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ナボコフ「カメラ・オブスクーラ」

2012年01月08日 | 海外の作家

 

訳・貝澤哉
光文社古典新訳文庫
2011年9月 初版第1刷発行
336頁


「ロリータ」の原型
ロシア語原典から初の翻訳


16歳の美少女・マグダの虜になった裕福な美術評論家のクレッチマー
極貧の子供時代を過ごしたマグダはクレッチマーの盲目的な愛を利用し、昔の恋人ホーンと共謀して彼の家庭も財産も奪い取ります


訳者の解説によれば
本作のテーマは「見る」「見えない」
クレッチマーの仕事は絵画を「見る」こと
ホーンの仕事も風刺漫画家で視覚的な職業に携わっている
マグダはモデルや女優として「見られる」ことに執着する
クレッチマーとマグダの出会った場所は映画館
マグダとホーンの裏切りに気づいたクレッチマーは自動車事故を起こし失明、「見えなく」なってしまう
山荘でマグダの介護を受けるものの、じつはホーンが秘かに同居していることが「見えない」
カメラ・オブスクーラの意味はラテン語で「暗い部屋」を意味する写真機の原型となった光学的な視覚装置で、投影された風景や事物はあくまで暗闇に浮かんだ虚像でしかない
クレッチマーはマグダに魅入られたその瞬間から闇の中で視力を失っており初めから何も見えていなかった

マグダと出会った映画館の暗闇から本物の暗闇へ転落していくクレッチマーを冷酷に描いています
また、悪女物のサスペンスとしても楽しく読めます

ロシア人特有の長くて覚えにくい名前の登場人物も少なく、読みやすい作品でした

 

 


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