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角田光代「ツリーハウス」

2017年10月13日 | か行の作家

 

文春文庫
2014年 4月 第1刷
解説・野崎歓
477頁

 

 

東京・新宿西口の一角で中華料理店・翡翠飯店を営む藤代家
良嗣は祖父の泰造が亡くなったことで初めて家族のルーツに興味を持ちます
墓はどこにあるのか
なぜ親戚がいないのか
なぜ都心で中華料理店を開くことができたのか
夫の死により回想のスイッチが入ったらしく『帰りたい』と呟く祖母のお供をして、良嗣と叔父の太二郎は祖父と祖母が出会ったという中国は大連に旅をすることになり、一族の歴史がひもとかれていきます
英雄でも天才でも成功者でもない、ごく普通の、むしろ普通以下かもしれない無気力人間たちの物語です
けれど、藤代家は第二次大戦、引き揚げ、安保闘争、オウム真理教などに関わりがありますし、浅間山荘事件、バスジャック事件なども全く無関係でもありませんでした

 

 

 

『逃げる』ことでしか時代に抗う方法を知らなかった祖父母

祖母は語ります

生きるために逃げたけれど、今はそんな時代じゃない
逃げるってのはオイソレと受け入れることになった
それしかできないような大人になっちまった
だからあんたたちも、逃げるしかない
それは申し訳ないと思うよ
それしか教えられること、なかったんだからね

 

良嗣は考えます

今、良嗣は、自分や兄や、仕事をさぼってばかりいる父やのんきな叔父と、祖父母もそう変わらなかったのではないかと想像する
今いる場所よりもっといい場所があると信じ、深く考えずそこを目指し、けれど思い描いたようなものが手に入らず落胆を繰り返しながら、でも、今日を生きるしかない
歴史に荷担しているようで、その実、歴史に関わっている意識もなくただ時代が与える物を受け入れていく、ということだろうと良嗣は考える

 

現在の良嗣たちの旅と祖父と祖母が出会った過去の物語が並行して語られ最後には合流するスタイルが効いています
日々を暮らしている我々にもご先祖様がいて、彼らが生き抜いてくれたお蔭で今があることが感じとれます

面白かった!


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