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皆川博子「ゆめこ縮緬」

2013年08月28日 | ま行の作家

 

集英社文庫

2001年4月 第1刷

解説・葉山響

263頁

 

大正から昭和初期を舞台に官能と禁忌の中に咲く、美しくて怖い物語8編

 

 

「文月の使者」

中州の煙草屋で書生が体験する異様な出来事

生者と死者が入り乱れ、どちらが生でどちらが死なのか分らなくなってしまう

 

「影つづれ」

玉藻前の伝説を基にした怪異譚

泊まる予定のなかった宿でのひと晩の体験が思い出させた幼少の頃の出来事

 

「桔梗闇」

見世物小屋での記憶を父の後添いに重ね合わせる少年

 

「花溶け」

少女の心のままで嫁いだ女性の見ているものは白昼夢か現実か

 

「玉虫抄」

医家に婿入りし一生懸命に働き家族を守ってきた、東北の農家の三男だった男性

彼が避暑地で出会った女性に産ませた娘

しかしその娘は父からも母からも存在しない者として位置づけられていた

 

「胡蝶塚」

軍人の家に生まれた少年が体験する家族の歪み

尊敬する異母兄の自殺に秘められたエロス

 

「青火童女」

売れない挿絵画家の元に舞い込んできた仕事は、郊外にひっそりと建つお屋敷に住み込んで依頼主の希望に応じた絵を描くこと

 

「ゆめこ縮緬」

幼い頃、母の実家である中州の『蛇屋』に預けられていた女性の回顧録のような話

冒頭の「文月の使者」の中州が降り続く雨で湿気たっぷりなのに、こちらはむしろ乾いており最後には『火』で終わる

 

 

選び抜かれた言葉の連続に、暑さも雑音も全て忘れ物語世界に引っぱりこまれるのだけれど

読み終われば全部夢だったようなボンヤリとした感覚

 

まことに贅沢な短篇集です

 

 


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