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映画・ふたつの名前を持つ少年

2015年08月29日 | 映画(海外)

 

原題 RUN BOY RUN
2013年 ドイツ、フランス

 

 

実話を基にした小説ウーリー・オルレブ「走れ、走って逃げろ」の映画化です

 

第二次大戦時、8歳のユダヤ人少年が身分と名前を偽り、ポーランド人孤児としてナチス・ドイツの手を逃れ、たった一人で終戦までの3年間を生き抜いたという物語

 

映画は1942年の冬、ワルシャワのユダヤ人強制居住区・ゲットーから逃亡した8歳のスルリック(双子のアンジェイ・トチカとカミル・トチカが動と静に応じて演じ分けています)が極寒の雪の中をひとり歩くシーンから始まります
飢えと寒さで凍死寸前だったスルリックを助けてくれたのは夫と二人の息子がパルチザンとしてナチスと戦っているヘルマン夫人(ジャネット・ハイン)でした
父親と別れる際に約束した「ユダヤの名前を捨てる」に従い、自分はポーランド人孤児のユレク・スタニャクと名乗りますヘルマン夫人はユレクがユダヤ人であることをすぐ見抜きますが事情を察し匿ってくれた上、ユレクの偽の身の上話を作ったりキリスト教の祈りを教え込んでくれます
束の間の穏やかな日々に笑顔を取り戻すユレクでしたが、雪の上にゲシュタボの足跡を発見したことで捜索の手が伸びていることを知り家を出なければならなくなります

たった8歳の子供なのに…
それほどにユダヤ人を捕らえねばならなかったのでしょうか
執拗なユダヤ狩りは狂気以外の何ものでもありません
ヘルマン夫人がくれた十字架のネックレスをお守りに家々を訪ね、偽りの身の上話を語って食べ物をもらい、気に入られた農場で働くことになりますが、ユダヤ人であることが知れて、またそこを出ることに…
繰り返しユレクを襲う苛酷な現実は悲惨そのものですが、やがて戦争が終り、ユレクがスルリックに戻る日がやってきます

 

映画の終り近くでユルクが父親と別れるシーンが流れます-時系列通りなら冒頭に流れるはずの場面です-
この、ユルクの苛酷な旅の出発点は本当に衝撃的です
父親に最後に言われた言葉があったから、ユルクは強い意志で生きて生きて生き抜くことが出来たのです
それと、忘れてはならないのは自らの命の危険も顧みず、多くの人々がユルクを守ってくれたことです
SSの将校(ライナー・ボック)ですら意志の強いユルクを気に入って見逃してくれたところがあったりするのです

 

最後に流れるのはスルリックのモデルとなったヨラム・フリードマンがイスラエルの海岸で家族と過ごす様子です

希望を失わず生き抜いた少年の物語に感動する、などという美辞麗句では終わらない、とてもとても重いものを訴えてくる映画でした

 

 


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