みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

「しずく74〜覚醒」

2017-06-30 19:21:30 | ブログ連載~しずく
 大男(おおおとこ)は不気味(ぶきみ)に笑うと、手にした刀(かたな)を振り上げた。水木涼(みずきりょう)は慌(あわ)てて逃(に)げようとして、何かにつまずいて倒(たお)れ込んだ。ちょうどそこには雑兵(ぞうひょう)の死体(したい)が転がっていて、涼が目を開けると、目の前に血を流しているその雑兵の顔が迫(せま)っていた。涼は思わず悲鳴(ひめい)をあげた。
 彼女は完全にパニックになって、あたふたと這(は)うことしかできなかった。大男はもてあそぶように彼女の後を追い、彼女を蹴(け)り倒した。そして、仰向(あおむ)けになった彼女をまたいで仁王立(におうだ)ちになった。もう逃げ場はどこにもない。
 大男は不敵(ふてき)な笑みを浮かべて、刀を突き刺(さ)そうと持ちかえた。その間、彼女がもがいていると、刀が転がっているのが目に入った。だが、とても手がとどく場所ではない。それでも彼女は必死(ひっし)に手を伸(の)ばした。すると、落ちている刀がカタカタと動き出した。
 涼が正気(しょうき)に戻ったとき、彼女は屋上(おくじょう)に倒れていた。両手には竹刀(しない)が強く握(にぎ)られていて、それで何かを突き刺した感覚(かんかく)が手に残っていた。あずみが涼の顔を覗(のぞ)き込んで言った。
「やればできるじゃない。その感覚を忘れないでね」
 涼はゆっくり身体を起こすと、「今のは…、何なんだよ。私…、殺したの?」
「幻覚(げんかく)よ。あなたを覚醒(かくせい)させるために、幻(まぼろし)を見せただけ。あなたは誰も殺してないわ」
「そう…、そうなんだ。でも…、怖(こわ)かった…。もう…、死ぬかと…」
 涼の目から涙(なみだ)があふれてきた。彼女は子供のように泣(な)きじゃくった。
<つぶやき>誰しも、怖い思いはしたくはありませんよね。なるべく避(さ)けたいところです。
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0046「笑顔が一番」

2017-06-29 19:35:18 | ブログ短編
 光恵(みつえ)は彼と暮(く)らし始めて二年目を迎(むか)えた。彼女は彼のことを愛している。彼のためなら何でもしたいし、どんな苦労(くろう)もいとわなかった。結婚はしていなかったが、二人の愛は永遠(えいえん)に続くと、彼女は信(しん)じていた。でも彼の方は…。彼の心はいつの間にか離(はな)れていたようだ。
 光恵がそのことに気づいたのは、仕事から帰って来たときだった。テーブルの上にメモが置かれていた。広告(こうこく)の裏(うら)に書かれた、走り書きのメモ。
<俺(おれ)は出て行く。好きな女ができたんだ。バイバイ>
 光恵は我(わ)が目を疑(うたが)った。出て行くなんて…。お金なんか持ってないのに。光恵はハッとして、タンスの引き出しを開けてみた。そこに入れておいたはずの通帳(つうちょう)と印鑑(いんかん)、父の形見(かたみ)の金(きん)の懐中時計(かいちゅうとけい)が消えていた。時計が入っていた箱(はこ)には、一緒(いっしょ)に入れておいた父の写真(しゃしん)だけが残されていた。光恵は力が抜(ぬ)けてしまい、写真を手にしてしゃがみ込んでしまった。
 涙(なみだ)が頬(ほお)をつたっていく。彼女はそれをぬぐいもせずに、ひとしきり泣いた。その後、手にした写真に目をやり、「お父さん…」とつぶやいた。写真の中の父親は笑っていた。
 次の朝。タンスの上には父の写真が置かれていた。光恵は父の写真に手を合わせた。光恵の耳(みみ)には父の口癖(くちぐせ)が聞こえていた。
<笑顔(えがお)が一番だぞ。笑顔でいれば幸せになれるんだ>
 光恵は吹(ふ)っ切るように笑顔を作り、仕事へと出かけていった。
<つぶやき>簡単(かんたん)なことじゃないですよね。でも、笑顔を忘れないで。きっといつか…。
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「もやもや」

2017-06-27 19:19:19 | ブログ短編
 自分でこんなことを言うのはあれだけど…。私は、可愛(かわい)いというわけでもないし、人付き合いもけして得意(とくい)な方とはいえない。でも、仕事(しごと)では誰(だれ)にも負(ま)けてないと思っている。入社以来(いらい)、どんなことでもやってきたし、同期(どうき)の可愛いだけで要領(ようりょう)の良い女から押(お)しつけられた仕事だって、何度も代わりにやってあげたことがある。
 私にとって、そんなことはどうでもいいし、何とも思わない。私のした仕事はすべて私のスキルになるから。結果(けっか)は必ずついてくるはずだ。私はそれを信じている。
 ところが、どういうわけかその女が昇進(しょうしん)することになった。仕事もろくにしないで、上司(じょうし)に媚(こ)びるような女が――。この会社の人事(じんじ)はどこを見てるんだ。私は怒(いか)りにまかせて辞表(じひょう)を書いてしまった。書き終わって、私はふと考えた。
 自分は何をしてるんだろう。何で、私が会社を辞(や)めなくちゃいけないんだ。そもそも、あの女と私を較(くら)べる必要(ひつよう)があるのか?
 NOだ! 私は私だ。私は、私のやるべき仕事をやるだけだ。
 そう考えたら、何だか気持ちが楽(らく)になった気がする。
 しばらくして、あの女が突然(とつぜん)、〈あたし、明日結婚します!〉と宣言(せんげん)して、会社を辞めてしまった。それを聞いた私は、何だか、もやもやとした…、言いようのない感情(かんじょう)が湧(わ)き上がってくるのを感じた。これは、いったい何なのか…。
<つぶやき>人は較べたがるものなのかもね。でも、自分らしくあればいいんじゃないの。
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0045「コピーロボット」

2017-06-26 19:27:07 | ブログ短編
 美子(よしこ)は<どうしても>と、おばさんに頼(たの)まれて、お見合(みあ)いをすることになった。写真(しゃしん)で見た限(かぎ)りでは、ごく平凡(へいぼん)な中小企業(ちゅうしょうきぎょう)のサラリーマンだ。美子は気が進まなかった。そこで、最近(さいきん)手に入れたコピーロボットを身代(みが)わりにすることにした。見合いの席(せき)で失敗(しっぱい)させて、嫌(きら)われるようにしむけるのだ。
「ねえ、どうだった?」見合いから帰って来たロボットに美子は訊(き)いた。
「それが、おかしいの。何だか気に入られちゃったみたいで」
「どうしてよ。ちゃんと私の言った通りにしたんでしょ」
「もちろんよ。お茶をこぼしてみたり、口を開(あ)けて食事(しょくじ)をしたり。それと、言葉(ことば)づかいもたどたどしくしたのよ。絶対(ぜったい)に普通(ふつう)の人だったら好きにはならないわ」
「ああ、どうしよう。このまま話が進んじゃったら…。そんなの困(こま)るわ」
「大丈夫(だいじょうぶ)よ。二人っきりになったとき話したんだけど、とっても真面目(まじめ)そうな良い人だったわよ。何でもできる人よりも、少し抜(ぬ)けてる人の方がいいって言ってたわ」
「なにそれ。それじゃ私が、まるでバカ娘(むすめ)ってことじゃない。冗談(じょうだん)じゃないわよ!」
「そんなに怒(おこ)らないで。あなたが気に入らなかったら、私が付き合ってもいいのよ」
「これは、私の見合いよ。いいわ。私から会いに行って、ガツンと言ってやるわよ」
<つぶやき>出会いは一期一会(いちごいちえ)です。ひょんなことから恋が生まれるのかもしれません。
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「これでいいの?」

2017-06-24 19:14:18 | ブログ短編
 この街(まち)には超人(ちょうじん)が住んでいた。彼はその能力(のうりょく)を使って、災害(さいがい)や事故(じこ)現場での救出(きゅうしゅつ)、犯罪者(はんざいしゃ)の逮捕(たいほ)などに協力(きょうりょく)していた。おかげでこの街はどこよりも住みやすい場所になっている。だが、彼には憂慮(ゆうりょ)していることがあった。それは――。
「君たちかい? 僕を呼んだのは」超人は子供たちを前にして言った。
「そうだよ。僕たち、助けてほしいことがあるんだ。とっても困(こま)ってるんだ」
「そうか…。で、何に困ってるんだい?」
「実(じつ)はね、先生(せんせい)が宿題(しゅくだい)を出したんだ。それが、とっても難(むずか)しくて。代(か)わりにやってよ」
 超人はため息をつくと、「悪(わる)いが、それはムリだ。君たちで解決(かいけつ)したまえ」
「えっ、何でだよ。何でもやってくれるんじゃないの? ママが言ってたよ」
 超人は子供たちをさとすように言った。「宿題は、先生が君たちの学習(がくしゅう)のために出したものだ。君たちの頭で考え行動(こうどう)することが大切(たいせつ)なんだ。努力(どりょく)することを怠(おこた)っては――」
 子供の一人が叫(さけ)んだ。「何だよ、ほんとは出来(でき)ないんだろ。もう行こうぜ」
「そうだな。きっとこのおじさん、何にも知らないんだよ。小学校の問題(もんだい)が解(と)けないなんて、笑(わら)っちゃうよな」
 超人は、子供たちが駆(か)けていくのを見送りながら呟(つぶや)いた。
「まいったなぁ。子供のとき、ちゃんと勉強(べんきょう)しとけばよかったよ」
<つぶやき>そこかい? 宿題は、まず自分で考えてみよう。どうしても解らない時は…。
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