瑠璃ガール<70>

2019-01-23 | ss(現代・高等科編)
※本館「現代編」設定の2人です※





「藤原くんのことが好きなんでしょ」

言葉に詰まるあたしに向けて、もう一度、同じ言葉を繰り返してきた。

でも、少し違ってたのはイントネーション。

一回目のが語尾が上がってたのに対して、今度のが語尾が下がる感じ。

そうなんでしょ、と決めつけて来た風にも思える。

「別に・・」

好きじゃないわよ。

そう言い掛けて、あたしは言葉を飲み込み

「どうしてそう思うの?」

と聞き返した。

質問に質問で答えるのはズルいかとも思ったけど、何だかあたしの全神経が「警戒せよ」と告げていたのだ。

「見ていてそう思っただけよ」

「・・・」

「この子、藤原くんが好きなんだなぁって」

どこかからかいを含んだ口調に、持ち前の負けん気がムクムクと頭をもたげる。

誰だか知らないけど、いきなり話しかけてきて失礼じゃないの。

「そりゃあ好きよ。だって幼馴染だもの」

「それだけ?」

「・・・」

「ふふふ、素直じゃないのね、あなた。そんな意地張ってると後悔することになるかも知れないわよ」

「別に意地なんか・・・」

そこまで言ったところで

「あ、瑠璃。こんなところにいたのね」

角を曲がってきた亜実が声を掛けてきた。

亜実が現れると女子生徒は何も言わずに立ち去ってしまい、しばらくその後ろ姿を目で追っていると

「なぁに、瑠璃。奥野さんと友だち?」

「ううん。・・・って言うか、奥野さんって言うんだ、今の人」

「確か奥野奈津って言うんじゃなかったかしら。2学期の途中からの編入生よ。すごい才媛らしくて、一部のマニアックな男子からは絶大な人気があるみたい」

「ふぅん」

確かにいかにも賢そうな顔をしていたけれど。

そんなに頭が良いのなら高彬と同じ大学行くのかな───

ちらりとそんな考えがよぎると

「卒業したらまた引っ越しちゃうらしいけど」

まるであたしの心を見透かすように亜実が言い

「なんで」

「そんなことあたくしに聞かれても知らないわよ。それより瑠璃、気をつけなさいよ。カフェテリアでまた下の子たちが騒いでたわよ、今日こそは瑠璃先輩を問い詰める、何て言って。放課後はさっさと帰った方がいいわ。あたくし、優しいからそれを忠告しにきてあげたのよ」

「う、うん。ありがと・・」

予鈴が鳴り、教室に戻り授業が始まっても、全くと言って良いほど頭に入って来ない。

───藤原くんのことが好きなんでしょ。

───意地張ってると後悔することになるかも知れないわよ。

さっきの言葉が頭の中で何度も再生される。

後悔なら───

もうとっくに色々してるわよ・・・

放課後、亜実のアドバイスもあり早々に教室を後にして正門に行くと、まだ高彬は来ていなかった。

まごまごしてたら下級生に見つかるし、先に帰っちゃおうかな。

でも、ついさっき高彬に「門のところで」って言われたばかりだし・・・

あれこれ考えていると、昇降口から高彬の姿が現れた。

あたしがいることに気付いたみたいで、軽く合図をすると走りだし、そのまままっずぐにあたしのところに───

来るかと思われたのに、誰かに声を掛けられて立ち止まった。

「・・・」

声を掛けたのは、さっきの女子生徒、奥野さんだった。







<続>


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**イラスト・藍さん**

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