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種子島でH-IIAロケット12号機打ち上げを見る

2007-02-26 | 宇宙
種子島宇宙センターから平成19年2月15日に打ち上げられる予定だった、情報収集衛星2機を搭載したH-IIAロケット12号機。
しかし天候不順のせいで打ち上げがズルズルと延期され続け、とうとう当初の予定日から1週間以上遅れて2月24日に打ち上げるという発表があったのが2月21日。
H-IIAロケット12号機による情報収集衛星2機(レーダ2号機および光学3号機実証衛星)の打上げ延期について(JAXAプレスリリース)

24日は土曜日、休日だ。今回はH-IIAロケットの“積み荷”が実質的に偵察衛星である「情報収集衛星」なので、機密保持の為?打ち上げ時刻は直前まで公表されないとのことだったが、某巨大掲示板のロケット関連スレでは「恐らく13:41では?」という旨のカキコがあった。まあ24日に延期される前の打ち上げ予定日だった22日の打ち上げ予定時刻も13:41だったので、延期日も同じ時刻に打ち上げるのだろう。
13:41だったら、当日朝に熊本県の自宅を出ても打ち上げ時刻までに種子島宇宙センターの近くまで行けるかも知れないな。。。と、何となくネットで種子島行きの船や飛行機の時刻を調べてみる。
打ち上げ当日の鹿児島空港発種子島行きの日本エアコミューターの午前便は満席だったが、鹿児島港から出ている高速船その名も「ロケット」には空席があった。高速船の着く種子島西之表港から宇宙センターのある南種子町までのバスは便数が極端に少ないものの、うまい具合に高速船「ロケット」に接続する便が設定されていることも分かった。
早朝に自宅を出てJR新八代駅から始発の鹿児島中央駅行き新幹線つばめに乗れば、高速船とバスを乗り継いで昼過ぎには南種子町に到着する事が出来る。
「当日出発でも打ち上げに間に合うな。種子島にはまだ行った事がないし一度見に行かないといけないと思ってたし…よし、見に行くかぁ!」
という事で、急遽種子島までロケット打ち上げを見に行く事にしたのだ。


平成19年2月24日、早朝6時半。
新八代駅から九州新幹線「つばめ101号」に乗車。よく考えたら今年最初の「つばめ」乗車だ。

週末の始発便とあって車内は空いている。
JR九州入魂の豪華列車「つばめ」のゴージャスなインテリア、自由席車でも「のぞみ」のグリーン車を凌駕する深々とした西陣織張り(!)のシートに座っていると、余りの快適さについウトウト…


居眠りしているうちに、僅か47分で鹿児島中央に到着。
下車する時、デッキにロケット打ち上げのイラストが飾ってあるのに気がついた。
「つばめ」のデザインを手掛けたJR九州専属デザイナー水戸岡鋭治氏の作品だが、種子島宇宙センターから打ち上げられるH-Iロケット8号機(発射台の号機表示まで正確に描写されてたんでそれと分かった)を水戸岡先生らしい大胆な色使いと精密なラインで描いた逸品だ。
「カッコいい!これの複製画が欲しいぞ。秋のJR小倉工場まつりで売ってくれんかなあ」
ちなみにH-Iロケット8号機は平成3年8月25日にゆり3号b(BS-3b)を打ち上げたロケット。
「今度はM-Vロケットが内之浦から打ち上げられるシーンとかも描いて欲しいな」

鹿児島中央駅から在来線に乗り継いで隣の鹿児島駅まで行き、徒歩で15分程の位置にある鹿児島港北埠頭へ向かう。北埠頭は鹿児島水族館の裏にあるらしいが、水族館から先の道順がよく分からず奄美沖縄航路の貨物ターミナルみたいな場所の前を通り抜けてなんとか到着。旅客ターミナル内のコスモライン社の窓口で飛行機のように搭乗手続きをしてボーディングパスを受け取り、9:20発の高速船「ロケット3」の船内へ。川崎重工製のジェットフォイル。
乗船手続きが飛行機と似ているが、船内の雰囲気も飛行機に似ていて座席は全席指定で「安全のしおり」やシートベルトがあり、出港時には非常時の対応の案内ビデオも放映される。
ジェットフォイルに乗るのは初めてだったが、速いし大して揺れないしなかなか快適だった。薄っすらと見える薩摩半島の景色や開聞岳を見て、外海に出てちょっと揺れるようになったな、とか思ってるうちに平べったい島影が見えてきて、そのまま定刻の午前11時少し前に種子島西之表港に到着。

西之表港では観光バスやレンタカーの案内係りと一緒に数名の警察官がお出迎え。やはり偵察衛星打ち上げの当日とあって警備も厳しくなっているのだろうか。
港の小さな旅客ターミナルの前に停まっていた南種子行きの路線バスに乗り込み、運転手さんに「あの~ロケット見に来たんですけど、南種子までどの位時間かかりますか?」と聞くと「ロケット?それなら途中で長谷(はせ)ってとこ通りますから、その近くにロケットの観望所がありますから、皆さんそこに行ってロケット見られますから。大体1時間位かかりますから。」とのこと。今から1時間なら、13:41の打ち上げには余裕で間に合うな。

種子島の西海岸に沿ってのんびりバスは南下する。種子島には信号機が数箇所しかないと聞いていたが、本当に信号も渋滞もなく快適だ。途中、運転手さんがバス停から乗り込んで来るお年寄りに「今日は土曜だから乗らんのかと思ってたら、来てたね~」とか声をかけたりして何とも微笑ましい。
小一時間程バスに揺られて、「次は長谷です。ロケット見に来られたお客さんは次で降りてください」と言われて下車。料金を払ってると運転手さんから「ロケット観望所には店も何もないから、あそこの店で食べ物とか買って行った方がいいですから」とか教えてくれる。
何とも人情味のあるバスの旅だった。

長谷のバス停から一面の砂糖キビ畑の中を歩いて、長谷展望公園に到着。

長谷展望公園は広々とした芝生広場から種子島宇宙センターのロケット射場を望むことができる。芝生広場には既にロケット打ち上げ見学の親子連れやグループが多数集まっていて、ブルーシートを広げて弁当を囲んでいるグループもいて皆ピクニック気分で打ち上げ見学を楽しんでいる。


ロケット射場には打ち上げを目前にしたH-IIAロケット12号機の姿も見える。
今回は「偵察衛星」の打ち上げなので、通常の打ち上げの際には実施されるという射場の状況の音声中継等もないだろうと思っていたら、しっかりイベント用のテントが張られ招待客用の展望席まで準備されていて、状況音声中継もバッチリ流されていた。それによると打ち上げ時刻はやっぱり13:41とのこと。
しかし、状況中継と一緒に「種子島ロケット音頭」みたいなのも大音量で流すのは勘弁してくれ、打ち上げ前の緊張感のある雰囲気ぶち壊しだ~!

芝生広場の最前列辺りにもまだ空きスペースがあったので、適当なところに腰をおろして打ち上げを待つ。エンドレスで流れる「種子島ロケット音頭」の合間に現在の状況が逐一放送される。今のところ打ち上げは問題なく秒読みも開始され、予定通りとのこと。射場周辺にはヘリコプターが飛び交っている。警備なのかと思ったが、散水タンクのようなものを吊るしているので防災用かも知れない。

打ち上げ5分前頃から、「種子島音頭」に代わって秒読みが放送され始めた。内之浦での打ち上げ秒読みのように男性職員の肉声ではなく、女声の自動放送だ。
この頃には長谷公園の芝生広場は見物客で一杯になっていたが、皆行儀よく並んで座って打ち上げを待っているので、公園全体がロケット打ち上げという大舞台の開幕を待つ野外劇場となったような印象だ。

打ち上げ1分前頃から、「観客席」全体が波打つように静かな緊張感に包まれたのが分かった。皆、息を殺すように「その時」を待っている。
打ち上げ10秒前から、誰からともなくカウントダウンの大合唱が始まる。観客たちの気持ちは一つになり、H-IIAロケット12号機の飛翔を見逃すまいと数キロ先の射場を見つめている。

「5、4、3、2、1、H-IIA・F12リフトオフ!」

平成19年2月24日13時41分(日本時間)、H-IIAロケット12号機は種子島宇宙センターから打ち上げられた。



初めて見るH-IIAロケットの飛翔。
打ち上げの瞬間、固体燃料ブースターSRB-Aが噴出す硬質でオレンジ色の炎の印象は内之浦で見たM-Vロケットの打ち上げと似ているが、その飛行はM-Vとはまるで違う。ふわりと浮き上がりそのまま軽快に天空目指して駆け登っていくかのようなM-Vの飛行に対して、H-IIAの打ち上げはとにかく重厚なのだ。
強力な固体燃料ブースターの力を借りて何とか地表からその巨体を引き離したH-IIAは、そのまま足元を確かめるかのように一歩一歩上昇していく。
どうにか発射台から完全に離れるまで上昇したところで、さあ行くぞ!と言わんばかりに加速を始める。
漸く地球の重力を振りほどけそうな勢いにまで加速した頃、地表で見守る観衆のもとに猛烈に打ち鳴らされるティンパニの重力波が降り注ぐ。腹の底に響くような重低音を味わいながら、観衆は今まさに空の彼方へと消えて行かんとするH-IIAを見上げる…

打ち上げられたH-IIAロケット12号機は、やがて雲の切れ間の青空の中に消えていった。どこまでも真っ直ぐに上昇していくような打ち上げだった。
あとには、ロケット雲だけが残ったがこれもすぐに風に掻き消されてしまい、何事も無かったかのような風景の中を散水装置を積んで射場周辺を消火活動中のヘリの飛行音だけが響いていた。

「旅立ったか…」

ロケットの打ち上げを見送った後に感じる、寂寥感。
長谷公園に集まった観衆も皆帰り支度を始めている。祭りのあと。

すると突如、実況中継が再開された。
「先程フェアリングの開頭と衛星の分離を確認しました」
打ち上げは成功だ!
帰り始めていた観衆から歓声と拍手が沸き起こる。どうやら、分離時間から偵察衛星の投入される軌道を分析されないように衛星分離が確認されるまで状況中継がカットされていたらしい。

かくしてH-IIAロケット12号機による偵察衛星の2機同時打ち上げは成功した。
H-IIAロケット12号機による情報収集衛星2機(レーダ2号機および光学3号機実証衛星)の打上げ結果について(JAXAプレスリリース)

いつもの打ち上げなら、これから宇宙に旅立った衛星の調整状況が逐一報告され、衛星が成長し成果をあげていく姿を見守るという楽しみがあるのだが、残念ながら今回旅立った2機の衛星たちは偵察衛星なので今後はその状況は国家機密扱いとなり、今後の衛星の情報は秘密のベールに包み隠されてしまうだろう。

「さようなら、H-IIAロケット12号機の子供たち。もう見守ってやれないけど、日本人みんなのために宇宙で頑張れよ」

さて、H-IIAロケットの次の打ち上げは今年夏に予定されている。
搭載されるのは、我が国初の本格的な月探査機SELENE(セレーネ)だ。

画像提供 宇宙航空研究開発機構(JAXA)

アポロ以来最大規模の月探査プロジェクトであるセレーネには、何と我々も無料で搭乗することが出来る。

セレーネ「月に願いを!キャンペーン(JAXA)

我々の名前とメッセージを特殊シートに刻み込み、セレーネ本体に搭載して月周回軌道へと連れて行ってくれるというこのロマン溢れるキャンペーンの受け付けは、いよいよ今月末まで!!
今ならまだギリギリ間に合うので、この夏セレーネと一緒に種子島宇宙センターからH-IIAロケットで旅立ちたい人は急いで上記リンクからJAXAのキャンペーンサイトにGO!

僕も既に名前とメッセージを登録して、セレーネへの搭乗手続きは済んでいる。
夏には僕の想いを乗せた月探査機を搭載した次のH-IIAロケットの打ち上げを見送りに、また種子島へ来るぞ!

さて、これからどうするかね。種子島まで急いで来たから今夜の宿の確保はしてないし、今からじゃ九州本土へ戻る船にも間に合わないし。

「仕方がない、とりあえず今から西之表に戻るか…歩いて。」
(以下続く)



2 コメント

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今度の (ミンク)
2010-04-11 00:38:49
5月18日種子島から打ち上げのロケット『あかつき』見に行きますか?熊本から一緒に行きませんか?k.s-directmail@ezweb.ne.jp
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ミンクさん、こんにちは (天燈茶房亭主mitsuto1976)
2010-04-11 13:49:15
「あかつき」「イカロス」のH-IIAロケット17号機打ち上げは見に行くつもりです。ただ、まだ休暇が取れるか本決まりしてないんで詳細な渡航計画が立てられないんですよね~
もし行けるなら、現地でお会いしましょう!
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