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ベルンハルト・シュリンク「夏の嘘」

2013年09月02日 | 海外の作家

 

訳・松永美穂

新潮クレスト・ブックス

2013年2月 発行

293頁

 

 

あのとき、どうして本当のことが言えなかったのだろう
嘘と秘密が浮き彫りにする秘められた思い
『朗読者』の名手による10年ぶりの短編集

 

「シーズンオフ」

シーズンオフのリゾート地で出会った男女

裕福な女性とそうでもない男性の短い期間に燃え上がる恋

休暇が終りそれぞれの住む街に戻る

 

帰宅した男性は相手に自分のことは殆ど話していなかったことに気づきます

隠していたわけではない、と嘯くのですが『身分の違い』をしっかりと意識していたようです

お金に困ったことの無い女性は相手のそんな部分には全く配慮がありませんでした

 

 

「バーデンバーデンの夜」

恋人とは違う女性を伴い出張先に出かけた男性

帰宅後、恋人の追及に正直に話すものの理解は得られない

 

出張先で女性との間には何もなかったし恋愛感情があるわけでもないのですが、その女性を同伴したことは恋人には内緒にしており、色々と恋人から質問されるに従いボロが出てしまい、その後はいくら真実を語っても全て嘘と取られてしまいます

 

 

「森のなかの家」

人里離れた森の奥に暮らす人気女性作家とその夫

夫も作家ではあるが、今は全く執筆活動をしていない

 

妻が文学賞を受賞したことを知らせまいと画策する夫

妻が森を出ていくのではないか、妄想にとらわれていたようです

まるでストーカーですが本人はあくまで自分の思い描く日常が一番と考えています

 

 

「真夜中の他人」

飛行機に乗り合わせた男性から聞かされたなんとも奇妙な話

心の奥では関わらない方が良いと思うのだけれど、何故か関わってしまう

 

男性から何かしら害を被るのではないか、気が気ではありません

被害があったといえばあった、なかったといえばなかった

微妙な心理合戦です

 

 

「最後の夏」

癌を患い余命僅かの元大学教授と妻、子どもや孫たちが過ごす夏休み

 

自分が癌であることを妻には内緒にしており、それを知った妻は激怒して家に戻ってしまいます

夫婦間でそんな大事なことを内緒にしていれば妻の激怒は当然だとは思いますが

それは不器用な夫の優しさだったのかもしれません

納得は出来ませんが

 

 

「リューゲン島のヨハン・セバスティアン・バッハ」

良い関係にはない父と息子

改善を模索する息子は父を音楽フェスティバルに誘う

 

会話も途切れがちな父と息子

互いに愛情はあるものの、あと一歩というところで、どうしても距離が縮まらない

 

 

「南への旅」

老人施設に暮らす女性

かつての恋人が自分を捨てたと思っていたのだが、全くの自分の記憶違いだったことを知る

 

記憶を書き替えてかつての恋人を恨んでいた女性

今さら後悔でもなく施設でのボンヤリとした日々を送ります

 

 

 

情けない男性ばかりが登場します

はっきりしない

スマートじゃない

優柔不断

逆に女性は『ハンサム・ウーマン』で積極的です

 

世の男性は本書に登場する男性のようにいつも不安を抱えて一歩間違えばバランスを崩しそうな危うい状況で暮らしているのでしょうか

女性は、それを知らないまま安定した生活を送れていると思っているのかもしれません

 

全編、余韻を残して終わっており、主人公たちのその後がどうなっていくのか想像をかき立てられます

 

 

 


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