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島田雅彦「徒然王子」

2010年01月12日 | さ行の作家
ユーラシア大陸の東の際の日昇るところ、太平洋が果てる西の際の日沈むところ
一人の悩める王子がいた

テツヒト王子は神話の時代から続く王家の末裔だが首都の森の邸に半ば幽閉状態で暮らしていた
権力者たちからはないがしろにされ、国民からは、いてもいなくても同じといわれ、妃も恋人もおらず、前例を踏襲するだけの日常に甘んじていた
誰にも意味を理解出来ない儀式を行い、外国からの賓客を接待するのが王子の主な仕事だった


不眠に悩まされ、憂鬱な日々を過ごす王子
自分はこのままで良いのだろうか
私設雑用係(元お笑い芸人)のコレミツを伴い宮廷を夜逃げし世捨て人やホープレス・ピープルとの触れ合いを通して裏側の世界を知る
しかし侍従ホソダに所在を掴まれ無理矢理宮廷に戻されそうになる(元外交官ホソダにとっては外国との折衝に利用できる王族が必要なだけ)
そんな王子をホープレス・タウンの人々が力を合わせ山奥に逃がしてくれ、そこに現れたのがツル仙人(ドラゴンボール・カメ仙人の兄弟か?)
王子を前世を巡る旅に誘う
紀元前の中国、秦の始皇帝に献上する不老不死の薬を求めて東へ船出する男
源平合戦、壇ノ浦の戦いが終わり平家の落人狩を仰せつかった男
戦国時代、キリスト教布教のため日の本の国にやってきたスペイン人
伊勢御蔭参りが大流行の天保年間、上方から江戸へ向かう遊び人
4度の前世を経験した王子が現世に戻ったときには既に16年の歳月が過ぎていた
前世での王子は、確かに一生懸命生きた、しかし何を為したのか

前世で何一つ達成できなかった思いを胸に王子は現世に戻ってこの国を立て直すことが出来たのか

この国はどこへ向かうのか?
それはこれから生れてくる者が決めることだが、歴史をないがしろにした者は歴史に復讐されるだろう



現在の政治経済問題、若者の就職問題、格差社会問題など明るい話題はほとんどないのに重たく暗い作品になっていないんですね
前世から続くコレミツとの腐れ縁も楽しいです


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