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小沼丹「村のエトランジェ」

2010年09月02日 | あ行の作家

1954年に発表された作品集
漱石の時代の作品か、と思わせる古臭い宛字、例えば『蹌踉く・よろめく』『心算り・こころづもり』、が多く、漢和辞典片手に読みました


「紅い花」
戦争の始まる3年ほど前
田園地帯にポツンと建つ小屋で暮らす多情な女と詩人
詩人は自死、女は何処かへ行方を晦ます
戦争が終わり小屋を壊すことになったのだが屋根裏からとんでも無いものが見つかる

「汽船」
学生時代、英語を教わったアメリカ人女性教師との思い出
銀髪の教師に向かって『わあっ、凄い婆さんだなあ』
-貴女は何歳であるか?
-何歳と思うか?
-80歳である

英会話を日本語に『直訳』しているところが可笑しいです
当時はこれが普通だったのでしょう

「バルセロナの書盗」
1840年スペイン・バルセロナ
珍本収集に執着する男たちが次々と不審死を遂げる
殺人犯として捕らえられた男が最期に口にした言葉とは

「白い機影」
床屋で一緒になったことから付き合いが始まった画家
人妻に翻弄された画家が服毒自殺する
防空壕から幾度となく見上げた敵機の機影
一瞬先、明日は無いという怖しさ
戦時下の暮らしでは眼前の一瞬が重要なのである

「登仙譚」
五穀を喰らわず松葉を食べ修行を続ければ仙人になれると信じている法師
3年に渡る修行を終え、いよいよ登仙の日を迎えた
弟子や近在の住人が見守る中、法師は空に向かって飛び出す

「白孔雀のいるホテル」
避暑地でひと夏だけ管理人を勤めた宿屋での出来事
勉学目的の男、客第一号
駆け落ちの男女、強かな女と気弱な男、客第二号
大きな鞄を持ち、夜毎オルゴールを聞かせてくれた男、客第三号
ひと夏の客はこの4人だけ
宿屋の持ち主の夢は宿屋であげた利益を元に白いホテルを作ること
いつになるのかわからないけれど、やがていつかは夢は現実のものになるだろう

「ニコデモ」
エルサレムの資産家で議員でもあるニコデモが巷の噂を聞いて興味を抱き一度だけ会ったイエス・キリスト
客観的に見て、とても神とは呼べないただの田舎者だったが、その夜、イエスは確かにニコデモの『師』であった

「村のエトランジェ」
疎開先の田舎で毎日小さな冒険や悪戯に明け暮れる二人の少年
やはり東京から疎開してきた美しい姉妹と詩人の三角関係
戦争が終わった秋
大雨で増水した川原で少年が見たものは
-あれは本当だったろうか? センベイも見ただろうか? あれは本当だ。そして、センベイも見たに違いない-

間もなく東京に戻る少年はエトランジジェの一人に過ぎなかった


詩的な文章にユーモアとペーソスが溢れています


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