「親方さ、今後の工事の予定ってどうなってるの?」
「ああ?あんた聞いてないの?この建物違法建築だったんだとよ。俺らは解体だけだから後のことは知らんけど、図面の引きなおしって話になってるぞ。となると工事は一旦中止。これから引き直して申請して、かなり延びるぞ。」
「それは聞いてる。じゃあ、私の引越しはいつになるの?」
「まあ、10月って所だろうかね。」
「2ヶ月もかかんの?」
違法建築は聞いていたが、蓋を開けたら一部はラーメン構造でなく、基礎壁なんかが出てきちゃったとのこと。
それも私に移って欲しいと願っていた102号と103号の間の壁が基礎壁だと判明。この壁を撤去して、窓を増やしてベランダまで作るつもりだったのに・・・窓作ったら家壊れちゃうだろう。
更に102と103の間に扉一つ分の穴を空けるのもまずいんじゃないか?という話になったのだ。
で、「箕浦さんにはもっと明るいお部屋に移動していただいて、療養していただきたいんですよ!」なーんて説得していたネゴシエーターK氏、ぷっつり音信途絶えちゃった。
観葉植物で溢れかえるはずだったベランダ・・・消滅。
太陽燦燦とまではいかないにしても、窓も増えて爽やかな風が吹き抜けるはずだった通路側・・・窓作成不可で壁のまま。暗いままじゃないか。
設計士の男性が耳にペンを差し込みながら呻っていた。
「ねえねえ、話が違うわぁ~!ベランダどこいっちゃったの?お窓はどこなの?新しい設計図見せてよぉぉぉ!」
「今一生懸命考えてますから、待ってて。待ってて!!」
「ひどいわ~、お話が全く違うんだものー!!」
「考えますから、考えますから、待っててっ!」
まあ、いいんだけどね。だって、27平米から40平米(と言う話)になってお値段据え置き。文句言ったらバチ当たるでしょ。
太陽が入ろうが入るまいが、犬たちと住めればいいの。でもさ、一応嘘はいけないよって伝えておかないとね。
それから工事はストップしたまま2週間以上経過。
「どうなっちゃてんの?」と思い始めた矢先、次々と現れる色んなおっさん達。
あまりにも色んな人がいて、誰が誰なんだか不明。
「親方!」と叫ぶと何人も振り向くから、「何の親方さん?」と聞かないとわからない。
全体的な工事責任者は「主任さん」と呼ばれる人のようなので、最終的には「主任さん」狙いに決め込んだのだが、それまではそれぞれの担当に付きまとって、お願いしまくりみのちゃん。
例えば電気屋さん。
「ねえねえ、電気はどんな感じ?えっ?やだそんな電気。私さ、持っているこれつけたいんだけど、これつけてくれる?手前がこれで、奥はこれ、リビングはこのシャンデリア。よろぴく。」
建具屋さん。
「おじさん、そっちの部屋とそっちの部屋の間ってドア?いらないから、ドア。どのみち犬食っちゃうから、ドアつけないで、90センチのドア穴のままで角にゴムでもつけてくださいな。」
クロス屋さん。
「ねね、クッションフロアなんだけどさ、フローリングタイプじゃなくてさ、テラコッタタイプのものにして欲しいの。差額が出るようだったら差額はもちろんお支払いするから、いいかしら?」
「まさかさ、クロスも希望があるの?」
「ううん、そこまで言っちゃうとお金かかるから言わないよ。でも、どんなのにするの?あ、これ?問題ないでーす。」
賃貸なのにオーダーメイド。とっても施主気分。
だけど、そんな素振りはいけない。
後になってからは主任さん一人に絞って、あーでもないこーでもないと希望要望言いまくり。
でかい洗濯機やガスの乾太君の置き場所を考えて欲しいとか、窓の外のルーバーは取り外して欲しいとか。
「えっ、ルーバーはずしたら見えちゃうでしょ?」
「だって、曇りガラスだし、隣は空き家だし。ルーバーあったらタダでさえ入らない光が・・・全く入らないよっ!ベランダ無くなっちゃったし、観葉植物で溢れかえるベランダ無くなっちゃったんだもん!!」
「ああ、わかったわかった、ルーバー取るからっ。取ってあげるから!!」
「ベランダ無いから・・・乾太君とは離れられない・・・洗濯物乾かないもん!」
「ガスの配線引き込んでおくからっ。今のうちに工事に組み込んでおけばいいだけの話だからっ、ね。」
そ~お、悪いわねぇ~。
主任さんも40代で大病をして克服した人間なので、今の私の状況が不憫で仕方ないらしい。
「ゆっくり療養しないといけないのに、朝から夕方までこんな騒音の中じゃゆっくり寝ることもできないでしょ。それが心配だよ。」
だけどそんな事言う割りにこの人たち朝が異様に早くてたまげる。
この頃になると、毎日現場到着は朝7時半。8時開始が義務付けられているのか、それまでは準備しつつも着手せず。
その代わり、私の部屋の前の廊下で楽しげに会話に花を咲かせるのだ。
おいおい、ガールズトークならぬボーイズトーク・・・いやっ、おじさんトークだ。
せっかくだから、メンズトークとしとくかね。何で朝っぱらからこんなに会話がはずんでるんだと思うほどの盛り上がりで、バカ笑いに次ぐバカ笑い。
絶対に塩分撮り過ぎ、高血圧だよ、あんたたち。
5時にようやく眠っても2時間ちょっとで起こされる私の身にもなって欲しい。
ステロイドの場合、1回起きるとまた寝付くのが大変なんだよ。ぷんぷん。
そして、8時前から彼らの時計は8時の時を告げるらしく、工事開始。
ある日の朝8時。
ドンドンドン!
「へえぇぇーい・・・」
「今日はね、こんな工事になるんだけど・・・あ、寝てた?」
「主任さん、いちいち来なくていいよ。うるさいのは仕方ないし。自分の部屋ができるのにいちいち文句なんて言わないから。」
「そう?じゃあ、ゆっくり休んでね。ワンちゃんたちもかわいそうだよね、ストレスだと思うよ、こんな工事の音。」
ううん、主任・・・うちの子たちはシェパードやビアデッドではないから、大音響は全く気にしないで爆酔。問題はあなたなの。
あなたの声が一番大きいって知ってた?7時半から廊下で延々と携帯電話で打ち合わせしないで・・・。
ああ言えない、言えないわ。賃貸なのに施主気分の今、何も言えない・・・。
でも・・・施主なのに何だかとっても疲弊してないか、私。
「ああ?あんた聞いてないの?この建物違法建築だったんだとよ。俺らは解体だけだから後のことは知らんけど、図面の引きなおしって話になってるぞ。となると工事は一旦中止。これから引き直して申請して、かなり延びるぞ。」
「それは聞いてる。じゃあ、私の引越しはいつになるの?」
「まあ、10月って所だろうかね。」
「2ヶ月もかかんの?」
違法建築は聞いていたが、蓋を開けたら一部はラーメン構造でなく、基礎壁なんかが出てきちゃったとのこと。
それも私に移って欲しいと願っていた102号と103号の間の壁が基礎壁だと判明。この壁を撤去して、窓を増やしてベランダまで作るつもりだったのに・・・窓作ったら家壊れちゃうだろう。
更に102と103の間に扉一つ分の穴を空けるのもまずいんじゃないか?という話になったのだ。
で、「箕浦さんにはもっと明るいお部屋に移動していただいて、療養していただきたいんですよ!」なーんて説得していたネゴシエーターK氏、ぷっつり音信途絶えちゃった。
観葉植物で溢れかえるはずだったベランダ・・・消滅。
太陽燦燦とまではいかないにしても、窓も増えて爽やかな風が吹き抜けるはずだった通路側・・・窓作成不可で壁のまま。暗いままじゃないか。
設計士の男性が耳にペンを差し込みながら呻っていた。
「ねえねえ、話が違うわぁ~!ベランダどこいっちゃったの?お窓はどこなの?新しい設計図見せてよぉぉぉ!」
「今一生懸命考えてますから、待ってて。待ってて!!」
「ひどいわ~、お話が全く違うんだものー!!」
「考えますから、考えますから、待っててっ!」
まあ、いいんだけどね。だって、27平米から40平米(と言う話)になってお値段据え置き。文句言ったらバチ当たるでしょ。
太陽が入ろうが入るまいが、犬たちと住めればいいの。でもさ、一応嘘はいけないよって伝えておかないとね。
それから工事はストップしたまま2週間以上経過。
「どうなっちゃてんの?」と思い始めた矢先、次々と現れる色んなおっさん達。
あまりにも色んな人がいて、誰が誰なんだか不明。
「親方!」と叫ぶと何人も振り向くから、「何の親方さん?」と聞かないとわからない。
全体的な工事責任者は「主任さん」と呼ばれる人のようなので、最終的には「主任さん」狙いに決め込んだのだが、それまではそれぞれの担当に付きまとって、お願いしまくりみのちゃん。
例えば電気屋さん。
「ねえねえ、電気はどんな感じ?えっ?やだそんな電気。私さ、持っているこれつけたいんだけど、これつけてくれる?手前がこれで、奥はこれ、リビングはこのシャンデリア。よろぴく。」
建具屋さん。
「おじさん、そっちの部屋とそっちの部屋の間ってドア?いらないから、ドア。どのみち犬食っちゃうから、ドアつけないで、90センチのドア穴のままで角にゴムでもつけてくださいな。」
クロス屋さん。
「ねね、クッションフロアなんだけどさ、フローリングタイプじゃなくてさ、テラコッタタイプのものにして欲しいの。差額が出るようだったら差額はもちろんお支払いするから、いいかしら?」
「まさかさ、クロスも希望があるの?」
「ううん、そこまで言っちゃうとお金かかるから言わないよ。でも、どんなのにするの?あ、これ?問題ないでーす。」
賃貸なのにオーダーメイド。とっても施主気分。
だけど、そんな素振りはいけない。
後になってからは主任さん一人に絞って、あーでもないこーでもないと希望要望言いまくり。
でかい洗濯機やガスの乾太君の置き場所を考えて欲しいとか、窓の外のルーバーは取り外して欲しいとか。
「えっ、ルーバーはずしたら見えちゃうでしょ?」
「だって、曇りガラスだし、隣は空き家だし。ルーバーあったらタダでさえ入らない光が・・・全く入らないよっ!ベランダ無くなっちゃったし、観葉植物で溢れかえるベランダ無くなっちゃったんだもん!!」
「ああ、わかったわかった、ルーバー取るからっ。取ってあげるから!!」
「ベランダ無いから・・・乾太君とは離れられない・・・洗濯物乾かないもん!」
「ガスの配線引き込んでおくからっ。今のうちに工事に組み込んでおけばいいだけの話だからっ、ね。」
そ~お、悪いわねぇ~。
主任さんも40代で大病をして克服した人間なので、今の私の状況が不憫で仕方ないらしい。
「ゆっくり療養しないといけないのに、朝から夕方までこんな騒音の中じゃゆっくり寝ることもできないでしょ。それが心配だよ。」
だけどそんな事言う割りにこの人たち朝が異様に早くてたまげる。
この頃になると、毎日現場到着は朝7時半。8時開始が義務付けられているのか、それまでは準備しつつも着手せず。
その代わり、私の部屋の前の廊下で楽しげに会話に花を咲かせるのだ。
おいおい、ガールズトークならぬボーイズトーク・・・いやっ、おじさんトークだ。
せっかくだから、メンズトークとしとくかね。何で朝っぱらからこんなに会話がはずんでるんだと思うほどの盛り上がりで、バカ笑いに次ぐバカ笑い。
絶対に塩分撮り過ぎ、高血圧だよ、あんたたち。
5時にようやく眠っても2時間ちょっとで起こされる私の身にもなって欲しい。
ステロイドの場合、1回起きるとまた寝付くのが大変なんだよ。ぷんぷん。
そして、8時前から彼らの時計は8時の時を告げるらしく、工事開始。
ある日の朝8時。
ドンドンドン!
「へえぇぇーい・・・」
「今日はね、こんな工事になるんだけど・・・あ、寝てた?」
「主任さん、いちいち来なくていいよ。うるさいのは仕方ないし。自分の部屋ができるのにいちいち文句なんて言わないから。」
「そう?じゃあ、ゆっくり休んでね。ワンちゃんたちもかわいそうだよね、ストレスだと思うよ、こんな工事の音。」
ううん、主任・・・うちの子たちはシェパードやビアデッドではないから、大音響は全く気にしないで爆酔。問題はあなたなの。
あなたの声が一番大きいって知ってた?7時半から廊下で延々と携帯電話で打ち合わせしないで・・・。
ああ言えない、言えないわ。賃貸なのに施主気分の今、何も言えない・・・。
でも・・・施主なのに何だかとっても疲弊してないか、私。