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ウィラ・キャザー「マイ・アントニーア」

2012年09月18日 | 海外の作家

 

佐藤宏子訳

みすず書房

2010年11月 第1刷発行

2011年10月 第2刷発行

 

アメリカで1918年に発表されて以来、国民的文学として長く読み継がれている名作

1950年代に日本語訳は出ていたらしいのですが殆ど一般には入手困難

それを長く残念に思っていた佐藤宏子さんによる新訳でようやく2010年になって本書が出版されました

 

作者、ウィラ・キャザーの作風はフィッツジェラルドなどに影響を与えたそうです

 

 

舞台は19世紀後半のアメリカ中西部

語り手は、ジム・バーデンという男性

ジムと同じネブラスカ州の田舎町で成長した作者らしき人物が、たまたま中西部を横断する列車でジムと乗り合わせ、彼らの子供時代の記憶を語り合う

その中で最も大きな意味を持つのがボヘミアからの移民の娘、アントニーア

ジムが記憶を辿りながらアントーニアについて思い浮かぶことを書き留めたという形をとっています

 

両親が亡くなり祖父母の元で暮らす為列車でネブラスカ州にやってきたジム

同じ列車に乗り合わせたのが、ボヘミアからやってきたアントニーア一家で、ジムとアントニーアは同じ荷馬車の荷台に乗せられてこれから暮らす場所へと運ばれたのです

 

 

大学進学のため故郷を出て都会で弁護士になり成功、アメリカンドリームを実現したジムは、40代半ばで感じ始めた成功の味気無さ虚しさを感じ始め、20年の空白の後、アントニーアを探し出し旧交を温めます

アントニーアの夫も子供たちもジムを快く受け入れてくれます

アントニーアが幼馴染だったジムとの交友を事細かに話してあり、彼らにとってもジムは大切な友人という認識だったのです

幼い頃から働き続け、外見の美しさは失っているものの、子供や家畜、農作物など「生命」を育むことに情熱を持つ彼女の生き方にこそ価値があるのではないかと考えるジムなのでした

 

貧しい暮らし、父の自殺、結婚まで考えた恋人の不実、私生児の出産という苦境を乗り越え、農婦として、11人の子供の母親として充足した生活を送るアントニーアの人生は感動的です

 

 

内容も作風も違いますが、昔々、夏休みに「赤毛のアン」「怒りの葡萄」を読んだ後の感動を思い出しました

ジムが東部へ旅立つ直前にアントニーアと見た夕暮れの景色の描写が素晴らしく、日本とはスケールの違う、北米大陸西部の広大な自然を実際に見てみたいものだと思いました

 

 

 

畑を超えて家路についたとき、太陽が沈み、大きな金色の球体が低く西の空に掛かっていた

同時に、東の空には月が昇ってきた

車輪のように大きく、淡い銀色に薔薇色の縞模様があり、シャボン玉か幻の月のように儚げだった

五分、おそらく十分の間、二つの発光体は平らかな大地を挟み、世界の反対側に位置して対峙していた

その不思議な光の中で、小さな木、麦藁の山、向日葵の茎、ハツユキソウの茂みの一つ一つが天に向かって背伸びをしているようで、畑の土くれや畔がくっきりと浮かび上がって見えた

ぼくは大地の魅力を感じた

夜の帳が下りる頃に、畑から立ち上がる厳粛な魔力だった

ぼくはもう一度幼い少年に戻り、ぼくの人生がそこで終わることを願っていた

ぼくたちは、畑の端に着いた

そこは、ぼくたちの道が分かれるところだった

 

 

 

 


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2 コメント

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知らない女流作家さんです (あんぶろじぁ)
2012-09-19 09:24:37
こんにちは
この作家は知りませんでした
本日はお休みなので丸善かジュンク堂でなにか原著の作品があればチェックしてみます
"怒りの葡萄"は翻訳を読んでから原著を買い込んでますが未読ですし"赤毛のアン"もその昔ミア・フォロー(←うろ覚え)主演の映画を観てからパフィン・ブックスのを手に入れて久しいですが冒頭だけかじって放置してます(泪)


どうにかしなくては(笑)


んでは


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あんぶろじゃさん (こに)
2012-09-20 15:29:21
この方の原書はどうでしょうか。
日本語訳でも相当冷遇されていたみたいです。
いっそ、個人輸入が良いかもしれませんね。
返信する

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