読書と映画とガーデニング

読書&映画&ガーデニング&落語&野球などなど、毎日アクティブに楽しく暮らしたいですね!

吉村昭「破獄」

2011年12月24日 | や・ら・わ行の作家

新潮文庫
1986年 12月 発行
2009年 6月 49刷
解説・磯田光一
360頁



主人公・佐久間清太郎のモデルは実在した男性「容易ならざる特定不良囚」と呼ばれたY.Sです

2011年9月に訪れた博物館網走監獄で撮った写真のこの人です!



この後、天窓のガラスを頭でぶち割って外へ出たのです



昭和11年青森刑務所脱獄
昭和17年秋田刑務所脱獄
昭和19年網走刑務所脱獄
昭和22年札幌刑務所脱獄
犯罪史上未曾有の四度の脱獄を繰り返した後
昭和23年進駐軍の命令により府中刑務所に収容
昭和31年には仮出所
昭和53年71歳で亡くなりました

単なる脱獄の話ではなく、戦中から戦後にかけての刑務所、特に網走刑務所の歴史や北海道開拓についても詳しく書かれています
戦争中、日本全体が食糧難、物資不足に苦しんでいましたが、それは刑務所も例外ではなかったのです

佐久間は何故脱獄を繰り返したのか
その理由そのものには大きな説得力はありません
北国の冬の苛烈な寒さや扱いの酷さに加え、生い立ちが彼の精神を歪めてしまったこともあるようです
府中刑務所所長・鈴江の佐久間に対する温情溢れる扱いが彼の心に変化をもたらし、最早脱獄することはありませんでした
鈴江の問い「なぜ逃げんのだね。その気になれば、いつでも逃げられるだろう」に対し佐久間は答えます「もう疲れましたよ」
脱獄を繰り返した人生に疲れたのでしょうか
敢えて脱獄に挑むような過酷な条件が取り払われた刑務所生活に人生の落ち着きを見出したのでしょうか


絶対不可能と思われていた独房からの脱獄を果たすために彼が長いスパンで計画を練り、看守との心理戦を繰り広げ、着実に目的に向かうあたりはスリル満点
しかし、昭和の歴史と重ね合わせて読むとまた違う一面が見えてきます
物語は淡々と進むようで臨場感にあふれ、博物館網走監獄を思い出しつつ一気読みしてしまいました




コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 西加奈子「きりこについて」 | トップ | レナード・ムロディナウ「た... »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (wind socks)
2011-12-26 10:08:41
「破獄」にトラックバックありがとうございました。今年網走に行かれたんですね。私も一度行きたいと思っています。来年を予定していますが、果たしてどうなりますか。今後ともよろしくお願いいたします。
wind socksさん (こに)
2011-12-27 17:11:55
訪問&コメントありがとうございます
網走、是非訪ねてください
博物館をぐるりと歩くと吉村昭さんの書かれている内容がより理解出来ると思います
よくも、このような所から脱獄したものです
MIP並みです ^^;

コメントを投稿

や・ら・わ行の作家」カテゴリの最新記事