みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

「しずく70〜試合」

2017-04-30 19:21:33 | ブログ連載~しずく
 その試合(しあい)は異様(いよう)な静けさの中で始まった。見ているもの、誰一人として声を上げることはなかった。じっと試合の成り行きを見守っていた。
 水木涼(みずきりょう)は、この先輩(せんぱい)と対峙(たいじ)して言いようのない恐怖(きょうふ)を感じていた。隙(すき)というものがないのだ。今までなら相手(あいて)の動きが手に取るように見えてくるのに、この人からは…。まったく勝てるというイメージが浮(う)かんでこない。自分が小さな子供になったような気分だ。
 涼は自分を奮(ふる)い立たせるように声を張り上げて、相手に打ち込んで行った。しかし、相手の方はそれを難(なん)なくかわして、まるで風にゆれる柳(やなぎ)の枝を相手にしているようだった。
「何なの…。ふざけるんじゃないわよ。ちゃんと勝負(しょうぶ)しなさいよ!」
 涼は思わず声を上げた。そしてやみくもに竹刀(しない)を振り回し、力任(ちからまか)せに攻(せ)め込んで行く。今度は、相手はそれをしっかり受け止めて、動きが止まったところで凄(すご)い力で押し返してきた。涼は自分の身体を支(ささ)えきれずに、その場で尻餅(しりもち)をついてしまった。
 自分が倒(たお)されるなんて…。涼は思っても見なかったことに動揺(どうよう)し、そして闘争心(とうそうしん)が湧(わ)き上がってくるのを感じた。もともと負けず嫌いなのだ。涼は勢いよく立ち上がると、竹刀を構(かま)えた。彼女の目つきが変わっていた。相手にもその変化(へんか)が伝わったのか、竹刀を構え直(なお)して涼と対峙した。
 涼はじりじりと相手との距離(きょり)を縮(ちぢ)めていく。相手は距離を取ろうと、後ろへ下がろうとした。その時だ、自分の身体が動かないことに気がついた。
<つぶやき>何事も諦めないで挑戦する。失敗を恐れなければ、成功の道は開けるかも。
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0027「我ら探検隊」

2017-04-29 20:09:12 | ブログ短編
 UMA(ユーマ)探検隊(たんけんたい)は深い森の中に分け入った。今回の目的はツチノコ捜索(そうさく)である。先日、この森の中でツチノコの目撃情報(もくげきじょうほう)があったのだ。はたして、彼らはツチノコを発見できるのか?
「野元(のもと)隊長。目撃されたのは、この辺りだと思われます」
「いよいよ、我々の活動(かつどう)が報(むく)われる時が来た。身を引き締(し)めて、捜索にあたってくれ」
 隊長の檄(げき)が飛び、隊員たちは散開(さんかい)し、辺りをくまなく探し回った。だが、いっこうに見つかる気配(けはい)はなかった。時間だけが、虚(むな)しく過ぎていく。
「隊長、もう無理(むり)ですよ。あきらめましょうよぉ」
「何を言ってるんだね。明子(あきこ)隊員、最後まであきらめちゃだめだ」
「隊長、あれを見て下さい!」松村(まつむら)隊員が、森の先を指さした。そこには街(まち)の明かりが…。
「はーい! もうやめましょう」明子は覚(さ)めた口調(くちょう)で、「みなさーん、撤収(てっしゅう)しますよーぉ。集めたゴミは、車のところまで運んで、分別(ふんべつ)して下さーい。お願いしまーす」
「明子君、次はもっとやり甲斐(がい)のある所へ行きたいね。ヒマラヤで雪男(ゆきおとこ)の捜索とか…」
「社長、わが社にそんな余裕(よゆう)はありません。ボランティア活動もいいですけど、社員を探検ごっこに付き合わせるのは、もう止めて下さい」
「いいじゃないか。楽しまなきゃ。それに、このビデオでCMを作れば、一石二鳥(いっせきにちょう)だよ」
<つぶやき>この会社の行く末(すえ)は大丈夫(だいじょうぶ)なの? でも、遊び心は大切です。忘れないでね。
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「極秘書類2」

2017-04-27 19:39:35 | ブログ短編
 そこで男は考えた。こんなのを持っていては、気が散(ち)って仕事に身(み)が入らない。それに、それが原因(げんいん)でミスをしてしまうかもしれない。もし会社に損害(そんがい)を出してしまっては…。
 男は手に持った茶封筒をおばちゃんに渡そうとしたが、急に手を引っ込めて言った。
「やっぱりダメだよ。自分で持ってないと、もし何かあったら…」
「律儀(りちぎ)なんだね。気に入った。あんたみたいな社員は大切(たいせつ)にしないとね。さあ、何も心配(しんぱい)することはないんだよ。わたしが悪いようにはしないからね」
 おばちゃんは手を出して、にこやかに肯(うなず)いて見せた。男はしばらく迷(まよ)っていたが、思い切って封筒を差し出した。おばちゃんは封筒を受け取ると、
「明日を楽しみにしてなさい。あんたには、ちゃんと礼をするからね」
 ――翌朝。男は寝不足(ねぶそく)の目をこすりながら出社した。本当に大丈夫(だいじょうぶ)なのか気が気でなかったのだ。早速(さっそく)、男は掃除婦のおばちゃんを捜(さが)した。でも、毎朝いるはずの場所におばちゃんの姿(すがた)はなかった。さあ、ますます男はあせった。自分のデスクに戻ると、上司(じょうし)から社長がお呼びだと伝(つた)えられた。男はびくびくしながら社長室へ向かった。
 社長室へ入ると、社長は口をへの字に曲(ま)げて立っていた。男は駆(か)け寄って頭を下げようとして、ハッとした。社長の椅子におばちゃんが座っていたのだ。社長がぼそぼそと言った。「こちらが、会長だ。君は、どうしてあれを――」
 おばちゃんが口を挟(はさ)んだ。「お黙(だま)りなさい! あんたに、社長の自覚(じかく)があるのかい」
<つぶやき>社長はおばちゃんの息子なのかもしれません。さて、何をやらかしたのか…。
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0026「プレゼント」

2017-04-26 19:33:53 | ブログ短編
 今日は彼の誕生日(たんじょうび)。彼といっても、私の片思(かたおも)いなんだけど…。彼は、私のことをたくさんいる友達の一人としか思っていない。今度の誕生パーティだって、特別(とくべつ)に招待(しょうたい)されたわけじゃない。なのに私ったら、彼へのプレゼントを真剣(しんけん)に探して、何を着ていくかで悩(なや)んでいる。ほんと、バカみたいだよね。私にもう少し勇気(ゆうき)があったら、彼に告白(こくはく)して…。
 誕生パーティはレストランを貸(か)し切って盛大(せいだい)に始まった。彼の周(まわ)りには奇麗(きれい)な女の子がいっぱいいて、私は足がすくんでしまった。大きなバースデーケーキの横には、たくさんのプレゼントが積(つ)み上げられていて。私のプレゼントより、大きくて豪華(ごうか)なものばかり。
 私はパーティとか華(はな)やかな場所はほんとは苦手(にがて)なんだ。だから、隅(すみ)の方で小さくなっていた。彼へのプレゼントを握(にぎ)りしめて…。私がぼんやり座っていると、
「やあ、来てくれたんだ」彼がすぐ横に座って話しかけてきた。私はドキドキして、
「あの…、おめでとう…」彼の顔をまともに見ることができなかった。でも、少しだけ勇気を出して、「これ、あなたにと思って…」プレゼントを渡すことができた。
「君からプレゼントをもらえるなんて…。ありがとう」
 彼は嬉(うれ)しそうに受け取ってくれた。そして、「ねえ、誰か、付き合ってる人とか…、いるのかな?」私が首(くび)を振ると、「だったら、僕と付き合って下さい。ああッ…、やっと言えた」
 彼はほっとした顔をして、私に微笑(ほほえ)んだ。
<つぶやき>気持ちはちゃんと伝えないと、なにも始まりませんから。はじめの一歩です。
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「極秘書類1」

2017-04-24 19:32:12 | ブログ短編
 社長室(しゃちょうしつ)に若い男がおどおどしながら入って来た。それを迎(むか)えたのは、もちろん社長だ。社長は重厚(じゅうこう)な感じのソファに座(すわ)るように勧(すす)めると、自(みずか)らもどかっと腰(こし)を下ろして言った。
「君は信頼(しんらい)のおける人物(じんぶつ)だと聞いている。そこでだ、君に頼(たの)みたいことがあるんだが…」
 若い男は驚いた。入社式以来(いらい)、社長と顔を合わすことなどなかったのに、平社員(ひらしゃいん)の自分のことを知っているなんて――。女性秘書(ひしょ)が茶封筒を男の前に置くと、社長は続けた。
「ここには、我が社にとって重要(じゅうよう)な極秘(ごくひ)書類が入っている。これを預(あず)かってくれないか。長くはない、明日一日でいいんだ。実は、会長(かいちょう)が来ることになっていて、目に触(ふ)れるところに置きたくないんだ。もちろん、引き受けてくれるだろ?」
 平社員に断(ことわ)ることなどできるはずもなく、若い男は封筒(ふうとう)を手に社長室を出た。誰にも見せるなと社長から念(ねん)を押されて、男はどうしたものかと考えてしまった。男はエレベーターの前で大きなため息をついた。すると、後から声をかけられた。男が振り返ると、そこには掃除婦(そうじふ)のおばちゃんが立っていた。このおばちゃんとは顔見知(かおみし)りで、今まで何度も励(はげ)ましてもらったことがある。そこで男は、うっかり社長室でのことを話してしまった。
 おばちゃんは笑いながら、「そりゃ大変(たいへん)だ。わたしが預かってあげようか? そんなの持ってちゃ仕事にならないじゃない。心配(しんぱい)ないよ、誰もわたしが持ってるなんて思わないさ」
<つぶやき>渡しちゃっていいの? でも、どうして社長は大切な書類を預けたのでしょ。
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