みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1457「食らう」

2024-05-10 17:57:44 | ブログ短編

 これは京(きょう)の都(みやこ)でのお話しだ。京ではいにしえから魑魅魍魎(ちみもうりょう)が闊歩(かっぽ)していたという。中でも、人を食(く)らう鬼(おに)は人々から恐(おそ)れられていた。それは、現代(げんだい)になっても――。
 夜、京の街(まち)を歩いている男がいた。少し離(はな)れたところに別(べつ)の人影(ひとかげ)が…。男は、どうやらそれに気づいているようだ。男は人通りのない路地(ろじ)へ入って行く。そこは街灯(がいとう)もなく薄暗(うすぐら)かった。しばらく歩くと、男は立ち止まって振(ふ)り返った。後をつけていた人影は女だった。突然(とつぜん)のことに、女は身(み)を隠(かく)す間(ま)もなく立ちつくした。
 男は言った。「誰(だれ)だ? 俺(おれ)に何か用(よう)でもあるのか?」
 女はどうするか迷(まよ)っているようだ。男は女に近づきながら、
「俺のことを知ってるのか? 忘(わす)れろ、その方が身のためだ」
 女は意(い)を決(けっ)してバッグからナイフを取り出した。そして、男めがけて突(つ)き進(すす)んだ。
 女が目を開(あ)けると、ナイフは男の手の中に握(にぎ)られていた。女はナイフを引き抜(ぬ)こうとしたがびくともしない。男はナイフを強(つよ)く握りしめた。どういうわけか、男の手から血(ち)が流(なが)れることはなかった。女がナイフから手を放(はな)すと、男はそれを路地の暗(くら)がりに放(ほう)り投(な)げた。
「どういうつもりだ?」男は女を見つめて呟(つぶや)いた。「めんどくせぇなぁ…」
 男の顔が赤黒(あかぐろ)くなって、頭から二つの角(つの)が現(あらわ)れた。そして、男の身体(からだ)が大きくなっていく。女は恐怖(きょうふ)で身動(みうご)きもできなくなっていた。大きな太(ふと)い手が女の身体をつかみあげると、大きな口の中へ押(お)し込んだ。後(あと)には何も残(のこ)らなかった。
<つぶやき>女は鬼の存在(そんざい)を知ってしまったようです。どうして一人で立ち向(む)かったのか?
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