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梨木香歩「ペンキや」

2010年11月05日 | な行の作家

絵・出久根育
理論社
2005年12月 第3刷発行


喜びや悲しみ、浮き浮きした気持ちや寂しい気持ち、怒りやあきらめ、みんな入った「ユトリロの白」を塗りつづけたある職人の物語

心温まるお話です

塗装店でぺんきや見習いとして働いているしんや
お客のもっとも望む色を探し出し、人々をしあわせにするのがペンキやの仕事

しんやが産まれる前にフランスで心臓麻痺で亡くなった父
父は優れたペンキやだった
自分の仕事に自信を失いかけていたしんやは、母から、父との出会い、父の仕事ぶりを聞いて父のお墓を捜しにフランスに行くことにします

手掛かりは、父のお墓には白いペンキで「不世出のペンキや ここに眠る」と書いてあるということだけ

父のお墓を見つけることは出来なかったけれど、生前の父を知っている人から色々な話を聞くことができました

日本に戻ったしんやは、やがてペンキやとして才能を開花させ、愛する人と出会い息子も生まれます
しかし、しんやも心臓麻痺で突然の死を迎えてしまいます

しんやのお墓にも白いペンキで「不世出のペンキや ここに眠る」と書かれているのですが、その文字が見えるのはしんやの妻だけ
夫を愛していた妻にだけ読める文字だったのです
だからフランスでしんやは父のお墓を見つけられなかったのです


描かれている死は次の世代に繋がる死

不世出のペンキや
賞賛の的になるでもなく、自分の名誉や地位のためでもなく、仕事を依頼してきた人に喜んでもらうために確かな仕事を成し遂げた人間
そして、たったひとり、この世で愛する人と、残した命
命への賛歌を感じさせます


出久根さんの絵
人間の描き方は好みではありませんが、物語に合わせた見事な色使いは素晴らしいです


民事再生申立をおこなった理論社
再建の後、このような良い本をもう一度出版して欲しいものです

 

 


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