ハヤカワ文庫
2012年4月 発行
解説・大矢博子
342頁
江戸後期、日蘭交流に身を尽くした姉妹の物語
主な舞台は江戸
江戸参府のオランダ人商館長(カピタン)の宿「長崎屋」の娘、るんと美鶴
シーボルト事件の史実を題材に二人の恋模様と生きざまを描いています
二人それぞれの想い人も父親も、シーボルト事件の中で災禍に遭います
普通の女性ならば、自分の運命に嘆き悲しむところでしょうが二人は、そんな中でも自分たちの役割を全うしようとします
間宮林蔵、遠山金四郎という誰もが知っている人物の配置もお見事
ラスト近く
るいは間宮林蔵と語らいます
「正直に申しますと、長崎屋を騒動に巻き込んだシーボルト様や間宮様をお恨みいたしました。ですが、シーボルト様はこの国のことを向うに広めようとなされ、間宮様は海の向こうのことをこの国のひとびとに知らせようとなされただけです。おふたりともお役目を果たされました。長崎屋はおふたりを会わせるのが役目だったのだ、と思います」
「そうか、わしもシーボルトもそれぞれの役目を果たしたか」
殺人事件や謎の入れ墨集団、大火で行方不明になったはずの少女・妙心尼の悲しみを織り交ぜたミステリーの部分も楽しめました
主人公たちの真っ直ぐで凛とした生き方は葉室さんの作品の基本です
吉村昭さんの「ふぉん・しいほるとの娘」「間宮林蔵」を早いところ読まなくては!
余談
「カピタン」と聞くと、昔プレステで遊んだ「ジャンピングフラッシュ」のキャラ「カピタン・スズーキ」が思い出されて仕方ありません…
あのキャラ、変ちくりんで面白かったなぁ
十分おもしろかったのですが、その後いろいろ読むうちに、もっと好きになって来まして、只今、ハマっているという状態です。
主人公の真っ直ぐで凛とした生き方。魅力はまさにそこですよね。
時代小説は勉強にもなってよろしい。
全部の作家さんというわけにはいかないので、取敢えず葉室さん、藤沢さん、山本一力さんといったところを読んでいこうと思っています。
日本人の変わらず底流に流れるものが共感を呼ぶのでしょうね。