」
「は?」
「ほら、出てるとこが多いから」
「・・い、いや、別に、クラゲとかそう言うのじゃなく・・・」
「じゃあ、なんでダメなの」
「・・・」
「別に学校の授業じゃないんだし、どんな水着着たっていいわけでしょ」
「・・ま、まぁ、それは・・」
「じゃあ、なぜ?」
「そ、それは・・」
「それは?」
「し、紫外線だよ」
「・・・紫外線?」
「そ、そうだよ。瑠璃さんは知らないかも知れないけど、紫外線はその波長の長さによってA波・B波に分けられるんだ。それですぐに日焼けを起こすのはB波の方なんだけど、本当に怖いのはA波の方でね」
「・・・」
「夏は紫外線が大気層を通過する距離が短いから、その分、紫外線も強い。遮るものも何もない真夏の海なんて、紫外線を浴びに行くと思っていた方がいい。砂浜の反射率は25%だし、水面の透過率に至っては95%。これはもう海の中にいたって紫外線を浴びまくるわけだから・・・」
「わかったわよ。うるさいわねぇ」
黙って聞いてたらいつまでも講釈が続きそうで、あたしはムッとして遮った。
「あの水着、着て行かなきゃいいんでしょ。いいわよ、別にどうしても着たかったわけじゃないんだから」
フンっと鼻を鳴らしそっぽを向くと、険悪なムードを察知したのか、融が
「志乃さーん、何かおやつあるー?」
キッチンに向かって声を張り上げ、少しすると志乃さんが我が家で2番目に上等なグラスに入ったフルーツポンチを持って来た。
志乃さんは高彬を気に入っているから、高彬が来るとおもてなしに力が入るみたいで、他の友だちが来た時とはまず使われるお皿やコップからして違う。
ぼんやりしてる融はそんなこと気付いちゃないみたいだけど、あたしはちゃーんと分かっているのだ。
まぁ、高彬が誰からも好かれる性格だってことだけで、だからどうと言うわけではないんだけど。
丸くくり抜かれたスイカを一気に頬張ってさっさと食べ終えると、一言も口を聞かずに部屋を後にしてやった。
ドタドタと階段を上り、バタンとドアを閉め、目に入ったクッションにグーでパンチをする。
何さ、高彬の奴。
あたしがどんな思いであの水着を選んだか───
どれだけ勇気を出して「一番セクシーに見える水着ってどれですか?」と店員さんに聞いたと思っているのよ!
それもこれも、海で高彬をびっくりさせたかったからじゃない。
フライングで勝手に見るわ、挙句に長ったらしい講釈たれてダメ出しするわ・・・
自分が理数系が得意だからって、なーにがA波よ、95%の透過率よ。
そんなに海が危険なら、1組は来なきゃいいじゃないのさ。
もう一発、クッションにグーでパンチをお見舞いする。
重ね重ね、憎らしい高彬め、そんなにあたしのビキニ姿が見たくないのか。
さっき脱ぎ捨てた水着がソファの上で情けなく放られている。
紐タイプの黒のビキニ、少しは高彬の目に留まるかと思ったのになぁ・・・
あーあ。
あたしはソファに突っ伏したのだった。
<続>
目にも心にも留まってるはずだよ・・、と瑠璃に励ましのクリックをお願いいたします。
↓↓
「あれは・・・マズいんじゃないかな」
マズイ?
「どうしてよ」
「いや、どうしてって言うか・・・」
口ごもる高彬に、ピンとくるものがあった。
さては高彬のやつ・・・
「もしかしてクラゲ?」
心配性の高彬のことだから、きっと近年、大量発生しているとか言うクラゲのことを気にかけているに違いないわ。
「それならまだ大丈夫よ。クラゲが出るのはお盆過ぎよ」
安心させようと自信たっぷりに言うと
「はぁ?クラゲ?」
高彬は頓狂な声をあげ、それが思ってもみない反応だったので
「え?クラゲじゃないの?」
と思わず聞き返してしまった。
「何だよ、クラゲって」
「え。てっきり、あの水着がダメな理由って、クラゲに刺される率が高いからだと思って」
「は?」
「ほら、出てるとこが多いから」
「・・い、いや、別に、クラゲとかそう言うのじゃなく・・・」
「じゃあ、なんでダメなの」
「・・・」
「別に学校の授業じゃないんだし、どんな水着着たっていいわけでしょ」
「・・ま、まぁ、それは・・」
「じゃあ、なぜ?」
「そ、それは・・」
「それは?」
「し、紫外線だよ」
「・・・紫外線?」
「そ、そうだよ。瑠璃さんは知らないかも知れないけど、紫外線はその波長の長さによってA波・B波に分けられるんだ。それですぐに日焼けを起こすのはB波の方なんだけど、本当に怖いのはA波の方でね」
「・・・」
「夏は紫外線が大気層を通過する距離が短いから、その分、紫外線も強い。遮るものも何もない真夏の海なんて、紫外線を浴びに行くと思っていた方がいい。砂浜の反射率は25%だし、水面の透過率に至っては95%。これはもう海の中にいたって紫外線を浴びまくるわけだから・・・」
「わかったわよ。うるさいわねぇ」
黙って聞いてたらいつまでも講釈が続きそうで、あたしはムッとして遮った。
「あの水着、着て行かなきゃいいんでしょ。いいわよ、別にどうしても着たかったわけじゃないんだから」
フンっと鼻を鳴らしそっぽを向くと、険悪なムードを察知したのか、融が
「志乃さーん、何かおやつあるー?」
キッチンに向かって声を張り上げ、少しすると志乃さんが我が家で2番目に上等なグラスに入ったフルーツポンチを持って来た。
志乃さんは高彬を気に入っているから、高彬が来るとおもてなしに力が入るみたいで、他の友だちが来た時とはまず使われるお皿やコップからして違う。
ぼんやりしてる融はそんなこと気付いちゃないみたいだけど、あたしはちゃーんと分かっているのだ。
まぁ、高彬が誰からも好かれる性格だってことだけで、だからどうと言うわけではないんだけど。
丸くくり抜かれたスイカを一気に頬張ってさっさと食べ終えると、一言も口を聞かずに部屋を後にしてやった。
ドタドタと階段を上り、バタンとドアを閉め、目に入ったクッションにグーでパンチをする。
何さ、高彬の奴。
あたしがどんな思いであの水着を選んだか───
どれだけ勇気を出して「一番セクシーに見える水着ってどれですか?」と店員さんに聞いたと思っているのよ!
それもこれも、海で高彬をびっくりさせたかったからじゃない。
フライングで勝手に見るわ、挙句に長ったらしい講釈たれてダメ出しするわ・・・
自分が理数系が得意だからって、なーにがA波よ、95%の透過率よ。
そんなに海が危険なら、1組は来なきゃいいじゃないのさ。
もう一発、クッションにグーでパンチをお見舞いする。
重ね重ね、憎らしい高彬め、そんなにあたしのビキニ姿が見たくないのか。
さっき脱ぎ捨てた水着がソファの上で情けなく放られている。
紐タイプの黒のビキニ、少しは高彬の目に留まるかと思ったのになぁ・・・
あーあ。
あたしはソファに突っ伏したのだった。
<続>
目にも心にも留まってるはずだよ・・、と瑠璃に励ましのクリックをお願いいたします。
↓↓