ART COMMUNICATION IN SHIMANE みるみるの会の活動報告

島根の美術教育関係者が集まって立ち上げた対話型鑑賞の普及に努める「みるみるの会」の活動情報をお知らせするブログです。

文京学院大学セミナーレポート その2です!

2017-01-10 00:12:56 | 対話型鑑賞
文京学院大学VT(ヴィジュアルシンキング)セミナーレポート その2

 みるみるの会の金谷です。文京学院大学経営学部 馬渡ゼミの学生さんを対象に、講義あり実践形式あり、そして対話型鑑賞のナビゲーター体験ありのVTセミナー<2日目 実践編>について、参加した学生の皆さんの感想とともにレポートします。

<2日目 実践編>
 12月11日 参加者:学生9名
①ナビゲーター デモンストレーション 作品:「靴」ゴッホ(金谷)
②対話型鑑賞のナビゲーター体験(2グループに分かれて)
③シェアリング(全員で)
④ナビゲーター デモンストレーション 作品:「ゴッホの椅子」ゴッホ(春日)

※以下の本文中で「」で括られた太字の箇所は、参加した学生の皆さんの感想からの引用です。

①ナビゲーターのデモンストレーション(金谷)
 12月に、東京都美術館で開催されていた「ゴッホとゴーギャン展」で展示されていましたゴッホの「靴」でナビをさせてもらいました。
昨日の理論編で取り上げられていた、4つのフレーズ(声かけ)と「明るい声、優しい表情(!?)、わかりやすいことば」を意識してナビをしましたが、いかがだったでしょうか?
 では、実際にナビをやってみましょう!と、この後は2部屋に分かれてナビゲーター体験へ。

②対話型鑑賞のナビゲーター体験
 A・B、2つのグループに分かれ、実際にナビをしてもらいました。
 今回鑑賞した作品は、以下のとおりです(「作品名」作者)。今後、幼児を対象に実践を行うということでしたので、このようなラインナップとなりました。
1、「径」 小倉遊亀
2、「鳩と少女」 ピカソ (Aグループのみ)
3、「孫に本を読んで聞かせるカサット夫人」 メアリー・カサット
4、「カントリースクール」 ウインスロー・ホーマー
5、「誕生日」 藤田嗣治

 初見の作品で、いきなりナビゲーター!それも初ナビ!!という、かなりハードな体験でしたが、セミナー参加者全員がナビにチャレンジ。本当に頭が下がります。馬渡ゼミ生のみなさんナイスチャレンジです!
約30分間、作品鑑賞&ナビをしたあとふり返りをしました。ナビをやってみて、わかったことや、鑑賞者として思ったこと、ナビのよかった点や課題などを伝えあいました。
今度は、こうやってみようという思いをもって役割を交代し、次の作品鑑賞に取り組みました。


<ナビを体験して>
 「ナビゲーターは自分が思っていた以上に頭を使い、しっかりと受け手の声を聞いてから次にどうすればいいのかを考える。
 ナビゲーター側と受け手側の両方の非認知スキルの向上が見込めるなと深く思いました。」(3年生)

 「実際に自分がナビゲーターの立場になり進行をしていくと、どうやったらみんなに良い質問を促せるかなと、とても難しかったです。
 言葉づかいや表情、目線など気にすることが多かったです。(中略)対象は園児ですが、人に思ったことを伝える、または促すことの難しさを改めて感じました。」(3年生)
 
 「絵を見ることだけで終えるのではなく、そこから発展して他の知識も身につけられるという点で、とても有意義だと感じた。
 セミナーに参加し、実際にナビゲーターを体験することでよく考えること、そこから発展した考えに至ることはとても重要だと感じた。
 また、他の人の意見をよく聞くことで、自分の考察もさらに深まっていくことも感じた。」(2年生)

 「他の子がナビゲーターするのを見て、活動の相手によって話の進め方が変わっていくんだなと思った。
 この活動は継続して行うことが必要であると考える。普段の生活にも応用できたらいいなと思う。」(2年生)

 「鑑賞する側とナビゲーター側の両方を体験することができてよかったです。改めて、ナビゲーターは重要な役割であり、難しいと感じました。
 慣れたらたくさんの面白い意見を聞くことができるし、スムーズに進めることができると思いました。」(3年生)
 

小学生の時に、VTを体験した学生さんもおられました。
 「VTに参加する方はとても楽しいと思っています。でもやはり、本当に自分でやると難しいです。(中略)実は小学校の時にVTに参加することがあったので、流れとかよくわかっています。
 でも参加する方とナビをやる方は、流れは同じだけど全然違います。」(3年生)


<鑑賞者としての気付き>
 「鑑賞者としても発見だらけで、自分が思っていたことと、他の人が感じとったことが全然違ったりするので、それを共有するVTは新たな発見、新たな視点を得る上で有効だなと感じました。
 また、作品をよくみているつもりでも、他の人が発言をして初めて気がつくところもあったりして、みているようでみていない部分があることに気づくことができました。」(3年生)

 「私は今まで絵を見て感じたことを言葉にして発言することがあまりなかったので、良い経験でした。
 また、周りの人たちの意見を聞いて、思うことが増え、たくさん意見が出たので面白いなと思いました。」


<子どもたちとの実践に向けて>
 「子どもに向けてやるときの言葉づかいや、話のふくらませかたが難しい。子どもが言ったことを自分で理解してしまわないで、子どもに「どうしてそう思ったのか」などをきくことが大切。
 空間をうまく移動して目線をそろえるのが大切。見ているところがバラバラだと、ワチャワチャになってしまう。」(1年)

 「自分も何度か絵を見に行く機会があり、絵を見ることによって、人間の発想力や考え方はすごく深めることができると思っています。
 それを幼児を対象にして絵を見せるというのはすごくいいことだと思います。幼児の発想・想像に驚かされることもあると思っています。
 いろんな意味で、いい経験になると思うのでこれから頑張りたいと思います。」(1年)


③全体でシェアリング
A・Bグループが集まり、ナビを体験しての気付きをシェアしました。


④ナビゲーターのデモンストレーション その2(春日)ゴッホの椅子

学生のみなさん自身もナビを体験してからの、対話型鑑賞でした。
春日さんのナビの中では、様々な「技」が自然に盛り込まれていました。みなさん、気づいたかな?
・ポインティング
・動作化、ジェスチャー
・言い換え(パラフレーズ)
・発言をつなげる(コネクト)
・小まとめ(サマライズ)
・質問   等々

デモンストレーション後に、学生のみなさんからナビに関する質問がありました。
 Q、「椅子」も確認するんですか?
 A、思い込みも確認する。
   本当に椅子にみえているか?「これ椅子でいい?」できたら素材をきいてもOK!

 Q、小まとめのタイミングは?
 A、臨機応変。どんどん手を挙げるようなら、まとめなくても。
   でも、散漫にならないように。

 Q、テンポよく進めるには?
 A、(意見に対して)短く一言でも返す。でも大事なことはガッツリと。
   感嘆のリアクションも大事。「なるほど」「すごいね」等々。受容と称賛。
   みつけてくれたことをほめる。
   情報の取捨選択も大事。

<セミナーのふりかえりアンケートから(n=9)>
・そうおもう(4)・ややそうおもう(3)・ややそう思わない(2)・そう思わない(1)

①しっかり講義をきくことができた ・・・(4)9名
②講義の内容は理解できた     ・・・(4)8名、(3)1名
③作品をしっかりみることができた ・・・(4)7名、(3)2名
④作品をしっかりみて考えることができた・(4)7名、(3)2名
⑤自分が考えたことを言うことができた・・(4)7名、(3)1名、(2)1名
⑥仲間の意見をしっかり聴くことができた・(4)7名、(3)2名
⑦仲間の意見を聴いて、自分の考えをより深めることができた
                        ・・(4)8名、(3)1名
⑧ナビゲーターの体験は有意義だった・・・(4)8名、(3)1名
⑨ナビゲーターをやってみたいと思った・・(4)8名、(3)1名
⑩このような活動は園児の非認知スキル向上に有効だと思った
                        ・・(4)9名

<おわりに>
 今回縁があって、文京学院大学にて、「非認知スキル向上のための『みる・考える・話す・聴く』」というセミナーを開くことができました。
 このセミナーのお話を頂いてから、「非認知スキル」ということばや「子どもの貧困とVT」という研究など、今まで知らなかったことに出会うことができました。
また、一番驚いたのが、このセミナーのオファーが(大学の)教育学部ではなく、経営学部(経営コミュニケーション学科)からだったことです。
 私が図工の時間に対話型鑑賞をするなかで、子どもたちの豊かな発想や主題に迫るような発言に驚いたり、子どもたちの成長に心が動いたりすることが多々あります。
「楽しくて、ためになる!」と取り組んできた対話型鑑賞が、「幼児教育に取り入れることで、教育格差解消へ!」なんて、目から鱗でした。
 経営学部からのオファーということで、今までの自分にはなかった切り口で、対話型鑑賞について考えることができました。いや、考え始めました(学部のパンフレットや紹介していただいた本を読みながら、正直、「経営学」というものの幅の広さや奥深さに驚きおののいています)。
 今私は、小学校教員という教育現場の最前線で働いています。目の前の子どもたちに、VT、そして対話を通した深い学びをどうデザインしていくかが、私の課題の1つです。
今回のセミナーの感想の中に「今後も今回得たことを引き継いで、実践までに活かしたい」「この活動をこれから、もっと多くの人たちに広めたいです。楽しかったです!」ということばがありました。
私も学びながら実践するなかまの一人として、これからも楽しみながら学びを深めていきたいと思います。
 
 馬渡先生をはじめ、勇気をもってみるみるの会に連絡をとってくださったKさん、ゼミ生のみなさん、学ぶ意欲にあふれたすてきな2日間でした。
また、迎えや見送りなどのお心遣いもうれしかったです。ありがとうございました。
 
 そしてこの長いレポートを読んでくださったあなた!最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。



<お知らせ>
みるみるメンバーとともに、VT体験しませんか?
島根県立石見美術館 コレクション展「あなたはどうみる?-よく見て話そう美術について-」関連イベント「みるみると見てみる?」
日時:平成29年1月14日(土)、1月29日(日)、2月11日(土)、2月26日(日)いずれも14時~(40分程度を予定)
会場:島根県立石見美術館 展示室A
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