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奥泉光「神器 軍艦「橿原」殺人事件」

2010年02月14日 | あ行の作家

上巻の帯
昭和20年、軍艦内で起きた変死事件の謎を解く鍵は平成の日本に隠されていた
ミステリー、軍記、そして純文学
ジャンルを超えた大作、刊行!

下巻の帯
錯乱する兵士達を襲う新たな謎
大海原を進む「橿原」の真の使命とは?
戦時下の軍艦艦底で次々と暴かれる平成・日本人の運命
壮大なドラマの完結編!


これらの文言を真に受けて読み始めたらとんでもない苦痛を味わうことになるかもしれません

奥泉さんのコアな読者でなければ完読は無理なのではないかしら
これを読もうか、と思うのなら必ず過去の作品を読んでからにしてください
少なくとも以下の3点
「グランド・ミステリー」
「新・地底旅行」
「鳥類学者のファンタジア」

いつもの如く時系列を無視した展開

鼠に姿を変えた兵士が平成の時代で花見をする
同じく鼠に姿を変えた平成の若者が「橿原」でゴムを齧っている
死んだ者達との会話
軍艦「橿原」は乗組員と死者たちを乗せて何を積んで何処へ向かうのか



上巻189頁
「橿原」で運ばれた物質とは何なのです?

頁を捲って1行目
ロンギヌスの槍だ
何です、そりゃ?
ワグナーの楽劇にも出て来るらしいんだが、世界征服ができるって槍さ


これには参りましたね~
出た!
ロンギヌス!

奥泉さんの過去の作品を読んでいないと、ここでの高揚感は味わえません


しかし小説としての面白さより
作家の日本人論、戦争論が熱く語られた作品といえると思います
戦争に負けた日本の復興
これは本物の復興といえるのだろうか
今の問題を先送りすればするほどそのツケが大きくなる



平成を見てきた兵士が語る

あそこはとても色彩が豊かでとても賑やかで、でも、ひどく寂しい場所に思えました
何もかもがすごい速度で、すいすい過ぎ去っていくんです
あらゆるものが眼にも留まらぬ速さで過ぎて行くんです
声をかけたり手を伸ばしたりする暇もなく



平成の若者が語る

生きてるってそれだけで戦争なんだよ
戦争で負けた日本の未来が贋物でいいじゃん
なにが悪いわけ?
バッタもんのブランドだって使えるし結構丈夫だし
てか、戦争がずっと続くんだったらバッタもんの方がよくね?
贋でもなんでもいいから、生きねえ?
生きてみねえ?
だったらまずオレが生きろっての
生き抜いてみろっての
オレ、生きて、そんでもって誰かに会いてえ感じがする
誰かってつまり人ってこと
人に会って一緒に生きてオレのこと話してえ
チョー話てえ
ってなんでオレ泣いてるの?




ニセモノのテンノウのモト
ニセモノのニッポンジンが生きている
戦争で負けたニッポンのヤスクニに戻るミタマなど無い
コウコクのグンジンは自らの命を捧げた戦勝国ニッポンのヤスクニに帰ることだけを願っていたのだ
だから平成のヤスクニは空っぽである

戦争反対を声高に平和運動をしている人々は本物の戦争を知らない人々である


読んで良かった
と思える本でした


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2 コメント

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Unknown (蛙と蝸牛)
2010-05-15 14:38:14
コメントありがとうございました。
「滝」は、今手に入りやすいものとしては、「北村薫のミステリー館」(新潮文庫)に所収のものかと思います
返信する
蛙と蝸牛さん (こに)
2010-05-15 22:49:26
情報
ありがとうございました

早速調べてみますね
(^^)
返信する

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