※本館「現代編」設定の2人です※
一日中、喧騒と言っていいほどの賑やかさに囲まれていたためか、土手がいつも以上に静かに感じる。
「皆、まだ盛り上がってるかしらね」
「多分ね」
炎の回りではしゃいだり、BGMに合わせて踊ったり、もしくは2人きりの世界に浸っちゃってる恋人たちとか。
そんな光景が目に浮かぶ。
土手は大通りからも離れているので車の音もなく、あたしたちが踏みしめる小砂利の音と、草むらで鳴く虫の声しかしない。
この辺りは川がカーブしているので、等間隔にある街灯の灯りが、先の方に向かい緩やかな曲線を描いている。
高彬によって掴まれていた手首は、校門を出る頃に離されていた。
きっかけなんかなく、ただ、すぅっと離されていたと言う感じ。
「高彬は抜けて大丈夫だったの?後夜祭」
「大丈夫だよ、後夜祭はまた別の実行委員が動いてくれてるんだし。とんでもないハプニングでも起こればすぐに連絡が来るさ」
あたしとしては暗に(誰かと過ごす予定はなかったの?)と聞いたつもりだったんだけど、高彬の返事はどこまでも実行委員長としての見解だった。
「ま、何も起きないだろうけど」
そう言ったきり、高彬は前を向いたまま黙々と歩いている。
「・・・」
「帰ろう」って言ったのは高彬なんだし、何か、しゃべってくれないかな・・・
間が持たないじゃない。
しばらく無言で歩いていると
「さっきの話だけどさ、瑠璃さん。瑠璃さんはどうなのかな」
高彬が急に口を開いた。
「え。さっき?さっきって・・・、どのさっき?」
いきなり、どうなのかな、と聞かれ、間が抜けた声で聞き返してしまった。
「あのさ」
高彬が立ち止まり、釣られてあたしも立ち止まる。
「真面目に聞いて欲しいことがあるんだけど・・」
高彬があたしの方に身体ごと向くので、あたしも同じように高彬に向き直る。
正面から向かい合い、街灯の灯りに照らされた高彬の顔が真剣な顔であたしを見て───
そうして口元が動きかけた次の瞬間。
辺りが真っ暗になり、目の前から高彬の顔が消えた。
「え、何・・」
何が起こったのかわからず狼狽えていると
「停電だよ、きっと」
シルエットだけの高彬が言った。
確かに普段は見えているビルの窓の灯りや街灯が全て消えている。
「やだ、怖い。暗い・・」
突然の暗闇は思っていた以上に恐怖で、情けない声が出てしまう。
「大丈夫、落ち着いて。すぐに目が慣れるから。一度目を瞑って、十数えたくらいでゆっくり開けてごらん」
「う、うん」
言われた通りにしてみると、さっきよりもよく見えて、それどころか月明かりで随分と回りが明るく照らされていることに気が付いた。
高彬の顔も良く見える。
「もう大丈夫だろ?」
「そうね、良く見えるわ」
嬉しくなって、にっこりと笑い合う。
「後夜祭、大丈夫かしら」
「むしろ盛り上がってるじゃないか?」
「・・そうかもね」
頷いて歩き出そうと一歩を踏み出すと
「あっ」
足元に大きめの石でもあったのか、派手に躓いてしまった。
「痛っ」
思わずしゃがみ込んで足首をさすってみても、すぐには痛みが治まらず
「どうした?挫いた?」
「うーん、どうかしら・・」
あー、もう!あたしのドジ。
よりによってこんな時に躓かなくても!
「歩ける?」
「うん、大丈夫よ」
強がり言って歩き出してみたものの、足がズキズキと痛み、思うように歩けない。
「瑠璃さん、良かったらぼくに掴まって・・・いや、こっちの方がいいかな。・・・はい」
言うなり高彬があたしの前にしゃがみ込んだ。
「え」
「乗って。おぶってあげる」
「えぇー。い、いいわよ。大丈夫、歩けるわ」
「いいさ、遠慮しないで。前もおぶったし」
「・・・」
夏に───
海からの帰り道におぶってもらったこと、覚えてくれてるんだ・・・
「誰も見てないし」
「・・・」
「さぁ、早く」
「・・うん。じゃあ、・・ごめんね。重いけど」
肩に手を掛け身体を預けると、次の瞬間、足が地面を離れ、ふわりと身体が浮いた。
<続>
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一日中、喧騒と言っていいほどの賑やかさに囲まれていたためか、土手がいつも以上に静かに感じる。
「皆、まだ盛り上がってるかしらね」
「多分ね」
炎の回りではしゃいだり、BGMに合わせて踊ったり、もしくは2人きりの世界に浸っちゃってる恋人たちとか。
そんな光景が目に浮かぶ。
土手は大通りからも離れているので車の音もなく、あたしたちが踏みしめる小砂利の音と、草むらで鳴く虫の声しかしない。
この辺りは川がカーブしているので、等間隔にある街灯の灯りが、先の方に向かい緩やかな曲線を描いている。
高彬によって掴まれていた手首は、校門を出る頃に離されていた。
きっかけなんかなく、ただ、すぅっと離されていたと言う感じ。
「高彬は抜けて大丈夫だったの?後夜祭」
「大丈夫だよ、後夜祭はまた別の実行委員が動いてくれてるんだし。とんでもないハプニングでも起こればすぐに連絡が来るさ」
あたしとしては暗に(誰かと過ごす予定はなかったの?)と聞いたつもりだったんだけど、高彬の返事はどこまでも実行委員長としての見解だった。
「ま、何も起きないだろうけど」
そう言ったきり、高彬は前を向いたまま黙々と歩いている。
「・・・」
「帰ろう」って言ったのは高彬なんだし、何か、しゃべってくれないかな・・・
間が持たないじゃない。
しばらく無言で歩いていると
「さっきの話だけどさ、瑠璃さん。瑠璃さんはどうなのかな」
高彬が急に口を開いた。
「え。さっき?さっきって・・・、どのさっき?」
いきなり、どうなのかな、と聞かれ、間が抜けた声で聞き返してしまった。
「あのさ」
高彬が立ち止まり、釣られてあたしも立ち止まる。
「真面目に聞いて欲しいことがあるんだけど・・」
高彬があたしの方に身体ごと向くので、あたしも同じように高彬に向き直る。
正面から向かい合い、街灯の灯りに照らされた高彬の顔が真剣な顔であたしを見て───
そうして口元が動きかけた次の瞬間。
辺りが真っ暗になり、目の前から高彬の顔が消えた。
「え、何・・」
何が起こったのかわからず狼狽えていると
「停電だよ、きっと」
シルエットだけの高彬が言った。
確かに普段は見えているビルの窓の灯りや街灯が全て消えている。
「やだ、怖い。暗い・・」
突然の暗闇は思っていた以上に恐怖で、情けない声が出てしまう。
「大丈夫、落ち着いて。すぐに目が慣れるから。一度目を瞑って、十数えたくらいでゆっくり開けてごらん」
「う、うん」
言われた通りにしてみると、さっきよりもよく見えて、それどころか月明かりで随分と回りが明るく照らされていることに気が付いた。
高彬の顔も良く見える。
「もう大丈夫だろ?」
「そうね、良く見えるわ」
嬉しくなって、にっこりと笑い合う。
「後夜祭、大丈夫かしら」
「むしろ盛り上がってるじゃないか?」
「・・そうかもね」
頷いて歩き出そうと一歩を踏み出すと
「あっ」
足元に大きめの石でもあったのか、派手に躓いてしまった。
「痛っ」
思わずしゃがみ込んで足首をさすってみても、すぐには痛みが治まらず
「どうした?挫いた?」
「うーん、どうかしら・・」
あー、もう!あたしのドジ。
よりによってこんな時に躓かなくても!
「歩ける?」
「うん、大丈夫よ」
強がり言って歩き出してみたものの、足がズキズキと痛み、思うように歩けない。
「瑠璃さん、良かったらぼくに掴まって・・・いや、こっちの方がいいかな。・・・はい」
言うなり高彬があたしの前にしゃがみ込んだ。
「え」
「乗って。おぶってあげる」
「えぇー。い、いいわよ。大丈夫、歩けるわ」
「いいさ、遠慮しないで。前もおぶったし」
「・・・」
夏に───
海からの帰り道におぶってもらったこと、覚えてくれてるんだ・・・
「誰も見てないし」
「・・・」
「さぁ、早く」
「・・うん。じゃあ、・・ごめんね。重いけど」
肩に手を掛け身体を預けると、次の瞬間、足が地面を離れ、ふわりと身体が浮いた。
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