※本館「現代編」設定の2人です※
「藤原くんのことが好きなんでしょ」
言葉に詰まるあたしに向けて、もう一度、同じ言葉を繰り返してきた。
でも、少し違ってたのはイントネーション。
一回目のが語尾が上がってたのに対して、今度のが語尾が下がる感じ。
そうなんでしょ、と決めつけて来た風にも思える。
「別に・・」
好きじゃないわよ。
そう言い掛けて、あたしは言葉を飲み込み
「どうしてそう思うの?」
と聞き返した。
質問に質問で答えるのはズルいかとも思ったけど、何だかあたしの全神経が「警戒せよ」と告げていたのだ。
「見ていてそう思っただけよ」
「・・・」
「この子、藤原くんが好きなんだなぁって」
どこかからかいを含んだ口調に、持ち前の負けん気がムクムクと頭をもたげる。
誰だか知らないけど、いきなり話しかけてきて失礼じゃないの。
「そりゃあ好きよ。だって幼馴染だもの」
「それだけ?」
「・・・」
「ふふふ、素直じゃないのね、あなた。そんな意地張ってると後悔することになるかも知れないわよ」
「別に意地なんか・・・」
そこまで言ったところで
「あ、瑠璃。こんなところにいたのね」
角を曲がってきた亜実が声を掛けてきた。
亜実が現れると女子生徒は何も言わずに立ち去ってしまい、しばらくその後ろ姿を目で追っていると
「なぁに、瑠璃。奥野さんと友だち?」
「ううん。・・・って言うか、奥野さんって言うんだ、今の人」
「確か奥野奈津って言うんじゃなかったかしら。2学期の途中からの編入生よ。すごい才媛らしくて、一部のマニアックな男子からは絶大な人気があるみたい」
「ふぅん」
確かにいかにも賢そうな顔をしていたけれど。
そんなに頭が良いのなら高彬と同じ大学行くのかな───
ちらりとそんな考えがよぎると
「卒業したらまた引っ越しちゃうらしいけど」
まるであたしの心を見透かすように亜実が言い
「なんで」
「そんなことあたくしに聞かれても知らないわよ。それより瑠璃、気をつけなさいよ。カフェテリアでまた下の子たちが騒いでたわよ、今日こそは瑠璃先輩を問い詰める、何て言って。放課後はさっさと帰った方がいいわ。あたくし、優しいからそれを忠告しにきてあげたのよ」
「う、うん。ありがと・・」
予鈴が鳴り、教室に戻り授業が始まっても、全くと言って良いほど頭に入って来ない。
───藤原くんのことが好きなんでしょ。
───意地張ってると後悔することになるかも知れないわよ。
さっきの言葉が頭の中で何度も再生される。
後悔なら───
もうとっくに色々してるわよ・・・
放課後、亜実のアドバイスもあり早々に教室を後にして正門に行くと、まだ高彬は来ていなかった。
まごまごしてたら下級生に見つかるし、先に帰っちゃおうかな。
でも、ついさっき高彬に「門のところで」って言われたばかりだし・・・
あれこれ考えていると、昇降口から高彬の姿が現れた。
あたしがいることに気付いたみたいで、軽く合図をすると走りだし、そのまままっずぐにあたしのところに───
来るかと思われたのに、誰かに声を掛けられて立ち止まった。
「・・・」
声を掛けたのは、さっきの女子生徒、奥野さんだった。
<続>
表の瑠璃姫、奥の夏姫───。身分の差のない夏の出方は?!楽しんでいただけましたらクリックで応援をお願いいたします。
↓↓
**イラスト・藍さん**
「藤原くんのことが好きなんでしょ」
言葉に詰まるあたしに向けて、もう一度、同じ言葉を繰り返してきた。
でも、少し違ってたのはイントネーション。
一回目のが語尾が上がってたのに対して、今度のが語尾が下がる感じ。
そうなんでしょ、と決めつけて来た風にも思える。
「別に・・」
好きじゃないわよ。
そう言い掛けて、あたしは言葉を飲み込み
「どうしてそう思うの?」
と聞き返した。
質問に質問で答えるのはズルいかとも思ったけど、何だかあたしの全神経が「警戒せよ」と告げていたのだ。
「見ていてそう思っただけよ」
「・・・」
「この子、藤原くんが好きなんだなぁって」
どこかからかいを含んだ口調に、持ち前の負けん気がムクムクと頭をもたげる。
誰だか知らないけど、いきなり話しかけてきて失礼じゃないの。
「そりゃあ好きよ。だって幼馴染だもの」
「それだけ?」
「・・・」
「ふふふ、素直じゃないのね、あなた。そんな意地張ってると後悔することになるかも知れないわよ」
「別に意地なんか・・・」
そこまで言ったところで
「あ、瑠璃。こんなところにいたのね」
角を曲がってきた亜実が声を掛けてきた。
亜実が現れると女子生徒は何も言わずに立ち去ってしまい、しばらくその後ろ姿を目で追っていると
「なぁに、瑠璃。奥野さんと友だち?」
「ううん。・・・って言うか、奥野さんって言うんだ、今の人」
「確か奥野奈津って言うんじゃなかったかしら。2学期の途中からの編入生よ。すごい才媛らしくて、一部のマニアックな男子からは絶大な人気があるみたい」
「ふぅん」
確かにいかにも賢そうな顔をしていたけれど。
そんなに頭が良いのなら高彬と同じ大学行くのかな───
ちらりとそんな考えがよぎると
「卒業したらまた引っ越しちゃうらしいけど」
まるであたしの心を見透かすように亜実が言い
「なんで」
「そんなことあたくしに聞かれても知らないわよ。それより瑠璃、気をつけなさいよ。カフェテリアでまた下の子たちが騒いでたわよ、今日こそは瑠璃先輩を問い詰める、何て言って。放課後はさっさと帰った方がいいわ。あたくし、優しいからそれを忠告しにきてあげたのよ」
「う、うん。ありがと・・」
予鈴が鳴り、教室に戻り授業が始まっても、全くと言って良いほど頭に入って来ない。
───藤原くんのことが好きなんでしょ。
───意地張ってると後悔することになるかも知れないわよ。
さっきの言葉が頭の中で何度も再生される。
後悔なら───
もうとっくに色々してるわよ・・・
放課後、亜実のアドバイスもあり早々に教室を後にして正門に行くと、まだ高彬は来ていなかった。
まごまごしてたら下級生に見つかるし、先に帰っちゃおうかな。
でも、ついさっき高彬に「門のところで」って言われたばかりだし・・・
あれこれ考えていると、昇降口から高彬の姿が現れた。
あたしがいることに気付いたみたいで、軽く合図をすると走りだし、そのまままっずぐにあたしのところに───
来るかと思われたのに、誰かに声を掛けられて立ち止まった。
「・・・」
声を掛けたのは、さっきの女子生徒、奥野さんだった。
<続>
表の瑠璃姫、奥の夏姫───。身分の差のない夏の出方は?!楽しんでいただけましたらクリックで応援をお願いいたします。
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**イラスト・藍さん**