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Muses Europa Eisenbahn 2012-2013中欧鉄道音楽紀行 21:Sestokai 終着駅、そして鉄路は続く

2013-02-16 | 鉄道
Šeštokai geležinkelio stotys


20:Trakiszki 国境地帯を列車は往くからの続き



終着駅Sestokaiに到着したワルシャワ発の国際列車「HAŃCZA」号。
ここはリトアニアの南の果て、ポーランドとの国境からは十数キロ程しか離れていません。
駅の周りには、木材の積み出し基地と思われる施設がある以外は数軒の民家が建ち並ぶ小さな集落が見えるのみ。
雰囲気はまさしく“辺境の駅”です。

こんな駅が、どうして国際列車の最終目的地なのでしょう…?



「HAŃCZA」号は、このままSestokai駅で折り返してワルシャワ行きの列車となり、ポーランドに戻ります。
僕も「HAŃCZA」号と一緒に、今日中にワルシャワに帰らなくてはなりません。
何しろSestokai駅とワルシャワとを結ぶ列車は1日1本、この「HAŃCZA」号だけなのですから、
もし乗り遅れてここに取り残されたりしたら大変です!

所定のダイヤではSestokai駅到着後に“機回し”を行い、進行方向を変えてから、15分後に発車することになっていますが、
今日は30分程遅れて到着したので、既に定刻の発車時刻は過ぎています。
機関車の入れ替えと連結作業が済み次第すぐに発車してしまうと思われますので、
残念ながら駅の周りをゆっくりと見る時間はありません。
せめて、プラットホームに降りて列車の横を歩いてみることにしましょう。
列車が発車しそうになったら、すぐに近くの乗降ドアから乗り込むことが出来ますからね。

Sestokai駅に停車中の「HAŃCZA」号の編成の横を歩いて行くと…



同じプラットホームの向かい側に、リトアニア鉄道の列車が停車していました。
眺めていると、車掌さんから
「Kaunas(カウナス)か?早くこれに乗れ!」
と声を掛けられ手招きされます。
カウナスはリトアニアの都市名です。そう、この列車は「HAŃCZA」号の到着を待っていたリトアニア鉄道のカウナス行き列車。
「HAŃCZA」号は、Sestokai駅でこの列車に接続して、
ワルシャワとカウナス、さらにその先のリトアニア国内の各都市とを結ぶという使命を帯びた国際列車だったのです。

思わずカウナス行きの列車に乗り込んでしまいたくなりますが、我慢して
「No,Warszawa! 違うよ、ワルシャワに行くんだよ」
と応えます。
その時、プラットホームの向こうから「HAŃCZA」号の編成に機関車を連結する音が聞こえてきました。



「ああ、もう列車が発車する…僕は帰らなくちゃ…」

急いで「HAŃCZA」号の最後尾の車輌に乗り込みます。
1日に1本の列車を見に来たらしい地元の子どもたちが、見慣れぬ東洋人の旅行者に奇異の眼差しを向けて
笑いながらプラットホームを走っていきます。




「HAŃCZA」号の発車を待たずに、カウナス行きのリトアニア鉄道の列車が先にSestokai駅を発車していきました。






走り去るリトアニア鉄道の列車。
あの広軌の線路は、この先カウナスへ、そしてさらにその先のリトアニアの街へと続いています。
いつか、僕もこの先まで行きたい…

カウナスは第二次世界大戦期にはリトアニアの臨時首都であり、
そこにあった日本領事館に赴任していた杉原千畝外交官がドイツ領内からの大量のユダヤ人難民に対して
「命のビザ」を発給し続けていた地であったということを知ったのは、
旅を終えて帰国した後、改めてカウナスについて調べていた時です。
…これは、本当にいつの日かカウナスに行かないといけませんね。勿論、あのリトアニア鉄道の列車に乗って!


そして「HAŃCZA」号も、Sestokai駅を発車します。
束の間の、国境地帯の駅での滞在でした。

車窓には夕闇が迫っています。
リトアニアの大地に、2013年最初の日の太陽が沈もうとしています…






「HAŃCZA」号は夕陽を追いかけて走ります。





どうか今年も、世界が穏やかで良い一年になりますように…!

帰り道は順調でした。
夜のポーランドを駆け抜けて、殆ど定刻通りの午後8時50分頃、
「HAŃCZA」号はワルシャワ中央駅に帰って来ました。


終わり良ければ全て良し、いい旅が出来たことに先ずは感謝!
(あっ、そう言えば何故か帰りのリトアニアからポーランドへの国境通過ではポーランドに入国した直後に国境警察の職員が列車に乗り込んできて
パスポートチェックがあったなぁ…
何で帰りだけ国境検問があるんだろう?まぁ僕の場合は何も問題なかったから別にいいんだけど。)


帰りの「HAŃCZA」号は途中の駅でかなり乗客を拾って、2等車は混雑していたようです。
皆さんも、長旅お疲れ様でした。



Sestokai駅では大急ぎで折り返し発車したせいか、サボは帰りもWarszawa発Sestokai行きのままでした。
こういうところが大らかというか、実にアバウトなのがポーランド国鉄らしさかな(笑)

「HAŃCZA」号はワルシャワ中央駅から先のワルシャワ西駅まで走ります。
終着駅のワルシャワ西駅まで、最後にもうひと頑張りです。


「今日はお疲れ様。そして、ありがとう『HAŃCZA』号!明日からも、故障には気をつけて元気に走ってくれよ。」







正体不明の国際列車「HAŃCZA」号は、
ポーランドの首都ワルシャワとリトアニアの各都市を結ぶ為に走る1日1本だけの貴重な列車でした。
国境地帯の小さな終着駅Sestokaiには、線路の幅の違いを乗り越えて二つの国をつなぐ乗り継ぎのドラマが待っていました。
終着駅は列車の最終目的地ではありません。
その先にも、まだ線路は続いていました。終着駅のその先へ、旅はまだまだ続くのです。

いつの日か、僕もその先の鉄路を旅したい。そんな想いと共に、今夜はホテルに帰ります。
明日はワルシャワを去ります。
今回の旅は折り返し点を過ぎました。明日からは、日本への帰り途が始まります。

22:MUZEUM TECHNIKI 科学技術博物館に続く


4 コメント

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Unknown (manta)
2013-02-17 09:12:33
k興味深く、またうらやましく記事を拝見しております。
最果ての駅、その向こうになにがあるのか気になりますね。
子供たちの笑顔もいい感じでした。
返信する
mantaさん、こんにちは (天燈茶房亭主mitsuto1976)
2013-02-17 14:57:39
旅行記を読んで下さってありがとうございます。
終着駅のその先へと続く線路、旅情を誘いますよね。
いつか必ず、あの先に行くつもりです。

子どもたちが遊んでいる姿を見かけると、
世界中どこにいても緊張感がほぐれて楽しい気分になれますね。
子どもの笑顔は本当にいいものです。
返信する
ポーランド~リトアニア間の国際列車について(2013年) (Balt)
2013-07-03 22:47:06
ポーランド・ワルシャワ~リトアニア・ビリニュス間の国際列車には、シェシュトカイ経由(Sestokai、ヴィザ不要)とベラルーシ経由(ヴィザが必要)の2ルートがあります。

*ワルシャワからカウナス、ビリニュス行きの列車時刻表(毎日運行)
ワルシャワ中央駅発(Warszawa Centralna depart):07:20
シェシュトカイ着・列車乗り換え(Sestokai arrive, change trains):14:57
シェシュトカイ発(Sestokai depart):15:10
カウナス着・列車乗り換え(Kaunas arrive, change trains):16:45
カウナス発(Kaunas depart):17:00
ビリニュス着(Vilnius arrive):18:16

*ビリニュス、カウナスからワルシャワ行きの列車時刻表(毎日運行)
ビリニュス発(Vilnius depart):11:20
カウナス着・列車乗り換え(Kaunas arrive, change trains):12:36
カウナス発(Kaunas depart):13:15
シェシュトカイ着・列車乗り換え(Sestokai arrive, change trains):14:52
シェシュトカイ発(Sestokai depart):15:12
ワルシャワ中央駅着(Warszawa Centralna arrive):20:50

ワルシャワ~シェシュトカイ間は1等と2等の座席あるが、シェシュトカイ~カウナス間は2等座席のみ。

注記:列車には食堂車が付いてないので、乗車前にパン、お菓子、水、ジュースなどを買っておく。

リトアニア南部のシェシュトカイ(sestokai) は、ポーランドとの唯一の国境駅で、古風なレンガ造りの駅舎があるおよそ人口750人の小さな村です。


返信する
Baltさんコメントありがとうございます。 (天燈茶房亭主mitsuto1976)
2013-07-03 22:54:19
ベラルーシはロシア同様、ビザ必須なので敷居が高いですね。
バルト三国はシェンゲン協定の参加国なので気軽に行けるのも魅力です。

sestokaiはのどかなところでした。
一度ゆっくり散歩してみたいですね。
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