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荻原浩「誰にも書ける一冊の本」

2013年12月11日 | あ行の作家

 

光文社文庫
2013年9月 初版第1刷発行
解説・重里徹也
144頁

 

 

2011年6月
光文社から「テーマ競作 小説 死様」と題して刊行された単行本6冊の中の1冊です

 

1957年、北海道生まれの主人公「私」
大学進学を機に上京
広告代理店に勤務した後、32歳で独立、バツイチ、娘が一人いるが元妻が養育している
今は小規模な広告会社を経営
40歳で小さな文学賞を受賞し、小説家としてデビューするも2冊の本を出しただけで、なかなか3作目は出せないでいる
入院している父親の容体が悪化し、故郷・函館に戻った「私」は母親から手書きの原稿用紙の束を渡される
それは父親の自伝的な手記で、気が進まないながらも読み始めた「私」は死の床にある父親の人生を辿りつつ、自分自身の来し方を振り返る

 

父と子
大抵の男の子は年を重ねると外見が父親によく似てきます
さらに生き方までも
眼には見えない何かが親から子へ受け継がれていくのは確かなことです

 

父親の手記からは気骨のある生き方が伝わってきます
初めのうちは手記の内容が自分が知っていた父親と結びつかず、創造されたものだと思っていた「私」ですが、どうやら真実だということが分ってからは、疎遠といっても良かった父親に心の中で話しかけたりし始めます
「私」が全く知らなかった父がそこにはいました
人生の節目節目に、父親が考えたこと、実行したことが今の自分となんと似通っていることか

 

父親の葬儀の日
雪で滑りやすい函館の坂道を上ってくる会葬者たち
父親の手記を読み終えていた「私」には彼らが誰であるのか、すぐ分かるのでした

 

 

『死』という重いテーマを扱っていますが
荻原さんの優しく親しみやすい筆致に、最後には穏やかで温かな思いに心がいっぱいになりました

 


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