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カート・ヴォネガット・ジュニア「スローターハウス5」

2010年11月11日 | 海外の作家

早川書房
訳・伊藤典夫
1978年12月 発行
2010年4月 25刷
281頁


作中、しつこくしつこく繰り返される
そういうものだ
So it goes.
ヴォネガットだからこその言葉です
誰かに、知ったような顔で言われたらとても不愉快な言葉です

第二次大戦中、旧東ドイツ・ドレスデン無差別爆撃を体験したヴォネガットの半自伝的小説
私たち日本人は広島、長崎、東京大空襲などについては学校で詳しく学びますがドイツやイタリアの受けた爆撃については殆ど教えられません
ドレスデン無差別爆撃では本書中、広島を上回る規模、という表現が使われているように、13万人を超える人々が亡くなりました


ストーリーは主人公が過去や未来を行き来し、四次元の世界を生きるトラルファマードール星人に拉致され、観察される、というSFっぽいものですが、その中にヴォネガット自身の戦争体験や無意味な大量殺戮、反戦への思い、死生観などを盛りこんでいます

そういうものだ
という言葉でしか自分を納得させられない不条理な世界
今も世界のどこかで戦争は続いています

それは
人間の死というのは、ただ一瞬の出来事に過ぎず、別の時間ではその人は元気に生きている
死は悲しむべきことではない
結局戦争はとめられないし、これからも起こるのかもしれない
全てはもう決まっているのだ
そういうトラルファマドール的、四次元的な考えにおいてはごく当たり前のことなのかもしれません

 

 


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