F氏が所属する会社は常に後ろ向きであった。
大きな会社にとって2000万等は大した事がない。臭い物に蓋。さっさと肩代わりし、口封じをして何も無かったことにすればいい。
・・・そんなふうに思えた。
そうは問屋がおろさないと、被害者の一人が息巻いているという。
確かに私達はF氏を信用していたが、その信用も彼の後ろにある大企業の名前があってのこと。会社に対して監督不行き届きを問うてもいいのだ。
以前、お客様相談室の担当がこう言っていた。
「私どもは告発という手しか取れません。あとは皆様が被害届けを提出するという形になります。・・・如何なされますか?」
ところが、F氏は不思議な行動をした。
会社は解雇という形を取って何事も無かったようにしたい雰囲気だったのに、自分から出頭してしまったのである。
「わけがわからんのです。会社の近くで出頭すればいいものを・・・、何で他県で出頭するのか。結局その時担当してしまった私があなた方を回ってこうして調書を取っている。面倒なことをしなきゃいんかんのですよ。」
そりゃそうだ。
事件にならなければそのまま次の生活をスタートさせることができたはずだ。
「でね、最後に聞きたいんですがね、あなたがた彼に厳しい処罰を望みますか?それとも減刑嘆願しますか?」
「・・・実害がないんですからねぇ・・・悪い人ではなかったしねぇ・・・どうよ・・・べつにねぇ・・。」
「ふふっ、わかりました。厳しい処罰は望まない。それでいいですね。」
「(皆で頷く)」
「では終わりにしましょう。調書を作成してから判子を貰いにまた伺う事になりますんで、よろしく。」
せわしなく立ち上がる刑事さんを制し、最後に尋ねた。
「刑事さん・・・本当のところ・・・何なんですかねえ。何が真実なんでしょう。」
「・・・わからんのです。人間の本当のところなんて誰にもわからない。いい顧客を持ってて、助けも色んな所から得られる立場だった。だけど、やってしまったんですよ。私がわかっているのは彼が供述したことだけ。それが真実か真実じゃないかは・・・奴だけしかわからない。それが詐欺っていうもんなんですよ。」
知る由もない真実。
それぞれの人生の中で、交差した数年の時があっただけ。
彼が何十年にも亘って見てきた人生の深淵を、語り合うことなどできないほどの短い期間だ。
真実を知ったところで私に何ができるものでも無し。
今はあの刑事さんの言葉を反芻することにしよう・・・。
大きな会社にとって2000万等は大した事がない。臭い物に蓋。さっさと肩代わりし、口封じをして何も無かったことにすればいい。
・・・そんなふうに思えた。
そうは問屋がおろさないと、被害者の一人が息巻いているという。
確かに私達はF氏を信用していたが、その信用も彼の後ろにある大企業の名前があってのこと。会社に対して監督不行き届きを問うてもいいのだ。
以前、お客様相談室の担当がこう言っていた。
「私どもは告発という手しか取れません。あとは皆様が被害届けを提出するという形になります。・・・如何なされますか?」
ところが、F氏は不思議な行動をした。
会社は解雇という形を取って何事も無かったようにしたい雰囲気だったのに、自分から出頭してしまったのである。
「わけがわからんのです。会社の近くで出頭すればいいものを・・・、何で他県で出頭するのか。結局その時担当してしまった私があなた方を回ってこうして調書を取っている。面倒なことをしなきゃいんかんのですよ。」
そりゃそうだ。
事件にならなければそのまま次の生活をスタートさせることができたはずだ。
「でね、最後に聞きたいんですがね、あなたがた彼に厳しい処罰を望みますか?それとも減刑嘆願しますか?」
「・・・実害がないんですからねぇ・・・悪い人ではなかったしねぇ・・・どうよ・・・べつにねぇ・・。」
「ふふっ、わかりました。厳しい処罰は望まない。それでいいですね。」
「(皆で頷く)」
「では終わりにしましょう。調書を作成してから判子を貰いにまた伺う事になりますんで、よろしく。」
せわしなく立ち上がる刑事さんを制し、最後に尋ねた。
「刑事さん・・・本当のところ・・・何なんですかねえ。何が真実なんでしょう。」
「・・・わからんのです。人間の本当のところなんて誰にもわからない。いい顧客を持ってて、助けも色んな所から得られる立場だった。だけど、やってしまったんですよ。私がわかっているのは彼が供述したことだけ。それが真実か真実じゃないかは・・・奴だけしかわからない。それが詐欺っていうもんなんですよ。」
知る由もない真実。
それぞれの人生の中で、交差した数年の時があっただけ。
彼が何十年にも亘って見てきた人生の深淵を、語り合うことなどできないほどの短い期間だ。
真実を知ったところで私に何ができるものでも無し。
今はあの刑事さんの言葉を反芻することにしよう・・・。