ART COMMUNICATION IN SHIMANE みるみるの会の活動報告

島根の美術教育関係者が集まって立ち上げた対話型鑑賞の普及に努める「みるみるの会」の活動情報をお知らせするブログです。

校区内の小学校で対話型鑑賞の実践を行いました

2013-06-30 10:27:30 | 対話型鑑賞
校区内の小学校で「対話型鑑賞」の実践を28日に行いました。
対象学年は1年生と3年生です。
1年生の作品は、小倉遊亀の「径」です。
3年生の作品は、メアリー・カサットの「孫に本を読んで聞かせるカサット夫人」です。
この2つの作品は幼稚園の実践でも使っているもので、園児の反応が良いことから、初めて「対話型鑑賞」を体験する小学校低学年~中学年の児童には好ましい作品ではないかと考え、使ってみました。二つの作品とも描かれているものはシンプルでわかりやすく、色遣いもはっきりしていて美しいと思われるところから選んでいます。
小倉遊亀の「径」はお母さんと思われる女性の後ろに女の子が続き、最後に犬が横向きに一列に並んで歩いている日本画です。お母さんと女の子は傘をさしています。お母さんの腕にはかごが下げられ、中に花が入れられています。女の子の傘の先には巾着袋が下げられています。その袋はお財布か何かが入れられているようで、少し膨らんでいます。最後についてきている犬は柴犬のようです。尻尾を上にくるりと巻き上げ、赤い首輪をして女の子のあとに続いています。この二人と一匹は何をしているところなのか、ちょっと気になります。子どもたちは二人と一匹の様子について発言しながら、この登場人物の関係や何をしているところなのかを考えていきます。様々な意見が出て聞いていて「なるほど」と感心させられるところしきりです。終わった後に感想文を書いてもらいましたが、ひらがなを覚えたてで、書くこともまだまだたどたどしいのですが、しっかりと書いてくれている様子を見てとてもうれしく思いました。感想文が届くのを楽しみに待っているところです。
 さて、3年生は、メアリー・カサットの「孫に本を読んで聞かせるカサット夫人」です。
この作品はやや右寄りに4人の人物が描かれています。中央の白い服の女性がカサット本人ですが、老眼鏡をかけ、赤い表紙の本を手にしています。その本を覗き込むように3人の子供が取り巻いています。カサットの正面にはちょっと年かさと思われる青いチェックのシャツを着た子ども、手前に後姿の、やや髪が長く、ちょっとくせ毛の子ども、そして、一番奥にこちらを向いた(唯一正面向きの)子どもです。本を読んでもらっているのではないかとすぐにわかりますが、子どもたちが男の子なのか女の子なのか、兄弟姉妹だろうけど、誰が年長なのか、様々な意見が出ます。また、この場所はどこなのか?という疑問も、大人なら「家の中」とすぐにわかりそうなものなのですが、意外と多いのが「電車」という意見です。日本の子どもたちにとって、大きな窓で思い当たるのは「電車」なのかな?と思います。この読み取りは、他の幼稚園での実践でも出ました。小学校3年生でもそのような意見が出るということは、日本の住宅事情とアメリカのそれの違いを物語っているのかも知れません。生活体験の中でしか語る言葉を持たない子どもならではのほほえましい意見ではないかと、私はこの読み取りを聞くたびに思います。3年生にも感想文を書いてもらっているので、どんなことが書かれているか読むのが楽しみです。
 さて、この実践終了時に、校長先生とお話しする時間があり、子どもの様子やこの会の様子について語り合いました。今年度この小学校に赴任された校長先生は研究熱心な方で、私たちの活動についてもいくらかご存知で、興味を持っておられました。1年生の授業も参観してくださり、子どもたちの様子についても質問されました。発言の内容や授業態度などについても言及がありましたが、私としてはこのような活動を体験することの意義や、普段の授業ではなかなか実践されにくいことではあるけれど、これからの社会に求められている力(それは言語活動や表現活動につながる力も含めて)を養うところまではいかないまでも、助長することの一端にはなるのではないかと考えていることをお話ししました。
継続して実践できればよいのですが、残念ながら難しいとは思っています。しかし、3回くらいは訪問できるとよいとは思いました。それを実現するには、実践者の熱意とそれを受けてくださる学校側の理解と思います。でも、欲張らず、1度でも実践できたことに感謝したいです。
 この時に、大野先生の「三葉虫」のワークショップについてのPRもさせていただきました。募集・応募チラシも完成したので、チラシを持って月曜日には再訪問しようと思っています。たくさんの参加者が来るといいです。

 では、次回は、今度来県される大野先生が2月に石見美術館で講義された際のレポートが完成しましたので、会員の上坂から報告してもらいます。
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京都大学博物館長の大野先生の研修会を開催します

2013-06-24 20:15:11 | 対話型鑑賞
2月に浜田で開催しました大野先生の研修会を7月27日28日の両日にわたって出雲の地で開催することになりました。

27日は主に出雲市の先生方を対象に「二枚貝:はまぐり」について対話しながらその生態について考える研修会です。
28日は一般者を対象に「三葉虫」について考える研修会です。
28日の対象者は小学校3年生以上で上限はありません。大人の方でも十分に楽しめる研修内容になっています。

興味を持たれた方は連絡をいただけると詳細をお知らせします。参加料は無料です。

こんな研修はめったに受けることができませんので多くの方のご参加をお待ちしていますが、教材の関係で1講義の参加者は40名までとなっていますので、早めに申し込んでください。

では、案内を下記に掲載します。

三葉虫って知ってる?

 むかしむかしに地球で生きていて、今はもう絶滅して死んでいなくなってしまった虫、三葉虫(さんようちゅう)について、みんなであれこれ考えてみませんか?
 興味をもった人は、下の申込書で申し込んでくださいね。参加費は無料です。
 申込はMAILで必要事項を記載して送信してください。


講師の先生         京都大学 博物館長 大野照文(おおのてるふみ)教授
いつあるの?        7月28日 日曜日 
時間は?          10時から12時くらいまで
どこで?          島根県出雲市 出雲国際交流会館(平成温泉の敷地内にあります)視聴覚実習室
参加できる人は?      小学校3年生以上ならだれでも(大人もOKです)
              兄弟姉妹,親子,孫と祖父母で参加もOKです
募集人数          30名~40名 (※多数の場合は抽選します)
参加費は?         無料(むりょう)です
持ち物は?         筆記用具(ひっきようぐ)
服装は?          自由(じゆう)
この会を企画した人     ART COMMUNICATION IN SHIMANE みるみるの会 
              代表:春日美由紀  
              090-7772-4860 u-marine@i2-sp.net

○参 加 申 込 書
①参加者氏名(兄弟姉妹で参加の場合は全員)                                  
②参加者の住所と保護者名・印
 住所
 保護者名・印 
③緊急連絡先
※申込書に記載されている個人情報は本件以外には使用しません

以上です。

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浜田世界子ども美術館で今年度2回目の実践を行いました

2013-06-17 22:03:07 | 対話型鑑賞
浜田世界子ども美術館で今年度2回目の実践を行いました


浜田世界子ども美術館で今年度2回目の実践を行いました。
今回の実践は現在開催中の企画展「はまだの美術」で行いました。実践のレポートはファシリテーターの澄川からあると思いますのでしばらくお待ちください。

作品は7頭の鹿が描かれている軸装の日本画です。角のある鹿が2頭、小鹿と思われる鹿が2頭、角のない鹿が3頭です。鹿以外に描かれているものはほとんどなく、色も墨の濃淡が中心です。参加者の視線や思考は当然鹿に集中することになります。7頭の鹿をどのように読み取るのかを中学生、教育実習生、一般成人、われわれみるみるの会員で行いました。

その様子を画像に収めていますのでご覧ください。

また、今日は久しぶりにJRで日本海沿いを浜田まで出かけましたので、その光景も併せてご覧ください。
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幼稚園で今年度の実践を開始しました

2013-06-11 19:04:07 | 対話型鑑賞
幼稚園実践 2013.6.10

 昨年度から対話型鑑賞の実践をさせていただいている幼稚園の今年度の第1回目の実践を昨日行いました。園児はとても楽しみにしていたようで、1時間目の授業を済ませて幼稚園につくと、みんな座ってよい子して待っていました。
 久々の実践で、機器の調子が悪く、楽しみにしている園児たちを30分ほど待たせて、学校にパソコンを取りに戻ったりするアクシデントがありました。準備はいくらやっても足りることはないというのが、今回の教訓、その1です。
 結局1回目に実践する予定の作品はストライキを起こしたパソコンの中にしかデータがなかったので(バックアップ用のUSBを常に所持することも教訓その2)本当なら3回目に実践する予定のもので行いました。
 作品はメアリー・カサットの「孫たちに本を読むカサット夫人」です。この作品はカサット夫人の周りに孫たち3人が集まって、カサット夫人が手にした本を覗き込むようにしている様子が描かれた作品です。横長でやや右寄りにカサット夫人がいます。背景は大きなガラス窓でその向こうには緑の庭が見えているという、そういう作品です。
この作品を対話型鑑賞に取り上げたのは、子どもたちがいるという、園児にとっての親近感。女の人が本を手にしているので、描かれた子どもたちがこの女の人に本を読んでもらっているという状況が、自分たちの体験から推察できるだろうということ。それ以外に複雑に描かれたものが無く、シンプルでわかりやすい作品であること。これらのことから、対話型鑑賞を初めて行う園児たちにも描かれているものがわかりやすいのではないかと考えたからです。
最初に実践にあたっての注意事項を確認しました。園児にわかりやすい言葉で話すことが大事だと考えています。そして、いつも同じことを繰り返し伝える中で、ルールが定着していくことを狙っています。
 約束は
① まず、おしゃべりをしないで、しっかりスクリーンに映っているものをみること
② しっかりみたら、みえたことを、手を挙げて、あたった人が話すこと
③ あたらなかった人は、友だちの話すことをしっかり聞くことと
④ しっかり聞いて、友だちの話したことについて、考えること
の4つです。この4つのことを最初に確認して実践を始めました。

幼稚園の年長さんといっても、この4月になったばかりで5歳児がほとんどです。前回は暮れも押し迫ったころから5回を集中して行ったので、園児もかなり成長していましたし、小学校に入学するという園児なりの自覚が芽生えていたころだったのでずいぶんしっかりしているように感じましたが、今回はまだ5歳児で年長になったばかりの子どもたちという認識で会を始めました。

この実践の詳細は担任の先生が記録を起こしてくださるので、そちらで報告しようと思います。

会の終了後、担任の先生にアンケートに答えていただいたものを掲載します。

実践のふりかえり(4段階評価で、4が最もよい)
A)しっかり絵をみることができていた・・・・・・・・・・・・・・・・・・3
B)絵をみてしっかり考えることができていた・・・・・・・・・・・・・・・2
C)自分の意見を言うことができていた・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
D)友だちの意見をしっかり聞くことができていた・・・・・・・・・・・・・2
E)友だちの意見を聞いて、自分の考えをより深めることができていた・・・・2
F)このような鑑賞をまたやらせたい・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4

☆今日の鑑賞の感想をお知らせください
 初めて見る絵は興味を持ち、しっかりとみることができていた。みて感じたことを話したいと思う気持ちはあるが、当てられると恥ずかしさから言えなくなる子どもが目立った。
 自分の思いを自信を持って発言できる、伝えようとする姿を育てていきたい。

☆園児の様子で、気付かれたことを教えてください。
 絵をみて想像を膨らませたり、自分たちの生活につなげて考える姿に乏しさを感じた。この経験を通して、想像を膨らませ、自分の思いを伝えられる子どもに支えていきたいと思った。

以上です。

 実践後担任の先生とMTGを行いましたが、冒頭にも書いたように、今回が初めてであること。子どもが年長になったばかりであること。このことから、前年実践の年長組と比較するのは、条件が違うことを話しました。まだ、5歳児が多いので、長時間同じ絵は飽きても来るので、次回から2~3枚の作品を用意して、飽きてきたら次の作品をみるようにしてみることを確認しました。また、1年間の長期にわたるので、5回ではなく7回は実践し、途中で担任の先生にファシリテートしてもらう試みも行うことにしました。この担任の先生は対話型鑑賞の効果を実感しておられるので、この先生がファシリテートできるようになられると、幼稚園内での実践がもっと盛んになると思われるので、しっかりサポートしたいと思っています。では、近々にこの担任の先生のレポートが届くと思いますので、届きましたら、またUPしますので、お楽しみに!!その時には実践の様子の画像も一緒にお届けします。
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会員の実践を報告します

2013-06-03 22:25:43 | 対話型鑑賞
みるみる会員が勤務校でベン・シャーンの「解放」の対話型鑑賞を行いました。
昨年の秋から「情報」の提供を行う実践について取り組んでいますが、今回の実践も情報を提供したものです。情報を提供するからこその深まりもみられます。じっくり読んでみてください。

対話型鑑賞 実践記録 
ベン・シャーン『解放』2年2組
2013.4.24  
★「作品名」「制作年」を提示  
         ★最初に全員に発表させた

T1:それでは、今日の作品はこれです。この作品の中で何が起こっているでしょうか。ここから何を発見しますか?○○があります、○○に見えます、とか、○○がこうだからこうなんだと思います、とかでもいいです。今日は全員一回は発表してもらいたいので、順番に言ってみましょう。では順番にこちらから。
S1:人が3人います。
T2:人が3人、(指しながら)1,2,3人いますね。
S2:風が強く吹いている。
T3:風が強く吹いている、それはどういうところからそう感じましたか?
S2:ぶら下がって、飛ばされそうになっているから。
T4:この人物たちが何かにぶら下がっていて、吹き飛ばされていそうだから、風が強く吹いているということですか。
S3:右の人がこう飛ばされているから風が強いと感じる。
S4:後ろに建物が見えるけど、結構ぼろぼろになっている。
T5:(指しながら)ここに建物があるが、ぼろぼろになっている。
S5:後ろに白や青い色が、流れるようになっているので、風が強く吹いているように見える。
T6:人が飛ばされそうになっているからというのと、バックの色やタッチから風が強いと感じるということで、同じ風でも違うところに注目してくれました。
S6:後ろの建物がぼろぼろで斜めになっている。
T7:ただ、ぼろぼろじゃなくて斜めになっている。
S7:建物の上の方が壊れている。
S8:台風が来ている。
T8:ただの風じゃなくて、台風の風。台風の中で何をしているんでしょうね?
S9:晴れているけれど、風が強い。
T10:風は強いけれど、台風というほどでもないということ?
S10:なんか絵がおかしい。
T11:どこがおかしい?
S10:あっちの人はコートがこっちにたなびいて左に吹かれているのに、右の人は反対側に飛ばされている。
T12:なるほど、(指しながら)この人はこちらに動いているのに、こっちの人はこちらに傾いている。四方八方にここを中心に傾いている。それはどうしてなんだろう?
S11:人が何かにつかまっている。
T13:確かに。3人ともつかまっています。さっきからこの人物たちが何かにぶら下がっていたり、つかまっているといってくれましたが、他には何かありますか?
S12:地面に水たまりがある。
T14:地面というのは、ここですか?ここに水がたまっているように見える。
T13:下にぐしゃぐしゃになっているのは、あれはゴミに見える。
T15:じゃあ、ここにこんなにゴミがたまっているんですかね?
さあ、いろんなものが出てきましたが、そろそろ組み合わせて考えてみたらどう?あれとあれがどうなっているから…なんていう風にね。
S14:人の顔が白い。
T16:どの人のこと?3人の顔色のことを言ってくれました。とっても白い。拡大してみよう。(電子黒板の操作で、顔だけクローズアップした。わ~怖い、という声)
顔が確かに白いね。どんな表情だろう?
S15:何か、ぼ~っとしている。
T17:どんな気持ちなんでしょう?
ぶら下がっているとか、飛ばされそうって話が出ました。下に水があるかもしれない、建物が壊れている、こんなところでこの3人は何をしているんでしょう。他に何かありますか?
S16:後ろにがれきがある。
T18:さっき、ごみって言ってくれたこれのこと?これががれきということ?がれきってどんなものなんでしょうね?
S16:家が崩れた。
T19:ここの家が崩れたということですか?
S16:別のものも。
S20:だったら、この建物だけじゃなくて、立っていた建物が崩れたがれきということですか?がれきってわかりますか?東北大震災の時のニュースで見たり、つい、先日も中国の四川で大地震がありました。あの時の映像とか見ていたら、思い浮かぶかな。あんな風に建物がくずれたがれきがあったんじゃないか、ということですか。
S17:左の人物を拡大してください。
T21:はい。これですか?
S17:左の人が緑の人を助けに行こうとしているように見える。
S22:それはどこからそう見えますか。
S17:緑の人が、赤い棒から降りられなくなったから、この人が助けようとしている。
T23:なるほど。確かにここに赤い棒がありますね。高いですね。
S18:3人とも、ブランコみたいに、ぶら下がって、ブラブラして遊んでいる。
T24:なぜ遊んでいるように見える?
S18:なんとなく。
T25:こういうので遊んだことないですか?
  (ない、ない、と口々に)
これね、私が小学生のころ、小学校とかにもあったんですよ。真ん中に棒が立っていて、鎖が5つくらいぶら下がっていてそれにつかまって、ビュンビュン回って遊ぶという「回旋塔」という、遊具がありました。もしかしてそんな風に遊んでいるのかもしれない?
最近、危ないからって撤去されて、どこの小学校にもないんだけど、昔はね、振り飛ばされるんじゃないかってつかまっているのがスリルがあって面白かったです。
S19:やっぱり赤い棒を中心にロープにみんながつかまって回っているように見える。
T29:始めに風が吹いているっていう意見があったけど、それじゃあ四方八方に風が吹いていておかしいっていう意見がありましたが、もしこの棒を中心に回っているのであれば、遠心力でこんな風に外側に飛ばされそうになっているのも説明がつくかもしれないね。
S20:水害があったみたい。
T30:それはどこからそう思うんですか?
S20:地面に水がたまっていて、ロープにつかまっている3人が水につからないようにロープに上って逃げているみたいに見えるから。
T31:この人たちは、水につからないように逃げているように見えるそうです。全員が意見を言ってくれたね。じゃあ、ちょっとまとめてみます。風が強く吹いている場所、家が傾いていて、ごみにも見える、がれきがたまっていて、赤い棒が一本立っていて、3人の人物が風に飛ばされていそうになっているのかもしれないし、遊具みたいなものにつかまって遊んでいるのかもしれなという意見が出ました。
さあ、この状況でいったい何が起こっているんでしょうかね?

ちょっと今日は特別に情報を与えます。この作品が描かれたのは1945年です。(黒板に書く)

建物や風景や人について言ってくれたけど、この人物を詳しく見てみましょうか。
どんな気持ちなんでしょうかね?ここはどこの国で、どういう状況なんでしょうか?今度は挙手して言ってみましょう。

さっき状況については、下に水があるから水害なんじゃない科とか、台風が来て、この人たちは救助されているんじゃないか、この人が困っているから助けにいこうとしているんじゃないか、とかありました。この人物、もっと詳しく見てみて想像してみよう。この人物は顔が白いという意見がありましたが、その他には?
最初、見たとき、みんな、え~って声をだしたけど、なんで?どういう印象を受けたの?
S20:3人が洋服を着ているから、アメリカか、ヨーロッパの方だと思う。
T32:洋服だから。日本人の私たちも洋服着ているけど?
S20:1945年で、戦後のそのころは日本は着物みたいなのを着ているから。
T33:描かれた年から考えてくれたんですね。他には?
S13:付け加えで、奥の建物はコンクリート製なので、日本ではない。
T34:なるほど。建物の素材に気が付いてくれたよ。コンクリート製だから日本じゃなくて西洋だろう、ということ。アジアなら、木や土や竹などで作られることが多いでしょうね。これは何の建物だったのかな?建物から国を想像してくれたね。他に発見したことはないですか?
S8:真ん中の人物の顔が疲れているように見える。
T35:疲れている以外に何か発見がある?
S18:おばあさんみたい。
T36:何歳くらいだと思う?
S5:10歳くらい
T37:10歳というと、子どもだけど、老婆のようになんだか疲れたように見える。じゃあ、どんな気持ちなんだろう?
S17:不思議なのは建物が斜めになっているのに、なぜ赤い棒は斜めじゃないんだろうか。
T38:なるほど、この建物は斜めに倒れかけていますね、なのに、赤い棒だけはまっすぐですね。垂直にまっすぐなものはこれ以外にないね。何もかもが、人物さえも斜めになっていますね。それだけでも異様な感じがするかな。どうしてだろう?何を表しているのかな。なぜ作者はこんな風に描いたのだろう?
S10:赤い棒の後ろにあるがれきは、何かの建物が壊された後だと思う。
T39:壊された(・・・)跡?何が壊されたんだろう?
S10:何か新しいものを作ろうとして、機械で壊したんだと思う。
T40:それを聞いて首をかしげているIさん。どうですか?
S20:後ろの建物の上の方が黒く焦げているから、爆弾が落とされたんだと思う。
T41:これが何によって壊されたのか。さっき、何か新しい建物を作るために更地にするために機械で壊した、という意見もありましたが、ここ黒いですね。これは、爆弾が落ちて破壊された、燃えた、ということでした。
S18:下のがれきは戦争でたぶん、そこに町があって、爆弾で壊されてがれきになった。
T42:なるほど。最初、水があるとか台風があったといっていたけど、このがれきやここのこと(建物の上の黒いところを指して)からこれは戦争で、ここにはたくさん家があったのに、爆撃を受けて壊されたあとなんじゃないか、ということでした。

もう一つ、情報を。これは1945年に描かれた、(黒板に書きながら)『解放』という題名がつけられた絵です。これを聞いて、思いついたことはないですか?
S18:その子供たち3人は植民地になっていて、それが植民地がなくなって解放されて、今は楽しく過ごしていますよみたいなことを表していると思う。
T42:じゃあ、やっぱりこの人たちは遊んでいる子供たちだということですか。植民地になっていたところが、解放、つまり戦争が終わったっていうことかな?それで、子どもたちが遊べるようになったといううことですか?、
S20:Kさんの意見に似ていて、戦争や植民地から解放されて喜びのあまりロープに飛び乗って遊んでいる。
T43:じゃあ、すごく喜んでいるのかな?この人たちは。
S20:はい。
S10: 戦争が終わって、ボロボロにされたけど、遊んでいる。
T44:ようやく戦争が終わってボロボロになったけど遊んでいる。じゃあ、解放ということは、戦争が終わって、すっかり平和になったんですか?これは平和になって、やったー!っていう絵なんですかね?細かいところまでよく見て。他にないですか?(しばし沈黙)
S17: 楽しく遊んでいるんなら、楽しい顔をするはずなのに、真ん中の人は楽しくなさそうなのはおかしいと思う。
T45: 楽しくなさそう、怖い、という声が聞こえたけど、いったいこの3人はどういう状況で何をしていて、どんな気持ちなんだろうか?
S24:周りの2人は戦争が終わって、やった~っていう感じだけど、真ん中の人は、まだ、戦争によって傷痕か何かあったんじゃないか。
T47:戦争によって何か傷を負っているかもしれない、何か傷があるかもしれない。どうしてこの人の表情は暗いんだろう。左の人は顔が見えないし、右の人は表情が読み取れないけど、真ん中の人の表情は正面でよく見えるよね。この人の表情から、なんだかそんなに喜んでないみたい、戦争で傷を負っているんじゃないか、っていうことなんだけど、どうしてなんだろう、H君がそれについて言ってくれました。
S18:たぶん緑色の人は、一応解放されたんだけど、また襲ってきたらどうしようとか、そういう不安がまだ少しあったりして、ちょっと顔が楽しそうじゃない。
T48:解放されたけど、もしかして、まだ、何か襲われるかもしれない、また戦争が起きるかもしれないと思って、やったー!って言う気持ちにはなれないということ、まだ不安な気持ちということですか。
S20:緑色の服の人は、戦争中に親が亡くなったりとかして、楽しいけど、なんか表情がつくろえないということになっているのではないか。
T49:戦争があった後だから、これは子どもだということで、親や大事な人が亡くなったかもしれない、だから解放されたからといって、すごく楽しい気持ちにはなれないかもしれない、ということですか。
S13:つかまっていたけど解放されて、故郷に戻ったけどそこがぼろぼろになっていて顔が喜べていない。
T50:どこか収容されていたけど、自由な身になって帰ってきたけどその故郷はボロボロになっていて、遊んでいても晴れた気持ちにはなれないということ?じゃあ、ここは彼らが住んでいたところということですか。
解放という題名と年号から、戦争が終わった年ということから考えてくれました。
T51:この建物ってなんだったんだろう?
S10:マンション。
T52:それはどこからそう思う?
S3:でっかいから。
T53:マンションというと学校や会社と違って、人が住んでいたっていうことだけど、これを見て何か気づくことはないですか?
S4:いろんな柄の色が組んである。
T54:いろんな柄の壁紙が貼ってある。マンションというと集合住宅だから、いろんな家族が一つの大きな建物のそれぞれの部屋に住んでいたということよね。だからここに色がいろいろ違う部屋があるっていうことは、それぞれに違う家族や人たちが住んでた、ということ。どうして中の壁紙が見えているんだろう?
S22:半分に割れているから。
T55:こっち側にあった、外側の壁が崩れてなくなっていて中がむき出しになっているんだね。ここには人がまだ住んでいるんでしょうか?
S19:住んでなさそう。
T56:どうして?
S19:こういうところでは住めそうにないから。
T57:そうですね。斜めになって壁がなかったら住めそうにないよね。ここに住んでいる人はどうしたんだろうね?どこに行ってしまったんだろうね?
T58:最後に言いたいという人はいませんか?
作者はいったいどんな気持ちで何を表現したかったのかな?何か発見があったら言ってもらえないかな?どうしてこういう作品を残したんでしょうか?
S20:戦争は終わっても、復興したりするのはすごく大変だし、人がたくさん亡くなるから、戦争は絶対にやっちゃいけないと伝えたかった。
T59:解放されて、こんな風に遊んでいるけれど、ここにあった建物はがれきになって、元の姿とは違うね、人もたくさん死んだかもしれないね、そういう戦争に対する抗議する気持ちを表したかったということを言ってくれました。
今、(黒板の年号と題名を指して)これから戦争に結び付ける意見がたくさんありましたが、決してそれだけじゃないかもしれない。最初に言ったことで、自分が気づいたことや考えたことなどもあれば、この後、ワークシートにしっかり書いてください。

途中、電子黒板で顔の部分をアップしたようですが、このように、ICTの活用は今後の美術教育には欠かせないアイテムになりそうだと感じています。教育環境の周辺整備も今後の課題になりそうです。

益田市立東陽中学校の房野さん、実践ご苦労様でした。私も情報を提供した際の根拠の確認や会話の積み上げがこれからの私たちの実践課題になるのではないかと感じています。よりよいファシリテートを目ざして、6月の研修会も頑張りましょう。
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