また秋が来た。少しまだ日差しはきついものの、淡路から吹きあげる風は、
海峡の香りを包み、狩口の丘へ秋を運んでくれる。風は物を言わないけど、
(今年の夏は暑かったね)とでも口ずさむように、額の髪をして涼を感じ
させてくれる。考えてみれば、もう何度も味わったことがある、懐かしい
風情でありながら、それはもうはっとするほど新鮮で、改めて生を感じる
時でもある。けだし(生きていて良かったな)と意味もなく諭されるのだ。
「この世は地獄だ」と、物憂げに病んだ人が言う。「誰も同じだ」と返事
をしながら、(馬鹿か)と言ってしまえば楽だ、と思いながら、(そんな
手にのるか)と自分を励まし、「生きているだけで幸せだと思わな」と、
言いながら、また自分を励ます。結局は自分だと自覚すると、病んだ人に
救われているのは己なのだ気づく。そんなやり取りも人生の春秋なのだと
思いかえすと、駅まで歩いて汗ばんだ体も清々しい。やはり秋が来ている。
「決壊2時間後に避難指示」「中一少女殺害容疑で再逮捕」、朝刊一面に
地獄の様な文字が踊る。そしてある意味取ってつけた様に、一服の清涼剤
とでも言おうか、短文の随筆が人の営みの一面を切り取り「生」を謳う。
全ての人が殺人を犯す訳でもなく、全ての人が人生を謳歌する訳でもない。
我ながら、「生きているだけで幸せ」という言葉にどこか疑念を持ちつつ、
それでも、今生きて秋を感じられることに、心の底から感謝するのである。
三神工房
海峡の香りを包み、狩口の丘へ秋を運んでくれる。風は物を言わないけど、
(今年の夏は暑かったね)とでも口ずさむように、額の髪をして涼を感じ
させてくれる。考えてみれば、もう何度も味わったことがある、懐かしい
風情でありながら、それはもうはっとするほど新鮮で、改めて生を感じる
時でもある。けだし(生きていて良かったな)と意味もなく諭されるのだ。
「この世は地獄だ」と、物憂げに病んだ人が言う。「誰も同じだ」と返事
をしながら、(馬鹿か)と言ってしまえば楽だ、と思いながら、(そんな
手にのるか)と自分を励まし、「生きているだけで幸せだと思わな」と、
言いながら、また自分を励ます。結局は自分だと自覚すると、病んだ人に
救われているのは己なのだ気づく。そんなやり取りも人生の春秋なのだと
思いかえすと、駅まで歩いて汗ばんだ体も清々しい。やはり秋が来ている。
「決壊2時間後に避難指示」「中一少女殺害容疑で再逮捕」、朝刊一面に
地獄の様な文字が踊る。そしてある意味取ってつけた様に、一服の清涼剤
とでも言おうか、短文の随筆が人の営みの一面を切り取り「生」を謳う。
全ての人が殺人を犯す訳でもなく、全ての人が人生を謳歌する訳でもない。
我ながら、「生きているだけで幸せ」という言葉にどこか疑念を持ちつつ、
それでも、今生きて秋を感じられることに、心の底から感謝するのである。
三神工房
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