雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

友情の酒 ・ 今昔物語 ( 10 - 40 )

2024-05-20 08:05:12 | 今昔物語拾い読み ・ その2

      『 友情の酒 ・ 今昔物語 ( 10 - 40 ) 』


今は昔、
震旦の[ 欠字。王朝名が入るが不詳。]の御代に、利徳・明徳(共に伝不詳)という二人の酒飲みがいた。
この二人は、三日にあげずに、互いに行き来して、酒を飲むのを常としていた。
ある時、利徳は狩猟のために家を出掛けた。明徳は利徳が出掛けたことを知らずに、利徳の家にやって来た。しかし、家の主がいないので、家人に酒坏を借りて、家の池の橋の上に座って、池の水を汲んで酒坏を捧げて、水を飲んで帰った。

その日の暮れ方、利徳が家に帰ると、妻が利徳に、明徳が来たことを話した。
利徳は、その時の様子を聞くと、明くる朝に、池の橋の上で水を汲んで、昨日と同じようにして、口すさんで、「御酒の欲(ホ)しきに非ず。明徳の芳しき(友情が芳しい)故なり」と言ったという。
昔は、酒を飲むにあたっても、このようであったのだ、
となむ語り伝へたるとや。
    
      ☆   ☆   ☆


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