みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0021「漬ける女」

2017-04-11 19:34:41 | ブログ短編

 とある喫茶店(きっさてん)で、紗英(さえ)は悲しそうな顔をして、涙(なみだ)をこらえていた。そんな紗英を見て、親友の麻美(あさみ)はあきれた顔をしてささやいた。
「もう、こんなところで泣(な)かないでよ」
「だって、あの人ったら、私を捨(す)てたのよ。お前みたいな重い女とは、もう付き合えないって」紗英の目から、ひとすじ涙がこぼれた。
「もう…」麻美はハンカチを手渡して、「だからやめなって言ったじゃない」
「私、あの人のために、いろいろしてあげたのよ。それなのに、それなのに…」
「紗英はね、尽(つ)くしすぎるのよ。もっとさ、私みたいに気楽(きらく)に…」
「あの人ね、私といると、漬(つけ)け物石(いし)を抱(だ)いてるみたいだって言ったのよ」
「漬け物石? 今どき、そんなの使わないでしょ。けっこう、古風(こふう)な人だったのね」
「私もね、つい言っちゃったの。あなたみたいなフニャフニャで、野沢菜(のざわな)みたいな人…」
「へーえ、言っちゃったんだ。紗英、それでいいんだよ。あんな男なんて忘れなよ」
「私が、野沢菜って言ったから、嫌(きら)われたのよ。きっとそうよ。それで、出てけって…」
「もう。別れた男のことで、イジイジしないの。スッパリと忘(わす)れなきゃ。いいわ、私がもっといい男、見繕(みつくろ)ってあげる。そうね、歯(は)ごたえのありそうな、カブみたいな人とか…」
 紗英はすごい形相(ぎょうそう)で睨(にら)みつける。麻美は殺気(さっき)を感じて、「もう、冗談(じょうだん)だってば…」
<つぶやき>こんな一途(いちず)な人もいるんですよ。今度は素敵(すてき)な人と出会えるといいですね。
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