みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

「しずく80〜消える」

2017-09-30 20:02:19 | ブログ連載~しずく
 千鶴(ちづる)は反論(はんろん)することも出来(でき)なかった。紳士(しんし)とともに部屋を出ると、心の中で呟(つぶや)いた。
「ごめんなさい、私にはこれ以上のことは…。許(ゆる)してね」
 千鶴が振り返ると、男たちがしずくを取り囲(かこ)んでいた。そこで、部屋の扉(とびら)が閉まった。
「どうしたんだね?」紳士が千鶴に声をかけた。「何も気にすることはない。これも我々(われわれ)の自由(じゆう)のためだ。あの女の小さな命が、我々に幸(しあわ)せを運(はこ)んでくれるんだ」
 突然(とつぜん)、部屋の扉が開いて男が飛び出してきた。紳士はにこやかに言った。
「ご苦労(くろう)だった。運び出してくれ。――最後の始末(しまつ)は、こちらでやっておく。君は今まで通り、他の連中(れんちゅう)を監視(かんし)してくれ。もし何かあったらすぐに連絡(れんらく)を――」
 男が口を挟(はさ)んだ。「あの…、それが…、消(き)えました…」
 紳士が怪訝(けげん)そうな顔で訊(き)き返した。「消えた…。何のことだ?」
「ですから、あの女です。突然、光に包(つつ)まれて、消えてしまったんです」
 紳士は顔を真っ赤にして叫(さけ)んだ。「捜(さが)せ! ぐずぐずするな、部屋中くまなく捜すんだ!」
 男たちは家中へ散(ち)って行った。紳士は大きく息(いき)をつくと、千鶴に向かってぎこちない笑顔を見せて言った。「さあ、君の出番(でばん)だ。捜してくれ、あの女を」
 千鶴は能力(ちから)を使って捜してみたが、しずくの姿(すがた)を見つけられなかった。紳士は叫び声をあげると、ゆっくり息を吐(は)いて言った。「まあいい…。今のところ、何の障害(しょうがい)にもなっていないからな…。しかし、計画(けいかく)を急いだ方がよさそうだ」
<つぶやき>しずくはどこへ行ったの? 計画って、彼らは何をしようとしているのか?
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0076「もうひとりの自分2」

2017-09-29 19:00:59 | ブログ短編
 さおりはあの日からずっと、もうひとりの自分に付(つ)きまとわれていた。見られているだけでも落ち着かないのに、休む間(ま)もなくしゃべりかけてくるのだ。でも、さおりはその対処法(たいしょほう)を見つけた。自分の姿(すがた)が鏡(かがみ)やガラスに映(うつ)っているとき、彼女をそこに閉(と)じ込(こ)めることができるのだ。おしゃべりも止(や)めさせることができた。
 彼女の姿は他の人には見えないようだ。だから、人前(ひとまえ)では彼女を無視(むし)することにした。だって、一人でぶつぶつしゃべっていたら、変(へん)な人に思われてしまうから。会社にいるときは要注意(ようちゅうい)。もちろん、机(つくえ)の上には鏡を置いて、邪魔(じゃま)されないようにしていた。
 ある日、もうひとりの自分がある提案(ていあん)をした。
「ねえ。あなた、営業(えいぎょう)の神谷(かみや)さんのこと好きなんでしょ」
「何よ、急に」さおりは動揺(どうよう)をかくせなかった。「そんなことないわよ」
「分かってるわよ。だって、私はあなたなんだもん」
「あなたには関係(かんけい)ないでしょ」さおりはそう言うと手鏡(てかがみ)を手に取った。
「もう帰ってよ。あなたのいた場所(ばしょ)に。私の前から消(き)えてちょうだい」
「いやよ」そう言うと、もうひとりの自分は楽(たの)しそうに微笑(ほほえ)んだ。「わたしが、神谷さんと付き合えるようにしてあげる。簡単(かんたん)なことよ。ちょっと足を踏(ふ)み出せばいいんだから」
<つぶやき>この話、まだ続くのでしょうか? さおりの運命(うんめい)は、どうなっちゃうの…。
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「自称天才」

2017-09-27 19:01:09 | ブログ短編
「やっと負(ま)けを認(みと)めたか。それでいい、俺(おれ)は天才(てんさい)だからな」
 男は笑いながら言った。
 負けを認めた探偵(たんてい)は、卑屈(ひくつ)になるでもなく穏(おだ)やかに話しかけた。
「君は、最高(さいこう)の好敵手(こうてきしゅ)だ。お別れに、ハグさせてもらってもいいかな?」
「構(かま)わんよ。これでお終(しま)いだ。ここに人がやって来ることはないからな。静(しず)かに死(し)ねるぞ」
 男は出て行った。扉(とびら)の鍵(かぎ)をかける音が最後(さいご)に響(ひび)いた。――男が街(まち)へ戻ると、すぐに警官(けいかん)に取り囲(かこ)まれ連行(れんこう)された。だが、男は取り調べをする刑事(けいじ)に平然(へいぜん)と答えた。
「君たち凡人(ぼんじん)には、私の考えなど理解(りかい)できまい。どんなにあがいても、私が犯罪(はんざい)を犯(おか)した証拠(しょうこ)を見つけるなんて無理(むり)な話だ。私を釈放(しゃくほう)したまえ」
 刑事はにやりと笑うと、男の肩(かた)に手をかけて耳元(みみもと)にささやいた。「証拠ならあるさ。お前が持って来てくれたからな。わるいが、上着(うわぎ)を脱(ぬ)いでくれないか」
 刑事は上着をはぎとると、男の目の前に置いた。上着の背中(せなか)には一枚の紙(かみ)が貼(は)りつけてあった。そこには簡単(かんたん)な地図(ちず)と、この男は犯罪者(はんざいしゃ)だから警察(けいさつ)に連絡(れんらく)するようにと書かれてあった。男は憤慨(ふんがい)して声を荒(あら)げて叫(さけ)んだ。
「あの野郎(やろう)! 何てことをしてくれたんだ。俺の上着に――」
 刑事は男を座らせると勝ち誇(ほこ)ったように言った。「これで拉致監禁(らちかんきん)の罪(つみ)は免(まぬが)れないぞ。さあ、洗(あら)いざらい話してもらおうか。お前は天才なんだから、忘(わす)れたなんて通(とお)らないぞ」
<つぶやき>詰(つ)めの甘(あま)い天才は凡人と等しいのです。ところで、探偵は救出されたのか…。
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0075「もうひとりの自分1」

2017-09-26 19:05:58 | ブログ短編
 さおりは初めて行った町で、古風(こふう)なアンティークの店を見つけた。何かに引きよせられるように店内(てんない)に入ってみると、きれいに装飾(そうしょく)された小さな手鏡(てかがみ)が目に止まった。
「わぁ、すてき…」さおりは思わずつぶやいた。
 それを見ていた店主(てんしゅ)の老婦人(ろうふじん)は優(やさ)しく微笑(ほほえ)み、「どうぞ。手にとってよく見て」
 さおりは手鏡を手に取ると、恐(おそ)る恐る値段(ねだん)を聞いてみた。年代物(ねんだいもの)の鏡のようで、高貴(こうき)な人が使っていたに違(ちが)いないと思ったからだ。さおりは今まで物欲(ぶつよく)というものを感じたことはなかった。でも、これだけはどうしても手に入れたいという衝動(しょうどう)を抑(おさ)えきれなかった。
「今月の給料日(きゅうりょうび)までは節約生活(せつやくせいかつ)ね」さおりは家に帰るとつぶやいた。でも、後悔(こうかい)はなかった。大切(たいせつ)に持って帰ってきた手鏡を箱(はこ)から出し、自分の顔を鏡に映(うつ)してみる。不思議(ふしぎ)と他の鏡よりも自分の顔がきれいに見えた。何だか嬉(うれ)しくなって笑(え)みがこぼれた。
 そのとき、突然(とつぜん)、鏡から閃光(せんこう)が走った。さおりはまぶしくて目を塞(ふさ)いだ。一瞬(いっしゅん)のことで、何がどうしたのか…。目を開けてみると、目の前に女が座(すわ)っていた。さおりは飛(と)び上がった。あまりのことに言葉(ことば)も出ない。それに、その女は双子(ふたご)のように自分とそっくりなのだ。
 その女は立ちあがり背伸(せの)びをすると、嬉しそうにつぶやいた。「やっぱり、外(そと)はいいわ」
「あなた、だれ?」さおりは何とか言葉を絞(しぼ)りだした。女はさおりの手を取ると、
「わたしは、あなたよ。あなたは、わたし」そう言って女は微笑んだ。
 さおりは混乱(こんらん)していた。何が起(お)きているのか分からず、不安(ふあん)な気持(きも)ちで一杯(いっぱい)になった。
<つぶやき>さおりはどうなちゃうの? この話の続きは…。次の機会(きかい)に。乞(こ)うご期待(きたい)?
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「エンディング」

2017-09-24 18:52:45 | ブログ短編
 突然(とつぜん)、古(ふる)い友人が訪(たず)ねて来た。そいつとは、子供の頃によく一緒(いっしょ)に遊(あそ)んでいた仲(なか)だ。ずいぶん前に、少し離れた場所へ引っ越したので、会う機会(きかい)もなくなってしまった。
 その友人は白髪頭(しらがあたま)を下げると、昔(むかし)と同じ笑顔を私に見せて言った。
「お互(たが)い歳(とし)を取ったなぁ。――実は、借(か)りたままになっていた物を返(かえ)しに来たんだ」
 友人は持ってきた風呂敷(ふろしき)包みを広げた。中から、おもちゃが出てきた。これは…、確(たし)か子供の頃に流行(はや)っていたおもちゃだ。友人は言った。
「もう俺(おれ)たちの人生(じんせい)も残(のこ)りわずかだろ。人生の最後(さいご)を迎(むか)える前に、やり残していることを一つずつ片づけようと思ってな。今、家の中を整理(せいり)しているとこなんだ。そしたら、これを見つけたんだ。覚(おぼ)えてるだろ? よく二人で遊んだじゃないか」
 そう言われても、私にはピンと来なかった。何となく昔遊んだ記憶(きおく)はかすかにあるが、自分のものだったかどうか…、これを貸(か)したことすらまるで覚えていない。
 友人は詫(わ)びと礼(れい)を繰(く)り返すと、「元気(げんき)でな」と言って帰って行った。私は、残された薄汚(うすよご)れたおもちゃを見て思った。いまさらこんなものを返されても…。でも、わざわざ届(とど)けに来てくれた友人の気持(きも)ちを思うと、むげにするわけにもいかない。
 私は独(ひと)り言のように呟(つぶや)いた。「残りわずかか…。そろそろ考えないとな――」
<つぶやき>律儀(りちぎ)な人もいるんですね。でも、このおもちゃ、レアものかもしれませんよ。
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