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梨木香歩「村田エフェンディ滞土録」

2010年08月26日 | な行の作家

19世紀末
考古学者・村田のトルコ留学の日々と帰国後の暮らし

下宿の英国人の女主人・ディクソン夫人、下宿人のギリシャ人のディミィトリス、ドイツ人のオットー、下働きのムハンマド、ムハンマドが通りで拾った鸚鵡
様々な人種が行き交うトルコ・スタンブールでの驚きの連続
国家、宗教、民族、戦争などについて熱く語り合い、人間と人間として友情を育んだ青春の日々

国の命令により志半ばで帰国した村田は、自分が日本で置かれている状況に疑問と不満を持ち始め、スタンブールでの日々を懐かしく思い出す
しかし、トルコ革命、第一次大戦など世界の情勢は村田に再びトルコに向かうことを許さない

長い間連絡が途絶えていたディクソン夫人から久し振りに来た手紙には、戦争に巻き込まれた懐かしい友人達の死の詳細が書かれていた

ディミィトリスは村田に語る
「私は人間だ。およそ人間に関わることで私に無縁な事は一つもない」
この台詞は繰り返し登場します
この物語のキーになっていますね


英国に戻るディクソン夫人から村田宛に船便で送られてきた鸚鵡
ディクソン夫人の手紙によると、鸚鵡はもうしゃべらない、と書いてあるのですが村田が話しかけると
-友よ
と甲高く叫びます
今は亡き、国を異にする友人達、懐かしい皆からの呼びかけのようだった
一瞬にしてディクソン夫人の下宿の居間の空気が村田を取り囲んだ

感涙でした



村田が鸚鵡を受け取ったのは「家守綺譚」のあの家です


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