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池澤夏樹「双頭の船」

2013年09月21日 | あ行の作家

 

新潮社
2013年2月 発行
259頁

 

 

瀬戸内の小さなフェリーに乗り込んだトモヒロ
彼の仕事は船内で中古自転車を修理すること
船は北へと向かい被災地の港に停泊する

 

 

テーマは震災後の人の生き様、有り様

 

フェリーは被災地を巡り多くの人や物や動物を積むに従い、拡大していく不思議な「方舟」でした

 

家畜の飼育や食物の生産が出来るようになり、住宅が建ち、ひとつの「町」が組織されていく
多くの人々で賑わう「町」では祭りやイベントも行われるようになる
人やペットの中には大震災の後、まだこちら側に思いを残していて向う側には行けないらしい者たちが多く乗船している
それを解っていながらそのままに一緒に暮らしてきた人々だが、夏祭りの夜、向こう側から来たペルー人の呼びかけに応じて海を渡って去っていってしまう
いつかは別れの日が来ることは覚悟していた
それでも別れることは辛い
野生の熊や狼を登場させて人間やペットたちは自らの死の始末が出来ないから誰かの手助けが必要だと池澤さんは語ります

 

やがて住民たちの中から
船自体を国家とみなし新しい自由を実現し世界いたるところの公海に身を置こうとする者たち=自由航路主義者が現れ
従来通り、沿岸を行き来しながら暮らそうとする人々=沿岸主義者との対立が烈しいものになってくる

 

陸に暮らしていれば避けることは出来ない地震と津波の恐怖から逃れようとする人々
人はやはり土の上で暮らし墓所を守るものだと考える人々
両者が納得できる解決法はあるのでしょうか

 

 

 

今後、町の復興や整備は進んでいくことでしょう
あの震災で生き残った人々も同じように前に前に進んでいくことを強く願いました

 

登場人物たちは皆、個性的で魅力的
多くの作家さんが震災について著しておられます
本書のような表現もありですね

 

ラストには感動しました

 

 

 

 

 


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