※本館「現代編」設定の2人です※
───つまらないな・・・
何度目になるのか、カウントすらしていないため息と共に心の中で独り言ちる。
少し寒さが和らいで来たとは言え、土手を渡る風はまだまだ冷たく、知らずに首をすくめてしまう。
陽は大きく傾いて長い影を作っている。
瑠璃さんと会えなくなって二週間。
一緒に帰ったあの日を最後に、瑠璃さんと会えていないのだ。
別に瑠璃さんが渡米したとか、大きな事件が起きたとかではもちろんなく、一言で言ってしまうと瑠璃さんはインフルエンザに罹ってしまったのだ。
インフルエンザ自体は一週間で完治したのだけど、その後、立て続けに風邪を引いてしまったらしい。
融が言うには
「休み癖が付いただけ」
とのことで、実際、ずっと寝込んでるわけでもなく、家の中ではパジャマのままとは言えフラフラと歩き回っているらしい。
でも、学校に来てないのは確かなわけで、それはつまりはぼくは瑠璃さんに会えてないと言う事なのだった。
一人きりの登下校は味気なく、最初の数日は瑠璃さんの体調が心配でさほど気にならなかったけど、一週間を過ぎた辺りから(つまらない)と完璧に自覚するに至ってしまった。
瑠璃さんとの行き返り、毎回話が盛り上がるわけでもないし、挨拶以外は無言の日だってある。
毎日朝晩一緒に歩いていれば、そうなるのだって無理がないと思うし、でも、隣に瑠璃さんがいるとそれだけでやっぱり楽しいのだと言うことに今さらながら気が付いてしまった。
「こんなんで4月から大丈夫なのかよ」
マフラーで口元が隠れてるのをいいことに今度は口に出して言う。
卒業すれば瑠璃さんとは違う大学になり、当然、行き帰りは一緒ではなくなる。
二週間で「瑠璃さん切れ」を自覚してると言うのに、果たして4月になったらどうなってしまうのか・・・
冴えない気持ちで土手を降りようと階段に脚を掛けたところで
「藤原先輩!」
遠くから名前を呼ばれた気がして顔を上げた。
辺りを見回すと向こうからうちの制服を着た女子が小走りに近づいてくる。
「あの・・、これ」
息を弾ませたまま何かを差し出され───
受け取るとリボンがかかった小さな箱だった。
「チョコレートなんです。あの・・、1日早いけど、明日になったら藤原先輩、いつもたくさんの人にチョコ貰うから渡せないんじゃないかと思って、それで・・」
「・・・」
「手紙も入ってます。良かったら後で読んで下さい!」
そう言うと来た時同様、小走りに去って行く。
一人残されて、手に持った小箱に目を落とす。
そう言えば明日はバレンタインか─────
取りあえずカバンに入れながら、知らずにため息が出てしまう。
もらっておいて何だけど
(困る)
と言うのが正直な気持ちだった。
気持ちに応えられないし、何よりもチョコはそんなに好きじゃないし・・・
大体がいつも妹の口に入っておしまいとなる。
再び階段を降りようとしたところで、今度は携帯が鳴った。
画面には融の名前が出ており、出てみると
『あ、高彬?今、どこ?外?』
屈託のない融の声が聞こえてきた。
「まだ帰宅途中。土手降りる辺り」
『良かった!じゃあうちに寄ってよ』
「今から?」
『あ、何か予定あった?』
「本屋寄ろうと思ってた」
『そっか。じゃあ悪いかな。姉さんに言ってみる。姉さんなんだ、高彬呼んでくれって言ったの。ちょっと待ってて』
「行く」
『え?』
「すぐ行くから」
二週間ぶりだぞ。
瑠璃さんがぼくに用があるだなんて、行かないわけないだろ。
融が何か言う声が聞こえたけど、構わず携帯を切り胸ポケットにしまうと走り出した。
<続>
更新空いてしまいすみませんでした。2月設定のお話になってしまいましたがお許し下さい
またボチボチとお話をアップして行きますのでよろしくお願い致します。
瑠璃の用とは何なのか───?クリックで応援をお願いいたします。
↓↓
**イラスト・藍さん**
───つまらないな・・・
何度目になるのか、カウントすらしていないため息と共に心の中で独り言ちる。
少し寒さが和らいで来たとは言え、土手を渡る風はまだまだ冷たく、知らずに首をすくめてしまう。
陽は大きく傾いて長い影を作っている。
瑠璃さんと会えなくなって二週間。
一緒に帰ったあの日を最後に、瑠璃さんと会えていないのだ。
別に瑠璃さんが渡米したとか、大きな事件が起きたとかではもちろんなく、一言で言ってしまうと瑠璃さんはインフルエンザに罹ってしまったのだ。
インフルエンザ自体は一週間で完治したのだけど、その後、立て続けに風邪を引いてしまったらしい。
融が言うには
「休み癖が付いただけ」
とのことで、実際、ずっと寝込んでるわけでもなく、家の中ではパジャマのままとは言えフラフラと歩き回っているらしい。
でも、学校に来てないのは確かなわけで、それはつまりはぼくは瑠璃さんに会えてないと言う事なのだった。
一人きりの登下校は味気なく、最初の数日は瑠璃さんの体調が心配でさほど気にならなかったけど、一週間を過ぎた辺りから(つまらない)と完璧に自覚するに至ってしまった。
瑠璃さんとの行き返り、毎回話が盛り上がるわけでもないし、挨拶以外は無言の日だってある。
毎日朝晩一緒に歩いていれば、そうなるのだって無理がないと思うし、でも、隣に瑠璃さんがいるとそれだけでやっぱり楽しいのだと言うことに今さらながら気が付いてしまった。
「こんなんで4月から大丈夫なのかよ」
マフラーで口元が隠れてるのをいいことに今度は口に出して言う。
卒業すれば瑠璃さんとは違う大学になり、当然、行き帰りは一緒ではなくなる。
二週間で「瑠璃さん切れ」を自覚してると言うのに、果たして4月になったらどうなってしまうのか・・・
冴えない気持ちで土手を降りようと階段に脚を掛けたところで
「藤原先輩!」
遠くから名前を呼ばれた気がして顔を上げた。
辺りを見回すと向こうからうちの制服を着た女子が小走りに近づいてくる。
「あの・・、これ」
息を弾ませたまま何かを差し出され───
受け取るとリボンがかかった小さな箱だった。
「チョコレートなんです。あの・・、1日早いけど、明日になったら藤原先輩、いつもたくさんの人にチョコ貰うから渡せないんじゃないかと思って、それで・・」
「・・・」
「手紙も入ってます。良かったら後で読んで下さい!」
そう言うと来た時同様、小走りに去って行く。
一人残されて、手に持った小箱に目を落とす。
そう言えば明日はバレンタインか─────
取りあえずカバンに入れながら、知らずにため息が出てしまう。
もらっておいて何だけど
(困る)
と言うのが正直な気持ちだった。
気持ちに応えられないし、何よりもチョコはそんなに好きじゃないし・・・
大体がいつも妹の口に入っておしまいとなる。
再び階段を降りようとしたところで、今度は携帯が鳴った。
画面には融の名前が出ており、出てみると
『あ、高彬?今、どこ?外?』
屈託のない融の声が聞こえてきた。
「まだ帰宅途中。土手降りる辺り」
『良かった!じゃあうちに寄ってよ』
「今から?」
『あ、何か予定あった?』
「本屋寄ろうと思ってた」
『そっか。じゃあ悪いかな。姉さんに言ってみる。姉さんなんだ、高彬呼んでくれって言ったの。ちょっと待ってて』
「行く」
『え?』
「すぐ行くから」
二週間ぶりだぞ。
瑠璃さんがぼくに用があるだなんて、行かないわけないだろ。
融が何か言う声が聞こえたけど、構わず携帯を切り胸ポケットにしまうと走り出した。
<続>
更新空いてしまいすみませんでした。2月設定のお話になってしまいましたがお許し下さい
またボチボチとお話をアップして行きますのでよろしくお願い致します。
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**イラスト・藍さん**
高彬、頑張れー!