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植松三十里「咸臨丸、サンフランシスコにて」

2017年12月19日 | あ行の作家

 

角川文庫
2010年 4月 初版発行
解説・縄田一男
286頁 

 

安政7年、条約批准のため遣米使節団が江戸湾を出港
勝海舟が艦長を務める咸臨丸には瀬戸内の塩飽衆と呼ばれる水夫たちが乗り組んでいました
距離の短さで北極圏に近い大圏航路を選んだ咸臨丸は悪天候に悩まされ、劣悪な環境の住居スペースで暮らす水夫たちの間には病気が蔓延します
アメリカ人水夫との対立、仕官・中浜万次郎への反発など不穏な空気の中、無事サンフランシスコに到着した彼らには思わぬ運命が待ち受けていました 

咸臨丸について日本史で学んだのは勝海舟、中浜万次郎ら遣米使節団を乗せ条約批准のためサンフランシスコに向かったということくらい
考えてみれば艦長や仕官だけでは船は動きませんよね
総勢105人の乗船者のうち68人が水夫で、その全員が狭い水夫部屋で寝起きしており熱病に冒されて船上で亡くなる者もいました
無事、サンフランシスコに到着したものの入院を余儀なくされ、咸臨丸の帰国までに回復が望めない者は異国の地に残されることになります
本作は日本から遠く離れたサンフランシスコに残された水夫たちを主に描かれた物語で、世界地図を思い浮かべつつ「壮大だな~」と思いながら読みました
今のように飛行機でひとっ飛びというわけにもいかない時代、残された日本人水夫たちへの望郷の思いはどれほどのものだったでしょう
キリスト教で埋葬された仲間の成仏を疑う、など文化や宗教の違いにとまどいながらも帰国の日を待ち望みながら暮らす日々
サンフランシスコでの暮らしに順応する者もあれば強い望郷の念に駆られ苦しむ者も現れ、日本へ帰るという願いにまとまっていた水夫たちが、時が過ぎるにつれ見ている将来が違ってくるのは仕方のないことでしょうね 

大きな時代の変化の中を生きた強い日本人たちに励まされます

 

書下ろし後日譚「咸臨丸のかたりべ」
同時収録された本作が「咸臨丸、サンフランシスコにて」に彩りを添えてくれています
咸臨丸がサンフランシスコに入港してから100年以上の後、当地で亡くなった日本人水夫たちの墓をめぐる物語

 

 

歴史上のヒーローの下にあった名も無い人々を描いた秀作です

 

 


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