ART COMMUNICATION IN SHIMANE みるみるの会の活動報告

島根の美術教育関係者が集まって立ち上げた対話型鑑賞の普及に努める「みるみるの会」の活動情報をお知らせするブログです。

新年第1号 石見美術館「みるみると見てみる?」のレポートです!

2017-01-12 23:32:56 | 対話型鑑賞

2017年のみるみるの会の活動は、石見美術館での「みるみると見てみる?」でスタートしました。
第1回目にナビゲーターをした、春日さんのレポートです。



2017年1月8日(日)14:00~島根県立石見美術館A室
鑑賞作品:「宇宙Ⅰ」堂本尚郎1978年作 200×600㎝
ナビゲーター:春日美由紀 鑑賞者19名

 石見美術館で「みるみると見てみる展」を始めて6年目を迎えることになる初回の作品は、おそらくA室の一壁面を占有するであろう堂本尚郎氏の大作でやろうと決めていた。この作品は画像でもお分かりのように抽象絵画である。画面全体を斜めに波紋のような曲線が横切り、その中に△〇□が浮かび上がるような構成となっている。色は赤・青・黄の三原色が用いられ、重色により複雑な色相を呈している。また、浮かび上がる△〇□は仙厓(仙厓義梵(せんがい ぎぼん、寛延3年(1750年)4月 - 天保8年10月7日(1837年11月4日))は江戸時代の臨済宗古月派の禅僧、画家。禅味溢れる絵画で知られる:出典Wikipedia)が描いた禅画を思い起こさせる。仙厓が描いた「〇△□」には画賛が無く、禅画の中でも最も難解とされているが、この世の存在すべてを三つの図形に代表させ、「大宇宙を小画面に凝縮させた」ともいわれている。

「〇△□」仙厓義梵 出光美術館蔵

 また、〇△□と聞くとヨーロッパで起こったキュビズムも思い出す。セザンヌは「この世界は円柱、球、円錐によって成る。」と語っており、円柱や球、円錐は真横からみれば「□〇△」であり、洋の東西を問わず、この世を構成しているものの究極の形は「〇△□」というシンプルな形状に集約されるのだということを考えていると言える。
 堂本氏は日本画家堂本印象氏の甥であり、若いころには日本画をたしなんでいたが、昭和30年にヨーロッパにわたって油画を始め、アンフォルメル運動(フランス語:Art informel、非定型の芸術)は、1940年代半ばから1950年代にかけてフランスを中心としたヨーロッパ各地に現れた、激しい抽象絵画を中心とした美術の動向をあらわした言葉である。同時期のアメリカ合衆国におけるアクション・ペインティングなど抽象表現主義の運動に相当する:出典Wikipedia)に参加し、その後独自の抽象画へ発展した画歴を持つ。画面に飛沫のような絵具の痕跡があるのはアンフォルメルの名残だろうか…。また、アンフォルメルの運動に参加し、具象を捨てた堂本氏が表現の究極を求めた時に「△〇□」に辿り着いたのだとしたら、仙厓の描く禅画の「大宇宙を小画面に凝縮させた〇△□」の作品やキュビズムの先駆けとなったセザンヌの言葉とこの作品のタイトル「宇宙Ⅰ」には少なからず関連があるのではないかと考えていた。しかし、これはあくまで私の解釈であり、そこに話題が進むとは限らない。どのような発言が飛び出すのか、そういう意味で、このナビをするのはドキドキだった。というのも抽象作品を鑑賞し、ナビゲーターを務めるのは初の試みだからである。しかし、5年を終え、6年目の節目の初発の作品のナビゲーターを務めるのであるから、挑戦をしなければこの会を主宰する意味がない。また、語り合うことで難解と思える抽象作品が身近なものとして感じられるようになるならこれ以上の対話型鑑賞の醍醐味はないと思う訳で、ナビは鑑賞者の発言に身を任せて繋ぐことに全身全霊を傾ければよいのであるからと腹をくくり、鑑賞者主体、あなた(鑑賞者)任せなところがナビとしてはお気楽という思いで挑戦した。

 さて、対話が始まったが、いきなり経験値の高い美術館ボランティアの方から「この〇△□にはどんな意味があるのでしょうか?」という疑問が投げかけられた。のっけから核心に迫る発言である。(いきなり来たぞ。ヤバい!!)と感じながら、(みんな同じことを思っているはずだから)と思い、「その疑問についても作品をみながら皆さんで考えて行けたらよいなと思っています。」とかわした。
 初めのころは描かれているものの形態や色に関する発言が多く出た。波状の曲線、下地に描かれた多くの円、飛沫のような絵具の痕跡、色の重なりによる色の見え方の違い、大きく浮かび上がる正三角形、円、正方形…etc.ひとつひとつをポインティングしたり、パラフレーズしたりしながら齟齬がないかの確認を繰り返し、みえているものを共有していった。中には言われないと真ん中に円があることに気付かなかった方もいたようである。それらの形態や色から「温かみがある」「面白い」「楽しい」「明るい」などの感情に関わる言葉が告げられたので、「どこからそう思う?」から「そこからどう思う?」へ舵を切った。
 そうすると、△は「山」に見え、□は「浜辺ないしは陸」そして真ん中の〇は「水面、水の流れ、だから自然を表している」と話される方や、△は「ピラミッド」□は「地中海」真ん中は「海」で、「ピラミッドは宇宙と交信するものでしょ?だから宇宙も表している」というタイトルに迫るWORDも飛び出してきた。また、「〇△□を掛け軸に描いたお坊さんがいたと思います。それを思い出しました。」という発言も出たので、仙厓を紹介し、禅画でこの世を表すと「絵にも書にもかけない。すべてのものは〇△□である」といった逸話を披露した。他にも「物質はすべて粒子でできていると聞くが、地には無数の円が描かれているので、物質の根源を感じる。」や「身体を超える大きさの作品であるし、この作品はもっと外に広がっているものをここだけ切り取ったような印象を受けるので、この世界全部を表そうといているのではないか?」といった発言も出された。「△や山?□は陸?で、真ん中に水が流れていて、自然(ナチュラルなもの)を表している。生命を感じる。」この発言が出されたときに、ナビの私の眼には繰り返される波状の形態がDNAを表す二重らせん構造にみえてきた。そこで、鑑賞者に「みなさんのお話をきいていると広大な宇宙から粒子の世界までをこの作品にみていらっしゃるようですが、そこから、この波状の形態があるものにみえてきました。みなさん、この波状が私には何にみえているかお分かりになりますか?」と逆に質問をしてみた。そうするとしばらく間があったが、挙手があり「遺伝子をつくるDNAの二重らせん構造に似ていると思います。」と発言していただいた。そこで「そうです。私にはそんな風に見えてきました。みなさんのお話をきいていると、みなさんはこの幾何学形態の中に宇宙や自然や物質の根源や生命を感じていらっしゃるようです。」と作品から感じていることをまとめていった。
 この時、高校生で参加してくれている女の子がまだ一度も発言していないので、ぜひ話してほしいと思い、発言を促すと、色についての印象を語ってくれ、最後に「ずっとみていても見飽きない作品。」と評してくれた。ここで、ほぼ予定していた40分を経過したので「最後にお話ししたい方はいませんか?」と促したが挙手が無かったので、「この作品は幾何学形態が繰り返し描かれている抽象作品ですが、色や形態から様々なことを感じ、さらには、宇宙や自然、生命、粒子といった広大なものから小さな世界までも表している、みていても見飽きることのない作品であるといったお話ができたのではないかと思います。ありがとうございました。」と締めくくり鑑賞会を終えた。

アンケートの記述から
作品について
☆単に〇△□とうねりの繰り返しだと思っていましたら、他人の意見を聞いて宇宙からDNAから山浜、海とか人の見方は色々で驚きました。
☆幾何学模様の連続は見ていて退屈になる。変化をつけたくなる。実際に(※)回転寿司のお皿のタワーが何本も立っているのをみて、緊張感を図案化したくて描いてみたことがあったので自分の体験をうっかり声に出してみたけれど、色の構成を考える機会があって良かった。
☆(イ)ただ観て感じる絵と(ロ)考えさせられる絵があり、みるみるの会は(イ)(ロ)双方の楽しみ方があります。
☆自分の生き方、赤の∞に表して、赤そのもの→他と一緒に→まざりあって
☆複雑ながらも深いところがあって、何パターンもの見方があって、世界が広がるような作品だった。

今日のトークの感想
☆自分の考えを話したら共感された方もたくさんいて、他人の意見は違うものもあって、一つの作品でも色々だなと思った。
☆人の意見で自分の考えが変わるのが楽しい。
☆説明される内容がはっきりして聞き易く理解しやすいので有難いです。
☆こういう世界があるんだな!!
☆自分の意見も持ちつつも、他の人の意見を聞いて、また違う感覚を得ることができました。
☆時にはこういうことも良いかも…。

みるみるメンバーとの振り返りから
☆アンケートの記述からの※印の発言について、自分がナビしていたらどう返そうかとドキドキしながら聞いていた。春日さんがどう返すのかとても気になった。
→※について→回転寿司の話が出た時には何を言い出すのかと思ったが、何が言いたいのだろう、何を伝えたいと思っているのだろうと思って耳を傾けたら伝わってくるものがあるので、それを聴くことが大事だと思う。今回伝えたかったのは、回転寿司屋に積み上げられた皿のタワーの規則正しさが微妙にズレているところに魅力を感じていて、それが、作品の波状の形状が微妙に均一でないところに通じていることが伝えたく、そのズレや微妙に均一でないところに安心感を感じるということも伝えたかったのだと理解した。パラフレーズで確認したが、間違っていなかったと思う。
☆抽象作品は発言者の発言も長くなり、パラフレーズするのも大変だと思うが、どうだったか?
→発言が長くなると、「言いたいことは何か?」を聴き取ることに細心の注意を払う。そして、正しいか不安な時は「~~~で、よかったですか?」と「~~~とおっしゃっておられたと思うのですが、間違いないですか?」と確認する。今回も何度か繰り返して確認したが、どの方もうなずかれたので、聴き取りに間違いはなかったと思う。
☆みんなの解釈は同じではないかも知れないが、それぞれの参加者が満足できるゴールだったのではないか?
→ひとつの解釈に集約されていくような感覚はもてなかったが、参加者がそれぞれに宇宙、生命、自然などを作品から感じ、解釈できたことに満足しているような雰囲気は感じられた。ダイナミズムを感じた。作品と通じるような大きな空気感があった。この感覚は、ナビしていて初めてだった。

自身の振り返り
 冒頭に記述したような切り口で作品を捉えていたが、あえてその方向に誘導しようとは思っていなかった。しかし、鑑賞者の発言の中にそこに触れるような言葉が出てきたときには繋げていこうと考えていた。うまくパラフレーズできているか不安な時には前述したように、「~~~でいいですか?」と確認しながら進めたので、大きく間違うことはなかったのではないかと思う。鑑賞者は色をみたり形をみたりしながら発言者の発言をきき、作品の向こう側にあるもの(作品の意味)をみよう(感じよう)(考えよう)としていたので、一人でみたらたどり着けないところにたどり着けたので満足できたのではないかと思う。ナビとしては、長い発言をどう意を汲んだ短いパラフレーズで返すかに腐心しながら、作品に表されているものの向こう側へみんなを連れていくことができればと考えながら進行していた。そのため「そこからどう思うか?」と作品から受け取るイメージから、さらに、そのイメージから何を感じ、考えるかを考えてもらうように促した。この作戦は成功したのではないかと思う。難解と思える抽象作品であるが、参加したみるみるメンバー以外の鑑賞者の皆さんの感想を読むと、対話を楽しみ、作品を解釈できたことに喜びを感じて帰ってくださったようであるから、今春第1回目の「みるみると見てみる?」はまずはよいスタートが切れたのではないかと思う。



次回の「みるみると見てみる?」は・・・
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文京学院大学セミナーレポート その2です!

2017-01-10 00:12:56 | 対話型鑑賞
文京学院大学VT(ヴィジュアルシンキング)セミナーレポート その2

 みるみるの会の金谷です。文京学院大学経営学部 馬渡ゼミの学生さんを対象に、講義あり実践形式あり、そして対話型鑑賞のナビゲーター体験ありのVTセミナー<2日目 実践編>について、参加した学生の皆さんの感想とともにレポートします。

<2日目 実践編>
 12月11日 参加者:学生9名
①ナビゲーター デモンストレーション 作品:「靴」ゴッホ(金谷)
②対話型鑑賞のナビゲーター体験(2グループに分かれて)
③シェアリング(全員で)
④ナビゲーター デモンストレーション 作品:「ゴッホの椅子」ゴッホ(春日)

※以下の本文中で「」で括られた太字の箇所は、参加した学生の皆さんの感想からの引用です。

①ナビゲーターのデモンストレーション(金谷)
 12月に、東京都美術館で開催されていた「ゴッホとゴーギャン展」で展示されていましたゴッホの「靴」でナビをさせてもらいました。
昨日の理論編で取り上げられていた、4つのフレーズ(声かけ)と「明るい声、優しい表情(!?)、わかりやすいことば」を意識してナビをしましたが、いかがだったでしょうか?
 では、実際にナビをやってみましょう!と、この後は2部屋に分かれてナビゲーター体験へ。

②対話型鑑賞のナビゲーター体験
 A・B、2つのグループに分かれ、実際にナビをしてもらいました。
 今回鑑賞した作品は、以下のとおりです(「作品名」作者)。今後、幼児を対象に実践を行うということでしたので、このようなラインナップとなりました。
1、「径」 小倉遊亀
2、「鳩と少女」 ピカソ (Aグループのみ)
3、「孫に本を読んで聞かせるカサット夫人」 メアリー・カサット
4、「カントリースクール」 ウインスロー・ホーマー
5、「誕生日」 藤田嗣治

 初見の作品で、いきなりナビゲーター!それも初ナビ!!という、かなりハードな体験でしたが、セミナー参加者全員がナビにチャレンジ。本当に頭が下がります。馬渡ゼミ生のみなさんナイスチャレンジです!
約30分間、作品鑑賞&ナビをしたあとふり返りをしました。ナビをやってみて、わかったことや、鑑賞者として思ったこと、ナビのよかった点や課題などを伝えあいました。
今度は、こうやってみようという思いをもって役割を交代し、次の作品鑑賞に取り組みました。


<ナビを体験して>
 「ナビゲーターは自分が思っていた以上に頭を使い、しっかりと受け手の声を聞いてから次にどうすればいいのかを考える。
 ナビゲーター側と受け手側の両方の非認知スキルの向上が見込めるなと深く思いました。」(3年生)

 「実際に自分がナビゲーターの立場になり進行をしていくと、どうやったらみんなに良い質問を促せるかなと、とても難しかったです。
 言葉づかいや表情、目線など気にすることが多かったです。(中略)対象は園児ですが、人に思ったことを伝える、または促すことの難しさを改めて感じました。」(3年生)
 
 「絵を見ることだけで終えるのではなく、そこから発展して他の知識も身につけられるという点で、とても有意義だと感じた。
 セミナーに参加し、実際にナビゲーターを体験することでよく考えること、そこから発展した考えに至ることはとても重要だと感じた。
 また、他の人の意見をよく聞くことで、自分の考察もさらに深まっていくことも感じた。」(2年生)

 「他の子がナビゲーターするのを見て、活動の相手によって話の進め方が変わっていくんだなと思った。
 この活動は継続して行うことが必要であると考える。普段の生活にも応用できたらいいなと思う。」(2年生)

 「鑑賞する側とナビゲーター側の両方を体験することができてよかったです。改めて、ナビゲーターは重要な役割であり、難しいと感じました。
 慣れたらたくさんの面白い意見を聞くことができるし、スムーズに進めることができると思いました。」(3年生)
 

小学生の時に、VTを体験した学生さんもおられました。
 「VTに参加する方はとても楽しいと思っています。でもやはり、本当に自分でやると難しいです。(中略)実は小学校の時にVTに参加することがあったので、流れとかよくわかっています。
 でも参加する方とナビをやる方は、流れは同じだけど全然違います。」(3年生)


<鑑賞者としての気付き>
 「鑑賞者としても発見だらけで、自分が思っていたことと、他の人が感じとったことが全然違ったりするので、それを共有するVTは新たな発見、新たな視点を得る上で有効だなと感じました。
 また、作品をよくみているつもりでも、他の人が発言をして初めて気がつくところもあったりして、みているようでみていない部分があることに気づくことができました。」(3年生)

 「私は今まで絵を見て感じたことを言葉にして発言することがあまりなかったので、良い経験でした。
 また、周りの人たちの意見を聞いて、思うことが増え、たくさん意見が出たので面白いなと思いました。」


<子どもたちとの実践に向けて>
 「子どもに向けてやるときの言葉づかいや、話のふくらませかたが難しい。子どもが言ったことを自分で理解してしまわないで、子どもに「どうしてそう思ったのか」などをきくことが大切。
 空間をうまく移動して目線をそろえるのが大切。見ているところがバラバラだと、ワチャワチャになってしまう。」(1年)

 「自分も何度か絵を見に行く機会があり、絵を見ることによって、人間の発想力や考え方はすごく深めることができると思っています。
 それを幼児を対象にして絵を見せるというのはすごくいいことだと思います。幼児の発想・想像に驚かされることもあると思っています。
 いろんな意味で、いい経験になると思うのでこれから頑張りたいと思います。」(1年)


③全体でシェアリング
A・Bグループが集まり、ナビを体験しての気付きをシェアしました。


④ナビゲーターのデモンストレーション その2(春日)ゴッホの椅子

学生のみなさん自身もナビを体験してからの、対話型鑑賞でした。
春日さんのナビの中では、様々な「技」が自然に盛り込まれていました。みなさん、気づいたかな?
・ポインティング
・動作化、ジェスチャー
・言い換え(パラフレーズ)
・発言をつなげる(コネクト)
・小まとめ(サマライズ)
・質問   等々

デモンストレーション後に、学生のみなさんからナビに関する質問がありました。
 Q、「椅子」も確認するんですか?
 A、思い込みも確認する。
   本当に椅子にみえているか?「これ椅子でいい?」できたら素材をきいてもOK!

 Q、小まとめのタイミングは?
 A、臨機応変。どんどん手を挙げるようなら、まとめなくても。
   でも、散漫にならないように。

 Q、テンポよく進めるには?
 A、(意見に対して)短く一言でも返す。でも大事なことはガッツリと。
   感嘆のリアクションも大事。「なるほど」「すごいね」等々。受容と称賛。
   みつけてくれたことをほめる。
   情報の取捨選択も大事。

<セミナーのふりかえりアンケートから(n=9)>
・そうおもう(4)・ややそうおもう(3)・ややそう思わない(2)・そう思わない(1)

①しっかり講義をきくことができた ・・・(4)9名
②講義の内容は理解できた     ・・・(4)8名、(3)1名
③作品をしっかりみることができた ・・・(4)7名、(3)2名
④作品をしっかりみて考えることができた・(4)7名、(3)2名
⑤自分が考えたことを言うことができた・・(4)7名、(3)1名、(2)1名
⑥仲間の意見をしっかり聴くことができた・(4)7名、(3)2名
⑦仲間の意見を聴いて、自分の考えをより深めることができた
                        ・・(4)8名、(3)1名
⑧ナビゲーターの体験は有意義だった・・・(4)8名、(3)1名
⑨ナビゲーターをやってみたいと思った・・(4)8名、(3)1名
⑩このような活動は園児の非認知スキル向上に有効だと思った
                        ・・(4)9名

<おわりに>
 今回縁があって、文京学院大学にて、「非認知スキル向上のための『みる・考える・話す・聴く』」というセミナーを開くことができました。
 このセミナーのお話を頂いてから、「非認知スキル」ということばや「子どもの貧困とVT」という研究など、今まで知らなかったことに出会うことができました。
また、一番驚いたのが、このセミナーのオファーが(大学の)教育学部ではなく、経営学部(経営コミュニケーション学科)からだったことです。
 私が図工の時間に対話型鑑賞をするなかで、子どもたちの豊かな発想や主題に迫るような発言に驚いたり、子どもたちの成長に心が動いたりすることが多々あります。
「楽しくて、ためになる!」と取り組んできた対話型鑑賞が、「幼児教育に取り入れることで、教育格差解消へ!」なんて、目から鱗でした。
 経営学部からのオファーということで、今までの自分にはなかった切り口で、対話型鑑賞について考えることができました。いや、考え始めました(学部のパンフレットや紹介していただいた本を読みながら、正直、「経営学」というものの幅の広さや奥深さに驚きおののいています)。
 今私は、小学校教員という教育現場の最前線で働いています。目の前の子どもたちに、VT、そして対話を通した深い学びをどうデザインしていくかが、私の課題の1つです。
今回のセミナーの感想の中に「今後も今回得たことを引き継いで、実践までに活かしたい」「この活動をこれから、もっと多くの人たちに広めたいです。楽しかったです!」ということばがありました。
私も学びながら実践するなかまの一人として、これからも楽しみながら学びを深めていきたいと思います。
 
 馬渡先生をはじめ、勇気をもってみるみるの会に連絡をとってくださったKさん、ゼミ生のみなさん、学ぶ意欲にあふれたすてきな2日間でした。
また、迎えや見送りなどのお心遣いもうれしかったです。ありがとうございました。
 
 そしてこの長いレポートを読んでくださったあなた!最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。



<お知らせ>
みるみるメンバーとともに、VT体験しませんか?
島根県立石見美術館 コレクション展「あなたはどうみる?-よく見て話そう美術について-」関連イベント「みるみると見てみる?」
日時:平成29年1月14日(土)、1月29日(日)、2月11日(土)、2月26日(日)いずれも14時~(40分程度を予定)
会場:島根県立石見美術館 展示室A
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文京学院大学レポート その1です!

2017-01-07 19:36:42 | 対話型鑑賞
みるみるの会の金谷です。
平成28年12月10、11日に文京学院大学(本郷キャンパス)にて「非認知スキル向上のための『みる・考える・話す・聴く』」というセミナーを春日さんと開催してきました。


<はじめに>
文京学院大学経営学部の馬渡ゼミでは、学生さんの研究の一環として、ヴィジュアルシンキング(以下VT)を幼児教育に活かす形での提案作成を進めておられます。
非認知スキルを高める手法としてVTを学び、その重要性や有効性を体験を通じて理解するために、対話型鑑賞の技法を教示してもらいたい、ということで「みるみるの会」に声をかけてくださいました。
みるみるの会を知るきっかけとなったのは、京都造形芸術大学アート・コミュニケーション研究センターの先生方と制作した教科書副読本「みる・考える・話す・聴く 鑑賞によるコミュニケーション教育」だったそうです。
そこから、関係する方々から情報を得て、このみるみるの会のブログにたどりついたとのこと。
島根を中心に活動する私たちと、東京の学生さんたちとがつながることができるなんて、ゼミ生のみなさんのアンテナの高さ、副(福)読本、そしてSNSに感謝です!

さて、馬渡ゼミの学生さんを対象に、講義あり実践形式あり、そして対話型鑑賞のナビゲーター体験ありの文京学院大でのセミナーについてレポートします。

<文京学院大学セミナーのプログラム>
1日目<理論編>
12月10日 参加者:学生12名、馬渡先生、ゲスト参加者:平野智紀さん
(1)講義「非認知スキル向上のための『みる・考える・話す・聴く』」(春日)
(2)実践1「みる」トレーニング:「あなたはどのひまわり?」(金谷)
(3)実践2「伝える」トレーニング:「ブラインドトークに挑戦」(春日)

2日目<実践編>
12月11日 参加者:学生9名
(1)ナビゲーター デモンストレーション 作品:「靴」ゴッホ(金谷)
(2)対話型鑑賞のナビゲーター体験(2グループに分かれて)
(3)シェアリング
(4)ナビゲーター デモンストレーション 作品:「ゴッホの椅子」ゴッホ(春日)

<1日目 理論編>
(1)1日目は、春日さんによる講義「非認知スキル向上のための『みる・考える・話す・聴く』」でスタートしました。


 〇講義の概要
 ・非認知能力とは、「学びに向かう力や姿勢」とも言い表せる。(白梅学園大学教授 無藤隆氏 これからの幼児教育2,016ベネッセ教育総合研究所より)
 ・幼児を対象にVTを行うと、目標や意欲、興味・関心をもち、仲間と協調して取り組む力や姿勢を育むことができる。
 ・対話型鑑賞は、保育園や幼稚園で簡便にできて、費用がかからない。
 ・幼児を対象にしたナビゲーター(以下ナビ)の声かけ(4つのフレーズ)
  ①何がみえますか?
  ②どこから そう思いましたか?
  ③そこから どう思いましたか?
  ④さらに 発見はありますか?
 ・ルールを伝える
  ①よくみる
  ②しっかり考える
  ③話すときは黙って手を挙げる
  ④友達の話はよくきく
 ・子どもたちは(対話型鑑賞を通じて)認められることで、自己肯定感も高まり、集団所属の安心感も生まれる。→さあ、ナビをやってみよう!

(2)続いて実践1「みる」トレーニング:「あなたはどのひまわり?」

 ゴッホの「ひまわり」をみて自分はどのひまわりか、自己紹介を兼ねて理由ともに発表していただきました。
 思いもかけず自己開示をしていたり、身近な人の意外な一面を知ってしまったり、同じ花を選んでいても選んだ理由をきくと、それぞれ違う捉え方をしていることに気がついたりと様々なことが起こります。
そのような中、お忙しいにもかかわらず、参加してくださった馬渡先生が選ばれたのは、なんと「壺」!ゼミのみんなが花咲くよう、どっしりと支えているとのこと。流石です!参りました。
このセミナーを開催することができたのも、個性豊かなひまわりたちをまとめ、支える馬渡先生がおられたからこそ。ありがとうございます!
 さて、この「あなたはどのひまわり?」には、ある仕掛けがあります。「自分はどれかな」と考えながらみたり、同じ花でも違う捉えをしていたりすることを踏まえて、またみる。ただなんとなく、ぼんやりとみるのではなく、「意識をもってみる」ことが楽しみながらできるように仕掛けられていたのです。
 さあ、あなたはどのひまわりを選ぶのでしょうか?


(3)実践2「伝える」トレーニング:「ブラインドトークに挑戦」
 ブラインドトークは、ペアで行います。1人がアイマスクを付け、もう1人がスクリーンに映し出された作品をみて、それがどんな作品なのかアイマスクを付けた人に伝えるものです。
 1作品目を伝える体験が終わって、アイマスクを取ると「オー」という声が上がりました。
 お互いの体験をシェアリングして、伝えるポイントをまとめました。
 〇うまくいったこと
  ・(描かれているものについて)全体から、物の配置や大きさについて伝える。
  ・(アイマスクをして)見えていない人が、きく(質問をする)。
 〇うまくいかなかったこと
  ・言わなくても分かっている、伝わるはずと思っていたが、相手には伝わっていなかった(→ことばにすることが大事)。

 1作品目のポイントを踏まえ、アイマスク役を交代して、2作品目へ。作品が映し出されると今度は「えーっ!?」という声が…。しばらく黙り込んでしまうペアもありました。
 2作品目の体験後のシェアリングでは次のような意見が出されました。
  ・伝えることの難しさを感じた。
  ・双方向が大事。一方的に伝えるのではなく、お互いに聴きあうことが大切。
  ・同じものをみていても、受け取り方が違う。
  ・どう伝えたらいいか分からなかった。でも、(アイマスクのペアの人が)きいてくれると話しやすかった。

講義と実践形式の研修を通して、目と脳をフル活用してVTを体験して頂いた1日目でした。


※2日目の様子については、「文京学院大学セミナーレポート その2」にてお伝えします。



<お知らせ>
みるみるメンバーとともに、VT体験しませんか?
島根県立石見美術館 コレクション展「あなたはどうみる?-よく見て話そう美術について-」関連イベント「みるみると見てみる?」
日時:平成29年1月8日(日)、1月14日(土)、1月29日(日)、2月11日(土)、2月26日(日)いずれも14時~(40分程度を予定)
会場:島根県立石見美術館 展示室A
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12月 鑑賞例会のレポートが届きました!

2016-12-30 22:08:01 | 対話型鑑賞
12月17日 浜田市世界こども美術館での鑑賞例会のレポートが、津室さんから届きました!


作品「にわか雨」ルイ・レオポール・ボワイ 1804年頃
参加者:6名  ナビゲーター:津室和彦

 作中の人物が多く,それぞれの人物に対応して鑑賞者は多くのことを考えられる作品だと思い,この作品を取り上げました。発言は活発でしたが,ナビとしてはスッキリとまとめられず,苦しい展開となりました。

トークの概要
◇傘が描かれていることから,雨が降り出したか降った後である
◇画面の中央あたりに固まっている人物は,身なりがよく,いわゆる富裕層ではないか
◇これらの人物には日が差し,ハイライト的に目立っている
◇場面は,18~19世紀頃のフランスではないか
◇相対的に周りの人物は,庶民的な服装である
◇身なりのよい一団は,家族のように見える
◇一団の背後に,御者か護衛のような人物がいることから,裕福であるのみならず,身分が高いのではないか
◇しかし,身分が高いとすると,雑多な下町の雰囲気があるここにいることは場違いな感じがする
◇場違いだとすると,この家族は,何かよほどのっぴきならない状況にあるのではないか たとえば,夜逃げや突然の災害など・・・
◇白いドレスの女性が持っている緑の包みの中には,たとえば全財産のような相当な金品があるのではないか
◇左端の手をさしのべた人物と,黒いシルクハットの男性の仕草・視線が気になる
◇帽子の男性の視線の先で,何かが起こっているのではないか
◇家族が乗っている,車輪のついた板のようなものが気になる
◇桟橋かなにかで,画面の手前には,海か川があるのではないか

 ナビとして,考えていたのは,主に以下の4点でした。
①発言をそのままなぞるのではなく,できるだけ何らかの言い換えをするよう心がけること
 これまで,トークの参加者として,他のメンバーのナビをみていて学んだことを生かそうと考えていました。
 発言者の言葉と重ならず,それでいてうまく言い換えられた言葉は,オリジナルの言葉と相まって,参加者の思考をより活性化すると思うからです。

②発言・聴き合いのテンポを損なわないよう,ナビゲーターの発言時間をできるだけ短くすること
 現実にはなかなか難しかったです。根拠を丁寧に問うことや言い換えをしようとすることは,ナビゲーターの発言時間を短縮することとは相反してしまうからです。殊更にテンポアップしようとする考え方自体に問題があったのだろうと思います。

③発言を共感的に受け止めること
 元々少人数でリラックスした雰囲気でしたが,参加者が安心して自分の考えを述べられるように,うなずきや相づちを返すようにしました。

④作品に関する情報を,いつ,どこで,どのように提供するか
 服装から,18~19世紀でフランスかヨーロッパではないかという発言が出た時点で,「そうなんです。19世紀初頭のパリを描いた作品です。」と伝えれば,すっきりと次の思考に移れたのではないかという指摘を振り返りの時間にいただきました。上記の発言は,既にピンポイントで作品の背景を言い当てているわけだから,すぐに情報を開示すべきだったと反省しています。開示せずに,他の参加者の意見を求めるなどして引っ張っればさらに考えさせられる発言が出てきたかというと,疑問だからです。
 裕福な身なりの家族が乗っている板についても,桟橋や乗り物だという考えも示されました。この点は,考え続けても判断ができない内容だったので,ここでも「当時のパリは,舗装もされてなく,一雨で通りはひどいぬかるみになったそうです。そのため,貧しい人の中には,ぬかるみを避ける板などを敷き通行料を得る者もいたそうです。」と情報を示すオプションがあったかもしれません。その上で,家族と板の持ち主とのやりとりを解釈していくようにすれば,人物の視線や表情等をよりよくみていけたとも思えます。
 当時の風俗画であるという事実も大きな情報であるという指摘もいただきました。多分に富裕層への風刺も込められているという視点でみていくと,この絵の場違いな印象も理解できるという発言には,大変納得させられました。情報は,描かれているモチーフそのものだけでなく,その作品を描くにあたっての画家の立場や思想を考える手がかりにもなるということですね。
 

 今回のトーク・ナビについて,以上のように振り返りました。しかし,これは,あくまでこの作品とこのメンバーの間でおこったことであり,決して一般化されるものではないということも確認しておきたいと思います。
 情報の示し方は,トークの参加者の知識・経験や,そこまでのトークの流れなどによって,まったく異なってくることをナビゲーターは承知しておく必要があると思います。
今回,参加者は全員このような形でのトークについての豊富な経験と美術・美術史への関心や知識を持っていました。このことは,いきなり「19世紀のフランス」という見解が出てきたことでもわかります。作品からの読み取りや解釈が多彩になされ,ナビとしては個性的な発言をどうまとめるかに苦心しましたが,前述のように,このような集団だからこそ,情報を示すことで自ずと参加者の考えがまとまっていったのではないかとも考えられます。
 筆者は,以前,小学校6年生を対象に本作品をナビゲートをした経験がありますが,,当然,この度の発言とは違う展開となりました。作品に描かれているひとつひとつのモチーフを児童は熱心に見つけ出しては発表しました。しかし,小学生が19世紀のパリの様子を知るはずもなく,描かれた人物の風体や表情からくる違和感を訴える発言が相次ぎました。そこで,ふみ板の商売の話を示すと,そこからまた人物同士の会話を盛んに想像して語りはじめたのでした。
 今回のトークでは,参加者の力量を知っているが故に情報を示すのが遅れたという側面もあります。

 作品やトークの流れによっては,情報を示さない方が良いとナビが判断することも当然あり得ます。
トークは生き物で,ナビも生き物。同じ作品でもみる人,ナビする人によって微妙に違うトークとなるからこそ,おもしろく価値あるものだと思います。よりよい時間を参加者と共有するために,これからも研鑽を積みたいと思いました。



2017年のみるみるの会は、1月8日(日)14:00~益田市の島根県立石見美術館での「みるみると見てみる?」で活動をスタートします。
津室さんの言葉のとおり、トークもナビも生き物です!
みるみるメンバーと石見美術館の素敵な作品と、一期一会の時間を共有しませんか?

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愛媛県の先生の授業を参観してきました!!その2(中学校 美術科)

2016-12-26 22:14:12 | 対話型鑑賞
愛媛県で取り組んでいる事業にみるみるの会も協力しています。
愛媛県の先生方の授業を参観したレポート(その2)をお届けします!


平成28年度地域の核となる美術館・博物館支援事業
児童・生徒の「思考力」を育むファシリテーター育成事業

「見て、考えて、話して、聴いて」  2年2組 是澤充広教諭 美術科(鑑賞)レポート
2018年11月21日(月)9:40~10:30 西予市立野村中学校 2年2組教室


島根県出雲市立浜山中学校 教頭 春日美由紀
(愛媛県美術館・博物館・小中学校共働による人材育成事業②参与観察調査者)



 早起きをしたその日の朝、車は高速道路を一路南予地区へと向かっていた。愛媛の地理に不案内な私は靄に包まれた山間の風景を眺めながら、「南予って海じゃないの?」という疑問が頭をもたげ、「ずいぶんな山間ですね。海は無いのですか?」と訊ねると「西予は盆地です。ちょっと高原に近い感じなので、冬には雪も積もります。海は昼から行く宇和島方面ですね。」という答えが返ってきて、愛媛の温暖というイメージが間違っていることに気付いた。そういえば四国最高峰の石鎚山もあり、四国山脈があるのだから、高原もあれば雪も降るだろうと思い至った。そうこうしているうちに車は目的地である野村中学校に到着した。


 
 野村中学校はグランドが天然芝に覆われて眼にも鮮やかなグリーンだった。冬芝に植え替えたばかりだという。高地のせいか幾分肌寒さを感じる。通された控室の隣の教室からは1時間目の授業を受ける生徒の声が響いていた。2時間目は2年2組の教室で授業があるとのことで早めに向かった。廊下ですれ違う生徒や教室にいる生徒誰もが「こんにちは。」と明るい声であいさつをしてくれる。校舎の外観はやや古びた感が否めないが、教室は明るく清潔で整理整頓が行き届いていた。また、ICT環境が整っており、短焦点プロジェクターが黒板のマグネットタイプのスクリーンに画像を投影していた。この画像は教師の手元にあるタブレットでの操作が可能で授業中の生徒の発言をスクリーン上に反映させることができ、今回の授業でも有効に機能していた。



 さて、チャイムが鳴り、2時間目の授業が始まった。複数人の校外の大人が見守る中で授業を受ける生徒は緊張していたと思うが、誰より緊張していたのは授業者の是澤先生だったようである(後談)。始めに本時の授業の内容について触れ、「黙ってみる」ことを約束させてから作品をスクリーンに投影した。作品はピカソの《ゲルニカ》。黒板に貼られたスクリーンのため画像の大きさには限界があり、後席の生徒からは細かい描写がみえにくいのではないかと懸念していたところ「移動して、前に出てきてみてもいいですよ。」という教師の声掛けがあり、多くの生徒が前に移動して作品をじっくりとみることができた。生徒は教師の指示通り私語することなく静かにみていた。「たっぷりみれたら、席に戻っていいですよ。」という声掛けでしばらくして総ての生徒が自席に戻った。
 さあ、ここからが対話型鑑賞である。先生の初句は何か?(実際、どう問いかけて始めるかというのは重要である。この問いかけにより生徒の手が挙がるか否かで、教師のこの鑑賞に対する不安な気持ちを拭い去れるか増長させられるかの分かれ目となるからである。)と期待していたところ「どんなものがみつけれましたか?(正しくはみつけられましたか?であろう)」という問いかけで始まった。バラバラと手が挙がる(ほぼ男子生徒)。折れた剣を持った人、牛、馬、荷馬車、みつけたものを挙げていく。その中で「牛」と出た時に「どうして牛にみえたの?」と根拠を問う投げかけが是澤先生から出され、「耳があって、角があるから・・・。」と描かれているものの中に根拠を示す発言がなされた。ただ、これ以外のみつけたものに対して根拠を問う「どこから?」という確認が曖昧なのが気になった。個の生徒の発言に対する教師の理解はなされていても、個の生徒以外の他の生徒の納得が得られているのかを確認していくうえでも「どこから?」と問うことはとても重要であると考える。多くのみつけたものにたいして面倒ではあるが根拠を繰り返して問う中で確認がなされその後の作品の読み取りにつながっていくからである。しかし、生徒は、級友の発言を概ね認め、各自でストーリーを紡ぎ始めていた。教師はもっと「新しいみえ方」や「発見」はないかと、よくみて考えることを促し、生徒の発言を認め、励ましていた。当初の発言は男子に偏っていたが、女子生徒の中にもうなずく姿がみられ、教師の受容的な態度に後押しされて、女子生徒からの発言も出てくるようになってきた。その時男子生徒から「上の方にケーキがある。」という発言があり、「それは、どこから?(今回初の根拠を問う投げかけ)」と問うと「丸いのがケーキで上にイチゴが載っている。」と答えた。このものにたいしては「ひらめいたときにピカッと光るマーク。」と話す生徒や「低い位置にある太陽」と話す生徒も出た。また、下方に花が描かれているのに気づく発言もあり、その後の「花は本当は何色なのだろう?」という教師の問いかけにつながっていく。中盤に「原爆の図」(作・丸木伊里:俊)を挟み込んで鑑賞することで鑑賞している作品と戦争を結び付けようとする教師の意図がみられたが、比較してみるという効果は期待ほどではなかったように思う。それより、生徒はゲルニカに惹かれ、よく「みて」「考える」ことを展開していた。終盤になってある生徒から「いろんなものをパーツを合わせて描いている。模様が似ていたりするところが。組み合わせて描いているのか?リアルに描かないことでいろんなことが考えられる。悲しい感じもするが、いろんなところをみるうちに楽しくなる、面白くなる、いろんなみえ方ができる。」という興味深い発言が出た。これはキュビズムというものを絵をよくみることで感じ取った発言かも知れないし、描かれているものが多様であることや描かれているものをみて感じる思いが多様であることに気付いた発言ともとれる非常に重みのある内容ではなかったかと思う。この発言がわずか1回の対話型鑑賞で発せられたことを大切にしていかなければならない。

 是澤先生は、授業後の自評で
 ・いろんな意見が出てきた。こんな風に意見が出てくるとは思わなかった。
 ・時間が足りないくらいだった。
 ・限られた生徒からではあったが、たくさん意見が出た。
 ・うれしかったし、驚いた。
と話され、対話型鑑賞に対する不安がいくらか和らいだようだった。ただ、作品に関する一般常識的な解釈から外れることとして、上方に描かれたランプが誕生日ケーキで終わってはまずいと感じられていたようだし、知識を与えないことにも不安を感じているようだった。しかし、戦争の悲惨さを描いた作品ではあるが、生徒の発言からは、白という色に「明るさ」を感じていたり、ろうそくの灯りに「希望の光」を見出したりもしていた。戦争がもたらす「死」は暗く不幸な出来事ではあるが、「希望の」「明るさ」も秘めていると捉えられるこの作品には「再生」「誕生」の意味も込められていると捉えれば誕生日ケーキと解釈したとしても許されるのではないだろうか。



 生徒は最後の振り返りのワークシートの記述に真剣に取り組んでいた。どんな記述がなされているのかが楽しみなところである。評価の研修会で生徒の記述をみさせていただきたいと思う。
 協議の最後に「滅茶苦茶緊張しました。こんなに緊張するのは新採以来だと思います。」と正直な心情を吐露されたが、授業の初めに生徒に向かって緊張している自分を自己開示されていた姿からもありのままの自然体で普段から生徒に接しておられることが伝わり、情感豊かな是澤先生の人柄に触れている生徒は今日の初めての対話型鑑賞の授業でも安心して発言することができたのだなと得心することができた。
 最後に、生徒を信頼し、生徒とともに対話を楽しみながら「みる・考える・話す・聴く」活動を愛媛の推進教員として今後も取り組んでいってほしいと願う。
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