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超心理マニアのためのブログ

マット・イシカワによる超能力研究の文献ガイド

結論―楽な立場を超えて

2008-05-15 | 懐疑論争
<超心理学と懐疑論者たち(18-3)>
第18章:結論―楽な立場を超えて

強固な懐疑論者として知られたスーザン・ブラックモアは、
心理学者として「独断が生まれる構図に認知的不協和がある」
などと冷静な解説をしている一方で、自らは独断的な信奉者
として超心理研究を始めたと回顧している。ところが今では
「完全な否定論者だ」(ニューサイエンティスト2000年)と言って
はばからない。

ヘンリ・バウワーは、こうした主張の一方の端から他方の端へと
大きくスイッチする例が、歴史上の人物に多く見られることを
指摘し、徹底した信奉も徹底した否定もともに、独断で済ませ
られる「楽な立場」なのだ、と説明する。

独断を排して深く考えると、その両極の立場とも維持できない
ことがわかる。ブラックモアは超心理学を引退するにあたって
「心を開いて考えることに疲れた」と言っているが、不確実な
状況を維持するのが結構難しいことの現れであろう。

若くして亡くなった超心理学者のホノートンが死の直前に遺した
ように、科学的な探究には、先入観にとらわれず謙虚に耳を
傾ける姿勢が必要なのだ。

(終)


結論―懐疑論者の固執

2008-05-14 | 懐疑論争
<超心理学と懐疑論者たち(18-2)>
第18章:結論―懐疑論者の固執

クーンによると、「通常科学」に反する主張への抵抗は、科学的信奉が
宗教的信仰のように強固に働く例であるという。超心理現象への独断的
懐疑は、こうした傾向の一例として理解できよう。

脳生理学者のジョン・エクルズによれば、傲慢さは科学者の病気である
という。彼らは、おうおうにして科学が主張可能な範囲をはるかに越えた
内容を、権威をもって断言するのである。いまや独断の弊害は、神学者
にではなく、科学者にこそあるのだ。


結論―超心理学の革命

2008-05-13 | 懐疑論争
<超心理学と懐疑論者たち(18-1)>
第18章:結論―超心理学の革命

クーンによると、「通常科学」の変則的データ(アノマリ)が蓄積して、
理論の改訂ではもたなくなくなった段階で、新理論へと革命的に
置き換わる。超心理学が提供しているアノマリに対し、通常科学は
脅威を感じており、それを懐疑論者が表明しているのだ。

現在の意識の科学が、唯物的・機械的観点で意識を捉えるのに
対して、超心理学は、「因果的効力をもつ意識」についての科学に
向けたデータを提供している。そうした革命への呼び水となるの
かもしれない。


奇跡論法の再考

2008-05-12 | 懐疑論争
<超心理学と懐疑論者たち(17)>
第17章:奇跡論法の再考

ヒュームの判断基準「その奇跡よりも、それが虚偽であることが
奇跡的にならない限り、それは奇跡と認定されない」という奇跡
論法は、当時の時代背景をもとに考えねばならない。

ポパーにより、すべての理論は仮説であると認められるように
なり、また、「法則」という用語よりも「モデル」という用語が使わ
れるようになった今日では、奇跡論法は色あせたものになった。

超心理現象は奇跡ではなく、理論改訂の契機なのである。


超心理学の理論:科学性

2008-05-08 | 懐疑論争
<超心理学と懐疑論者たち(16-5)>
第16章:超心理学の理論
(5)科学性

超心理学はポパーの言うところの科学性を満たす。しかし、
現代の超心理学理論が十分反証可能な理論かというと、
疑問が残る。それらはいいところで近似にすぎない。ただ、
ポパーに従えば、すべての科学理論は究極のところ近似で
あり、仮説にすぎないのである。

隕石、大陸移動、太陽エネルギーは、その現象が起きて
いたのに、それが理論化され、説明が受け入れられたのは、
つい最近である。超心理現象も同様、理論の進展を待って
いるのである。


超心理学の理論:架橋理論

2008-05-07 | 懐疑論争
<超心理学と懐疑論者たち(16-4)>
第16章:超心理学の理論
(4)架橋理論

物理理論は時間や空間、統計的性質などについて記述する一方、
心理理論は超心理の自発的な現れ方や体験について記述する。
両者は、記述対象が異なるが、一体のものとなるべきである。

しかし、残念ながら現状の両理論は一貫性がない。両者を架橋
する新たな理論が必要である。このような学際領域の理論には
物理学、生物学、神経生理学、心理学を横断する知見が必要で
だろう。


超心理学の理論:PMIR理論

2008-05-06 | 懐疑論争
<超心理学と懐疑論者たち(16-3)>
第16章:超心理学の理論
(3)PMIR理論

代表的な心理理論にはPMIR理論がある。

哲学者のアンリ・ベルグソンはかつて、脳は生存に必要な
情報だけをフィルタリングしているという趣旨の指摘をした。

レックス・スタンフォードはこの考え方を発展させ、PMIR
理論を提唱した。この理論では、超心理現象は、生存上の
必要性を満たすべく、日常的に意識下で働くとしている。

http://www.kisc.meiji.ac.jp/~metapsi/psi/5-3.htm

超心理学の理論:観測理論

2008-05-05 | 懐疑論争
<超心理学と懐疑論者たち(16-2)>
第16章:超心理学の理論
(2)観測理論

すでに10-2で述べたような、量子観測が意識の段階で起きる
とするジョン・フォン・ノイマンらの考えの応用である。

エヴァン・ハリス・ウォーカーらは、超心理現象は、意識が脳
内の量子現象を決める確率分布を変化させる過程の例外的
現象とみる。つまり、その確率分布に重なり合っている状態が
他者の脳と関係していると「テレパシー」であり、他者の身体
と関係していると「ヒーリング」であり、遠くの物体と関係して
いると「念力」だということだ。


超心理学の理論:電磁波理論

2008-05-04 | 懐疑論争
<超心理学と懐疑論者たち(16-1)>
第16章:超心理学の理論
(1)電磁波理論

ラインはESPカード実験で物理変数との相関が
見られなかったことから、ESPを非物理現象と
みなした。まずは古典的物理理論が何故まずいか
から検討する。

ESPの情報は電波のような波(電磁波)に乗って
伝わると一時想定された。しかし、電磁波であれば
遠くに行けば(距離の2乗に反比例して)減衰して
しまうし、遠くまで届くような電磁波源がどうみても
私たちの体にない。また、電磁波を遮断するファラデー
ゲージの中の受け手にもテレパシーが伝わったと
され、電磁波理論は拒絶された。


超心理学の理論

2008-05-03 | 懐疑論争
<超心理学と懐疑論者たち(16-0)>
第16章:超心理学の理論

科学の要件が反証可能な理論であるならば、超心理学にもそれに
値する諸理論がある。

本章では、超心理現象の物理的過程を説明する物理理論と、その
現象の発現に伴う心の機能を説明する心理理論に分けて説明する。


科学とは何か:帰納の問題

2008-05-02 | 懐疑論争
<超心理学と懐疑論者たち(15-3)>
第15章:科学とは何か
(3)帰納の問題

科学が目指す理論が、普遍的であればあるほど、観察データに
よる理論の支持は難しくなる。というのは、理論が成立することを
すべての場合にわたって観察する(調べる)ことは不可能である
からだ。限定した数の観察で、全体に成立することを推測しなけれ
ばならない。これは「帰納」という、代表的な推論法として知られる。

帰納は論理的には正しくない。成立しない範囲までに広げてしまう
誤りをおかす可能性があるからである。しかしながら、帰納は科学
の方法の中核である。ヒュームは、帰納の無根拠性を指摘したが、
理論化には欠くことができない方法であるとも認識していた。

人間が妥当な帰納を行なえる(少なくともそう見える)のは、奇妙
である。ポパーは逆に、人間は生まれながらに「予期」をもっており、
観察データで帰納を行なっているのではなく、予期した理論をその
データで確認しているのだ、と主張した。データが理論を作るのでは
なく、それは理論を反証する役割をするという。つまり、理論は
つねに反証の可能性を残した「仮説」なのである。


科学とは何か:理論の役割

2008-05-01 | 懐疑論争
<超心理学と懐疑論者たち(15-2)>
第15章:科学とは何か
(2)理論の役割

科学の目指すところは一言で言えば、普遍的な理論を築くこと
である。理論という言葉は日常では、現実と異なる不確かなもの
という意味合いがあるが、科学探究の文脈では、観察によって
確実になったものである。

理論は、いったん形成されると、理論に従った観察が行なわれ
検証が繰り返されていく。科学哲学者のカール・ポパーは、フロイト
の精神分析理論が、どんな患者の疾患も説明できてしまう問題を
指摘し、理論には反証可能性が必要だと主張した。相対論などの
物理理論は、未来の観測結果を予想する反証可能な理論なのだ。

ポパーは、反証可能性でもって、科学と疑似科学の境界設定を
行なう提案をした。ただし、反証可能性だけでは境界設定は完全
ではない。理論が近似である場合は反証可能にはならず、他の
理論と近似の程度を競うことになる。

形而上学的な世界観はそれ自体では検証できない。しかし、理論が
それを含意することがある。ニュートン物理学は、世界が機械仕掛け
の決定論であるという世界観をともなっていたが、量子物理学に
理論が改訂され、決定論は棄却された。

http://www.kisc.meiji.ac.jp/~metapsi/psi/8-2.htm


科学とは何か:社会面

2008-04-30 | 懐疑論争
<超心理学と懐疑論者たち(15-1)>
第15章:科学とは何か
(1)社会面

PA(超心理学協会)は1969年AAAS(米国科学振興協会、
日本の学術会議のような組織)に加盟が認められた。61年と
63年の加盟申請が拒絶されたのちの、3度目の正直である。
このとき、加盟の後押しをしたのは、人類学者のマーガレット・
ミードであり、超心理学方法論がいかに確固としたものであるか、
そして、科学の大きな進展が、信じられてない現象の探究から
もたらされてきたことを主張した。

10年後の1979年、物理学者のジョン・ウィーラー(例の意識が
量子観測の決め手になると斬新な主張をしたひとり)がニセ科学
の撲滅キャンペーンを行なって、超心理学がやり玉にあげられ、
PAのAAASからの除名が議論された。しかし、超心理学は批判
を耐え抜いて、今日に至っている。

この事実によって、超心理学の科学としての地位は(少なくとも
形式的には)社会的に認められていると言える。


懐疑論の衰退

2008-04-28 | 懐疑論争
<超心理学と懐疑論者たち(14)>
第14章:懐疑論の衰退

超心理の懐疑論は今や、有効な立論が行なえない状態にある。
ブラックモアやハイマンも手詰まり状態だ。

※この章は、これまでの議論の繰り返しのようである。

新しい世界観に向けて

2008-04-27 | 懐疑論争
<超心理学と懐疑論者たち(13)>
第13章:新しい世界観に向けて

超心理の存在に抵抗を続ける理由は、次の4つ:
・実験的証拠に目を向けないこと
・懐疑論者たちの嘲笑キャンペーンへの恐れ
・古い科学的世界観への固執
・現状の生理学や心理学との矛盾

超心理の存在に対する抵抗を反転させるようなパラダイム
転換は、容易なことではない。旧来のパラダイムを信奉
する人々の宗旨変えは困難を極める。量子力学の創始者
のひとりマックス・プランクが独白したように、古い考えの
人々が第一線から退くのを待つ必要があるかもしれない。

先に述べたように超心理現象は、現代物理学が示唆する
世界観と矛盾するわけではない。かつて、科学的世界観
の改訂がなされたように、今われわれは、意識現象の
科学的理解に伴って、大きな改訂がなされるところにきて
いると言えよう。超心理現象は、現在の科学的世界観が
不完全であることを的確に示している。将来の歴史学者は
19・20世紀とは、超心理現象が信じられなかった、ごく
短い特異的な期間である、と語ることだろう。