※本館「現代編」設定の2人です※
「藤原・・・」
いきなりの高彬の登場に、代田くんはびっくりしたように目を見開いた。
高彬はずんずんと部屋に入ってきたかと思ったら、あたしの顔なんか見もしないで代田くんの真ん前に立った。
そうして
「残念だったな、代田。ぼくが来たから<3人きり>だ」
まっすぐに代田くんの顔を見ながら言うと、最後ににやりと笑った。
「まさかおまえ、瑠璃ちゃんの後でもつけて立ち聞きしてたのか?」
高彬はそれには答えず
「それに・・奇遇だな、代田」
「何がだよ」
「夏休みには1組も皆で海に行くんだ」
「どこの」
「・・葉山だよ」
高彬が葉山の地名を出した途端に代田くんは嫌そうな顔になった。
「その顔は図星だな。2組も葉山か」
「1組は葉山に来るな」
「代田に言われる覚えはないな。いくらおまえんちの別荘があるとはいえ、葉山の海はおまえのものじゃないだろう」
「かと言って、おまえのものでもないぞ、藤原」
「ぼくは昔から、葉山の海が好きでね」
「奇遇だな、オレもだ」
「ちょ、ちょっと!」
あたしは慌てて2人の間に入った。
一触即発、ほっといたらケンカでもしそうな勢いなんだもの。
「2人とも葉山の海が好きなら1組、2組、合同で行きましょうよ」
「・・・」
「・・・」
2人は黙り込み
「葉山の海が代田くんのものじゃないと言う高彬の意見は正しいわ。<1組は葉山に来るな>なんて言っちゃだめよ。その点は代田くんが悪い。だけど、高彬も悪いわ。一緒に海に行きたいのなら、もっと丁寧にお願いしなきゃ」
あたしはぴしゃりと言った。
やっぱり男ってダメね。
弟がいるせいかしら。どうしてもこう言う時、お説教したくなっちゃうのよ、あたし。
あたしのお説教が効いたのか、何だかぼんやりしてる代田くんを残し、高彬と2人、生徒会室を出た。
「・・ねぇねぇ、高彬。ほんとに立ち聞きしてたの?あたしの後つけて」
気になってたことだったので聞いてみると
「後を付けたわけじゃないさ。剣道部の後輩が足首を挫いたから保健室に連れて行ってたら、窓から代田と瑠璃さんの姿が見えたんだ。2人きりだしおかしいな、と思って、まぁ、少しはドアの前で話は聞いてたけど・・」
「ふぅん」
剣道部が活動している武道場から保健室に行くのは、確かに生徒会室の外を通るものね。
でも、ほんと、高彬って真面目よねぇ。
いくら父さまに「瑠璃を頼む」と言われたからって、ここまで責任持ってあたしの身を案じてくれなくても良さそうなものなのに。
歩くセコムって感じだわ。
父さま、高彬にちゃんとお礼してるのかしら?
金一封と言うか、バイト代と言うかさ。
「これからどうするの?」
「部活に戻るよ」
「そう」
「もうじき終わるから、瑠璃さんも見てく?」
「うーん、どうしようかな」
「見て行きなよ」
高彬に言われて、結局、武道場の観覧席に座ってしまったけれど・・
あたしはすぐに激しく後悔した。
剣道部の見学をしたのは初めてじゃないけれど、いつ来ても先客がわんさかいるのよねぇ、同級生も下級生も。
皆、高彬を目当てに見ているに違いなく。
観覧席を見上げた高彬が手を上げてあたしに合図を送り・・・
その途端、皆が一斉にあたしを振り返った。
あぁ、視線が痛いわ・・。
こうして皆、色々誤解して
「瑠璃先輩って藤原先輩の何なんですか?!」
なんて聞かれちゃうのよ。
幼馴染ですって答えるのもいい加減こっちも飽きたし、これからは
「セコムです」
って答えようかしら・・?
<続>
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「藤原・・・」
いきなりの高彬の登場に、代田くんはびっくりしたように目を見開いた。
高彬はずんずんと部屋に入ってきたかと思ったら、あたしの顔なんか見もしないで代田くんの真ん前に立った。
そうして
「残念だったな、代田。ぼくが来たから<3人きり>だ」
まっすぐに代田くんの顔を見ながら言うと、最後ににやりと笑った。
「まさかおまえ、瑠璃ちゃんの後でもつけて立ち聞きしてたのか?」
高彬はそれには答えず
「それに・・奇遇だな、代田」
「何がだよ」
「夏休みには1組も皆で海に行くんだ」
「どこの」
「・・葉山だよ」
高彬が葉山の地名を出した途端に代田くんは嫌そうな顔になった。
「その顔は図星だな。2組も葉山か」
「1組は葉山に来るな」
「代田に言われる覚えはないな。いくらおまえんちの別荘があるとはいえ、葉山の海はおまえのものじゃないだろう」
「かと言って、おまえのものでもないぞ、藤原」
「ぼくは昔から、葉山の海が好きでね」
「奇遇だな、オレもだ」
「ちょ、ちょっと!」
あたしは慌てて2人の間に入った。
一触即発、ほっといたらケンカでもしそうな勢いなんだもの。
「2人とも葉山の海が好きなら1組、2組、合同で行きましょうよ」
「・・・」
「・・・」
2人は黙り込み
「葉山の海が代田くんのものじゃないと言う高彬の意見は正しいわ。<1組は葉山に来るな>なんて言っちゃだめよ。その点は代田くんが悪い。だけど、高彬も悪いわ。一緒に海に行きたいのなら、もっと丁寧にお願いしなきゃ」
あたしはぴしゃりと言った。
やっぱり男ってダメね。
弟がいるせいかしら。どうしてもこう言う時、お説教したくなっちゃうのよ、あたし。
あたしのお説教が効いたのか、何だかぼんやりしてる代田くんを残し、高彬と2人、生徒会室を出た。
「・・ねぇねぇ、高彬。ほんとに立ち聞きしてたの?あたしの後つけて」
気になってたことだったので聞いてみると
「後を付けたわけじゃないさ。剣道部の後輩が足首を挫いたから保健室に連れて行ってたら、窓から代田と瑠璃さんの姿が見えたんだ。2人きりだしおかしいな、と思って、まぁ、少しはドアの前で話は聞いてたけど・・」
「ふぅん」
剣道部が活動している武道場から保健室に行くのは、確かに生徒会室の外を通るものね。
でも、ほんと、高彬って真面目よねぇ。
いくら父さまに「瑠璃を頼む」と言われたからって、ここまで責任持ってあたしの身を案じてくれなくても良さそうなものなのに。
歩くセコムって感じだわ。
父さま、高彬にちゃんとお礼してるのかしら?
金一封と言うか、バイト代と言うかさ。
「これからどうするの?」
「部活に戻るよ」
「そう」
「もうじき終わるから、瑠璃さんも見てく?」
「うーん、どうしようかな」
「見て行きなよ」
高彬に言われて、結局、武道場の観覧席に座ってしまったけれど・・
あたしはすぐに激しく後悔した。
剣道部の見学をしたのは初めてじゃないけれど、いつ来ても先客がわんさかいるのよねぇ、同級生も下級生も。
皆、高彬を目当てに見ているに違いなく。
観覧席を見上げた高彬が手を上げてあたしに合図を送り・・・
その途端、皆が一斉にあたしを振り返った。
あぁ、視線が痛いわ・・。
こうして皆、色々誤解して
「瑠璃先輩って藤原先輩の何なんですか?!」
なんて聞かれちゃうのよ。
幼馴染ですって答えるのもいい加減こっちも飽きたし、これからは
「セコムです」
って答えようかしら・・?
<続>
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