みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0334「神様のお告げ」

2018-09-29 18:40:39 | ブログ短編

<今日、最初(さいしょ)に言葉(ことば)を交(か)わした人と、お前は恋(こい)をする>
「ええっ…。どうして? そんなこと…」愛菜美(まなみ)はうなされるように寝言(ねごと)で呟(つぶや)くと、布団(ふとん)の中からはね起(お)きて叫(さけ)んだ。「何でよ!」
 我(われ)に返った愛菜美は、辺(あた)りを見回してホッと胸(むね)を撫(な)で下(お)ろす。
「今のは夢(ゆめ)…。夢だったんだ。あーっ、何て夢なの――」
 ――彼女は顔を洗(あら)いながらも、さっきの夢の言葉が頭から離(はな)れない。最初に言葉を交わした人と…。「まさか、そんなこと…。ないない、絶対(ぜったい)ないわよ」
 頭ではそんなこと分かっている。でも、気持(きも)ちでは…。「もし、そうなったら? 今日は会社(かいしゃ)に行かなきゃいけないし。そうなると…、最初に言葉を交わすのは――」
 いつも、会社で真っ先に顔を合わせるのは上司(じょうし)である。あの、ぶくっと出っぱったお腹(なか)に、脂(あぶら)ぎった顔――。愛菜美は、上司の姿(すがた)が頭に浮(う)かんで身体(からだ)を震(ふる)わせた。
「絶対いやよ。あんな人に恋をするの? 冗談(じょうだん)じゃないわよ。それに、あの人、奥さんがいるのよ。じゃあ、あたしは不倫(ふりん)しちゃうってこと!」
 愛菜美は玄関(げんかん)に座(すわ)り込み頭を抱(かか)えた。「ダメだ~ぁ。今日、会社、休もう。そうよ、そうすれば…。大丈夫(だいじょうぶ)よ。あたし、有休(ゆうきゅう)だって残(のこ)ってるし。それがいいわ」
 彼女は携帯(けいたい)電話を取りだして、会社の番号を呼び出した。そして、通話(つうわ)ボタンを押(お)しかけて手を止めた。「ダメ…。誰(だれ)が出るか分からないじゃない。どうしようっ!」
<つぶやき>これは夢ですよ。それに、最初に言葉を交わすのは別の男性かもしれません。
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0333「花粉デビュー」

2018-09-28 18:42:03 | ブログ短編

 周(まわ)りでくしゃみをしたり鼻(はな)をかんだりしている人が増(ふ)えていた。友達(ともだち)にも何人かいて、その辛(つら)さは何となく分かっていたつもりでいた。私には、花粉症(かふんしょう)なんてずっと他人事(ひとごと)のようにしか思えなかった。だって、全然(ぜんぜん)平気(へいき)だったんだから。ついこの間(あいだ)までは――。
 それは突然(とつぜん)やって来た。鼻がムズムズしてきて、くしゃみが止まらない。目もしょぼしょぼして…。友達に話したら、嬉(うれ)しそうな顔をして、
「花粉デビューしたんだ。これで、あなたも私たちのお仲間(なかま)ね。これからは何でも相談(そうだん)して。先輩(せんぱい)として、いろいろアドバイスしてあげる」
「そう…、ありがとう。何か、助(たす)かるわ――」
 私は、何か変な感じだった。嬉(うれ)しいような…、悲(かな)しいような…。
 別の友達に花粉症になったって話したら、その娘(こ)は心配(しんぱい)そうな顔をして、
「そうなんだ。大変(たいへん)ね。じゃあ、しばらくは誘(さそ)わない方がいいよね」
 何でよ。花粉症になったら、遊(あそ)びに出かけちゃいけないの? 私は、何だか仲間はずれにされたような気分(きぶん)。そう言えば、この娘(こ)って花粉症じゃなかったわ。
 私はにっこり微笑(ほほえ)んで、その子に言ってやったわ。
「そうね。でも、大丈夫(だいじょうぶ)よ。あなたも、すぐに私たちのお仲間になるんだから」
<つぶやき>日頃(ひごろ)から気をつけた方がいいですよ。今は大丈夫でも、いずれあなたも…。
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0332「君はだれ?」

2018-09-27 18:40:03 | ブログ短編

 雄介(ゆうすけ)は窓(まど)を叩(たた)く音で目を覚(さ)ました。どうやら勉強(べんきょう)の途中(とちゅう)で寝(ね)てしまったようだ。また、窓を叩く音。雄介は首(くび)を傾(かし)げならがカーテンを開けてみる。すると、窓の外のベランダに女の子が一人。その女の子はにっこり笑(わら)うと、ここを開けてという仕草(しぐさ)。
 雄介は驚(おどろ)いた。でも、ちょっと可愛(かわい)い子だったので、思わず窓を開けてしまった。これは、男の性(さが)というやつだ。女の子は部屋(へや)へ飛(と)び込むと言った。
「灯(あか)りが見えたから来ちゃった。ねえ、ここにいてもいい?」
 雄介は一瞬(いっしゅん)言葉(ことば)を失った。何をどう言ったらいいのか思いつかない。女の子はベッドの上に飛び乗ると、楽しそうに飛びはねた。雄介は何とか彼女を落ち着かせると、
「君(きみ)はだれ? どうやって入ったんだよ。ここは、三階だぞ」
 女の子は言った。「あたし、龍子(りょうこ)。しばらくお世話(せわ)になるわね。よろしく」
「いやいやいやいや、それはダメでしょ。そんなこと、家族(かぞく)にバレたら――」
「気をつかわなくてもいいのよ。あたし、寝る場所(ばしょ)があれば、それでいいんだから」
「ここで寝るの? いやいや、それはまずいしょ。母(かあ)さんに見つかったら――」
「いいじゃない。あたし、全然(ぜんぜん)平気(へいき)だから」龍子は雄介の顔をしげしげと見つめてから、満面(まんめん)の笑(え)みで言った。「人間とおしゃべりするなんて三百年ぶりよ。何か、楽しい!」
<つぶやき>彼女は何者(なにもの)なのでしょう? どうしてここに来たのか、想像(そうぞう)してみて下さい。
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0331「スマちゃん」

2018-09-26 18:38:51 | ブログ短編

 流行(はやり)に乗り遅(おく)れまいと佳代(かよ)はスマートフォンを購入(こうにゅう)した。これで友達(ともだち)からバカにされることは無(な)くなるだろう。佳代は早速(さつそく)電源(でんげん)を入れて使ってみることに。CMでやってるように、スマちゃんに話しかけてみた。
「あたしのこと、好(す)き?」
 速攻(そつこう)返事(へんじ)が返ってくる。「好きって言ってほしいのか? うざい」
 佳代は一瞬(いつしゆん)言葉(ことば)を無(な)くした。まさかこんな返事(へんじ)が返ってくるなんて。気をとり直(なお)して、もう一度話しかけてみる。「今の天気(てんき)は?」
 しばらく間(ま)をおいてスマちゃんが答(こた)えた。「そんなの、空(そら)を見りゃ分かるでしょ」
 佳代は呟(つぶや)いた。「何なのよ。何でちゃんと答えてくれないの。もう、使えないヤツ」
 次の瞬間(しゅんかん)、スマートフォンがけたたましく鳴(な)り出した。そして、早口(はやくち)でしゃべり出す。
「あのさ、使えないのはアンタでしょ。何よ、しょうもない質問(しつもん)ばっかして。好きな男がいないもんだから、あたしに好きって言わせようなんて。一人でいるのがそんなに淋(さび)しいのか。ハハハハ、いい年した女が笑(わら)っちゃうわよ。これからは、気やすく話しかけないで。いい、今度しょうもない質問したら――」
「もう、どうして…。どうやって止めるのよ。こら、黙(だま)りなさい。うるさいってば――」
 佳代は必死(ひっし)になってあちこち押(お)してみた。やっと声が止まると、佳代は荒(あら)い息(いき)をつきながら、「これ、絶対(ぜったい)不良品(ふりょうひん)だわ。何で、こんなのにバカにされなきゃいけないのよ!」
<つぶやき>スマートフォンにスマちゃんと名前をつける。これは淋しい女の始まりかも。
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0330「お返し」

2018-09-25 18:41:35 | ブログ短編

 とある会社(かいしゃ)の会議室(かいぎしつ)。男性社員(しゃいん)が集まって秘密(ひみつ)の会議が開かれていた。議題(ぎだい)は、ホワイトデーのお返(かえ)しをどうするか。課長(かちょう)がまず提案(ていあん)を出した。
「今年は、みんなでお金を出しあって、不公平(ふこうへい)のないようにしたらどうだろう」
 強硬派(きょうこうは)からは、「そんなのやめましょうよ。向こうが勝手(かって)に配(くば)ってるんですよ。どういうつもりか知らないけど、知らん顔しとけばいいんですよ」
「ちょっとそれは乱暴(らんぼう)じゃないでしょうか」入社(にゅうしゃ)三年目の社員が言った。「やっぱり、ちゃんと誠意(せいい)は見せないといけないんじゃないかと…」
「お前はいいよなぁ。俺たちとは違(ちが)って、いいもんもらってんだから。こちとら、義理(ぎり)だよ、義理。それも、こんなちっちぇヤツ」
 隅(すみ)の方で黙(だま)って聞いていた係長(かかりちょう)が口を開いた。
「でも、毎年、何かしらもらえるんですよ。我々(われわれ)、中年(ちゅうねん)男性が、若(わか)い女性からプレゼントを受け取れるなんて機会(きかい)、滅多(めった)にないじゃないですか。私なんか、自分の娘(むすめ)からもそっぽを向かれて、妻(つま)からだってプレゼントのプの字も出やしない」
 会議室は静(しず)まり返った。それぞれの思いがあるようだ。ホワイトデーの習慣(しゆうかん)の波紋(はもん)は、どこまで広がっていくのか。今年も、紛糾(ふんきゆう)を極(きわ)めそうだ。
<つぶやき>ここは、お返しはしてあげた方が良いかもしれませんね。気持(きも)ちですから。
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