訳・松本健二
白水社 エクス・リブリス
2013年9月 発行
201頁
日本人には大変親しみの持てるタイトルですね
著者・サンブラはチリ・サンディアゴ生まれ
現在もその地に暮らしています
日本文学に関心が強く、芥川龍之介、夏目漱石、三島由紀夫、大江健三郎、安部公房、谷崎潤一郎あたりが好きな作家だそうです
ラテンアメリカらしからぬ淡々と繊細に描かれる人間関係
タイトルにもなっている植物に通じるものがあります
「盆栽」
サンディアゴに住む作家志望の青年フリオにはエミリアという恋人がいた
冒頭で彼女が30歳で亡くなることが明かされ、物語がエミリアの死をめぐる前後譚らしいことがわかります
章ごとに登場する二人の関係者たちは皆淡白な人間関係の中で孤独を抱えて生きています
「木々の私生活」
大学で教えるかたわら小説を書いているフリアン
離婚歴のあるベロニカに恋をし結婚、その娘ダニエラと3人で暮らしている
ベロニカが職場からなかなか戻らない夜、ダニエラに自作の童話を読み聞かせながら過去をとりとめもなく回想していくフリアン
意識の流れがあちこち脱線するのをフリアン自作の童話「木々の私生活」が絶妙に繋ぎとめています
サンブラのエッセイによれば
書くことは盆栽の世話をするのと同じだ
枝を摘み取ってゆき、すでにそこに隠されていた形を浮かび上がらせるのだ
とのこと
哲学的、宗教的な雰囲気もあるでしょうか
始めは、一風変わった文体に面食らいますが、すぐ慣れるでしょう
知らぬ間にサンブラの世界に惹きこまれていました
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