高彬ボーイ<73>

2020-02-14 | ss(現代・高等科編)
※本館「現代編」設定の2人です※





二週間ぶりに瑠璃さんに会える───!

階段を駆け下り右に曲がる。

じれじれと信号を待ち、また走り出し、左に曲がったところで誰かとぶつかりそうになり慌てて止まった。

「すみませ・・・、あ、君たちか」

いつもすれ違う小学生の軍団だった。

「ごめん、怪我はない?」

「怪我はないけどさ、にいちゃん、道路でそんなに慌てると危ないぞ」

「そうだよ。今日の朝礼で校長先生も言ってたよ!」

「ママも言ってた!」

「うん、本当にその通りだよな、ごめん」

口々に言われ素直に謝った。

子どもたちと別れ、早足で歩きながら、ふと

(瑠璃さんに何か買って行こうかな)

と思い付いた。

結局クリスマスプレゼント、何もあげてないし。

瑠璃さんは一緒に観覧車に乗るのがプレゼントだと言っていたけど、あれは瑠璃さんなりの遠慮と言うか気遣いだろう。

それか、よっぽどぼくにプレゼント選びのセンスがないと思っているのか・・・

その線が濃厚かもな。

瑠璃さんのセンスだって似たり寄ったりだと思うんだけど・・・

まぁ、いいか。

さて、どうしようか───

考えながら歩いていると、洒落たケーキ屋が目に飛び込んできた。

ここ、瑠璃さんの好きなケーキ屋じゃなかったっけ?

雑誌にも何度も取り上げられたことがあると、瑠璃さんが言ってたような気がする。

お見舞いの品としても合ってるし、何よりケーキならセンスを問われることがない。

良し、取りあえず今日のところはこれにしておこう。

店の入り口に来たところで、ギョッとして立ち止った。

中は人でごった返しているのだ。

なんでこんなに混んでいるんだ・・・

ふと立て看板に目が行き、そこには

《バレンタインに当店オリジナルのチョコレートはいかがですか?》

と書かれてあり、混雑の理由が判明した。

この混雑に参戦する気にはなれず、Uターンして、結局何も買えないまま瑠璃さんの家に着いてしまった。

呼び鈴を押そうと指を伸ばした次の瞬間ドアが開き、立っていたのは瑠璃さんだった。

「る、瑠璃さん!」

「・・な、何よ、そんなに驚いて。うちに来たんじゃないの?」

「い、いや、そうだけど。でもいきなり瑠璃さんが出たからびっくりして・・・」

「出たって何よ。人をオバケみたいに」

瑠璃さんはツンと顎をあげ、その顔がほんの少し赤いことに気が付いた。

気が付いた途端、今度は会えたのは二週間ぶりだと言う事を思い出した。

思い出したら、ふいに動悸がしてきて、ぼくは気付かれないように息を吸い込んだ。







<続>


長らく更新をせずにすみませんでした。一年ぶりの更新となりますm(__)m
一年過ぎて、内容的にまたちょうどぴったりの季節になりました。
ここを逃したらまた一年が経ってしまうような気がして、一念発起して再開致しました。

前回までのお話をざっくりとまとめますと、二人はお互い好きなのに、すれ違ったままバレンタインを翌日に迎えています。
代田(鷹男)が瑠璃にちょっかい出したり、奥野奈津(夏姫)が編入して来たり、それぞれに気がかりがあります。
卒業してしまえば違う大学となり、会えなくなることが分かっている二人は────

よろしかったらお付き合いくださいませ。

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**イラスト・藍さん**