瑠璃ガール<69>

2019-01-16 | ss(現代・高等科編)
※本館「現代編」設定の2人です※





「代田くん・・・」

この間のことがあってから、どうしても身構えてしまう。

いきなり抱き寄せられるとか、恐怖以外の何ものでもないし。

「今日、一緒に帰らないか?」

「え」

「この間の話の続きもあるし」

「・・・」

意味ありげな亜実の視線を感じつつ、まず頭に浮かんだのはやっぱり高彬のことだった。

何だかんだ言って登下校はずっと高彬と一緒だし・・・

「悪いが、瑠璃さんはおまえと帰らないぞ」

さて何て断ろうかと思っていたら、背中側から声が聞こえ、振り向くと高彬が立っている。

「おまえに聞いてるんじゃない、瑠璃ちゃんに聞いてるんだ。出張るなよ」

「登下校は、瑠璃さんの父上に頼まれてるんだ」

「じゃあおまえ、おれたちの5メートル後ろを付いて来い。それくらいなら許してやるぞ」

「おまえみたいな軽薄が服着て歩いてるようなやつに、瑠璃さんの横を歩かせられるか」

「なんだと、貴様」

「ちょ、ちょっと!2人とも!頭の上でゴチャゴチャやらないでよ!」

ほっといたらどこまでもエスカレートしそうな雰囲気に、あたしは慌てて口を挟んだ。

ここであの日のケンカの続きとか、ほんと困る。

気のせいかカフェテリア中の視線が集まってきてるし。

座ってるあたしを挟んで、長身の2人が頭の上で言い合ってるんだもの、そりゃ目立つわよ。

あたしは2人の腕を掴むとカフェテリアを飛び出した。

2人を廊下に並んで立たせる。

「あのね、2人とも自分がモテるって自覚あるんでしょ?」

「まぁな」

代田くんは素直に頷き、高彬はソッポを向いた。

「派手な言い合いとか目立ったところでされると、ほんと困るのよ、後々面倒で。あのね代田くん、この間の答えならここではっきり言うわ。お試しでのお付き合いの件、せっかくだけどお断りします」

高彬の目線が動き

「お試しとかサイテーだな」

ぼそっと呟く声がする。

「あたし、そう言うのダメなのよ」

お試しでとか、遊びでとか、ほんと、そう言うの苦手。

「オッケー。分かった、瑠璃ちゃん」

代田くんは両手をズボンのポケットに突っ込むと歩き出したかと思ったら

「今度は本気で行くから」

振り返りもせずそう言い残し、そのまま歩いて行ってしまった。

「・・・」

高彬と2人、廊下に残される形になり、自然と目が合った。

「えぇっと、その・・」

「また門のところで待ってるから」

「・・・」

「取りあえず、卒業までは・・」

「あ、うん・・」

「あのさ、瑠璃さん」

高彬が何かを言いかけたのと

「あ、高彬、五限目の数学なんだけどさ」

カフェテリアから融が出てきたのが同時だった。

「何だ姉さん、何やってるの」

「別に」

「高彬、ちょっと借りるね」

そのまま高彬を引っ張って行ってしまった。

カフェテリアに入るか、教室に戻ろうか、少し考えて教室に行くことにする。

廊下の角を曲がったところで

「ちょっといいかしら、藤原さん」

女子生徒に声を掛けられ、内心(来たな)と思う。

このパターンはね

「藤原さんって、藤原くんの何?彼女なの?2人は付き合ってるの?」

とか、そう言うことを聞かれるに違いないのよ。

だから、目立つようなことして欲しくないのに・・・

ほんと、毎回、否定するのが面倒で。

「はい、何かしら」

一応、丁寧に答えると

「藤原さんって・・・」

あぁ、やっぱりね、なんて思っていると、次の言葉は予想に反するものだった。

「藤原くんのことが好きなんでしょ?」

「・・」

思いがけない質問に、言葉を失ってしまう。

改めて相手の顔を見ると、面長の輪郭、賢そうな瞳の女の子が、まっすぐにあたしを見ていた。






<続>


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**イラスト・藍さん**

2 コメント

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Unknown (ベリー)
2019-01-16 23:51:25
例のあの人ですね!?なんて、勝手に思っていますが。瑠璃はどう対応するんでしょうか
現代では身分が関係ないからガッツリ絡んでくるのでしょうか?
いいところで融くん出でくるわあ:苦笑
>ベリーさま (瑞月)
2019-01-23 12:27:05
ベリーさん、こんにちは!
(返信遅くなってすみません)

夏にはモヤモヤしたものを感じるので、今回は敢えて登場させてみました!
ベリーさんの書かれた通り、身分の差のない夏がどう出てくるのか・・・
またお付き合いくださいませ~。

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