超心理マニアのためのブログ

マット・イシカワによる超能力研究の文献ガイド

超心理学は問題のある概念を蒸し返す

2007-10-31 | 21世紀の超心理学
<21世紀の超心理学(2-5)>

第2章:ロバート・モリスによる問題点の指摘
問題点5:超心理学は問題のある概念を蒸し返す

超心理学は意識や体験の本質に迫るのであるが、そうした概念は
過去に、実験にかかりにくいあいまいな概念として退けられたり、
明瞭な概念に置き換えられたりしたものである。

想像や意志などは超心理学に不可欠な概念であるが、現在の
本流心理学では十分にとり扱われていない。これは、心理学が
庶民の素朴な関心から遠ざかってしまう理由にもなっている。

※蒸し返しではなく、超心理学が、興味深い側面へと、心理学を
 引き戻すきっかけとなるかもしれない、と言うことができる。


超心理学は確立した科学的方法論に対する脅威である

2007-10-30 | 21世紀の超心理学
<21世紀の超心理学(2-4)>

第2章:ロバート・モリスによる問題点の指摘
問題点4:超心理学は確立した科学的方法論に対する脅威である

時空を超えるような未知の、人間と環境との相互作用があると
なると、これまでの(自然)科学の方法論に問題を投げかける。
人間の影響を排除したところの実験・測定が必要なのに、その
保証がなくなってしまうからである。ぎゃくにこれまでの実験・測定
が問題なく行なえてきたことこそが、超心理現象が存在しないこと
の証しと見られる傾向もある。

このような現状を打開し、超心理現象が起きる諸条件をつきとめる
ためには、システム論的アプローチが必要である。超心理学の実験・
測定を、その実験者や傍観者までをも含めた大きなシステムの中に
位置づけて分析するのである。実験者効果や再現性の問題について
も何らかの進展が得られることが期待できる。

通常科学の実験・測定では、なぜ超心理現象が報告されないので
あろうか。超心理普遍仮説であれば、げんに起きているのに実験者
が検知しようとしないので、気づいていないだけとなる。超心理集中
仮説では、きわだった現象はめったに起きず、万一起きたときは、
実験・測定の失敗として片付けられている、となる。

※モリスは脅威であることを否定せず、新たな方法論を提案する
 方向で考えようとしたようである。システム論的アプローチは、
 人文社会科学においても重要な方法論となるのかもしれない。


超心理現象は幻覚と結びつけられやすい

2007-10-29 | 21世紀の超心理学
<21世紀の超心理学(2-3)>

第2章:ロバート・モリスによる問題点の指摘
問題点3:超心理現象は幻覚と結びつけられやすい

超心理現象は、何かとコンタクトするなどといった問題のある
信念体系とかかわり、精神治療に携わる人々を困惑させる。
超心理現象があるとなると、幻覚にとりつかれた人の信念体系
の確信を助長するからである。

超心理現象と幻覚の区別は非常に重要であり、1989年の超心理学
財団のシンポジウムは、これをテーマに掲げた。この研究が進めば
超心理学者と精神治療に携わる人々の双方に利益がある。まだ、
初期の段階であるが、交流が徐々に進んでいる。


超心理学は詐欺的行為と結びつけられやすい

2007-10-28 | 21世紀の超心理学
<21世紀の超心理学(2-2)>

第2章:ロバート・モリスによる問題点の指摘
問題点2:超心理学は詐欺的行為と結びつけられやすい

超心理学の研究対象の一部となる顕著な超能力は、手品で
同様なことが行なえる場合がほとんどである。金儲けを
したい者や名声を得たい者が、超能力者を偽るのである。
また宗教カルトでは、そうしたパフォーマンスが教義の支え
になっている。本流科学では、顕著な超能力の実演は手品
であると、頭からみなしておくのが「安全」なのである。

エジンバラ大学では、この問題に対処するために、奇術師の
手を借りて詐欺的行為のあり方を分析した。また、そうした
行為を行なう者の社会的背景を調査した。これらの知見は
超心理学の研究に大きく寄与している。

参考:
http://www.kisc.meiji.ac.jp/~metapsi/psi/1-5.htm


超心理学は怪しいものと結びつけられやすい

2007-10-26 | 21世紀の超心理学
<21世紀の超心理学(2-1)>

第2章:ロバート・モリスによる問題点の指摘
問題点1:超心理学は怪しいものと結びつけられやすい

霊魂が存在することや、人間が均しくオカルトパワーを
もっていることの科学的な証明を、超心理学が提供すると
思われる向きがある。げんにそうした動機で超心理学の
成果が引用されてしまう現実もある。

また、超心理学者はそうした信仰をもつ人々であり、それを
科学を使って布教しようとする集団、と誤解される傾向もある。

実際の超心理学は、現象や体験や実験データから出発する
ボトムアップの研究であり、環境と相互作用する未知の人間
機能について研究する営みである。特定の世界観を前提と
することはなく、かりにあるモデルを想定したとしてもつねに
それは反駁される可能性を含んだ暫定的なものである。


ロバート・モリスによる問題点の指摘

2007-10-25 | 21世紀の超心理学
<21世紀の超心理学(2)>

第2章:ロバート・モリスによる問題点の指摘

超心理学論文誌からの転載。
モリス自身が1990年に整理した問題点に対して、90年代を通して
どのように対応してきたかを振り返る内容。

モリスは、エジンバラ大学の超心理学講座を運営し13人の博士号
取得者を輩出してきた。卒業生らは、英国のハートフォードシア大学、
コヴェントリー大学、リヴァープールホープ大学、ノーサンプトン大学に
散って超心理学の研究を続けている。90年代の超心理学普及の
最大の功労者による分析。

モリスは、残念ながら2004年8月に逝去された。
http://www.kisc.meiji.ac.jp/~metapsi/jspp/MM0508.htm

明日より、この問題点の指摘および対策を個々に述べる。


ディーン・ラディンの未来予測

2007-10-24 | 21世紀の超心理学
<21世紀の超心理学(1)>

第1章:ディーン・ラディンの未来予測

1999年にラディンがPAの議長に就任したときの演説である。

この年次のPA大会はスタンフォード大学で開かれたので、
スタンフォードの「心霊ファンド」が「心霊研究」に与えられていない
問題をとりあげている。

参照⇒新刊書紹介:からみあう心たち(12)
http://www.kisc.meiji.ac.jp/~metapsi/data/entangledminds.html

またラディンは、現代物理学が生物学への展開を進めるにしたがって
超心理現象はあたりまえのものと考えられるようになり、2050年まで
には、超心理学は発展的に消滅していると予想している。


21世紀の超心理学

2007-10-23 | 21世紀の超心理学
さて、新しい企画として、超心理学について教科書的に書かれた洋書の
概要をつづるというのを始めたい。

<21世紀の超心理学(0)>

最初の本は「21世紀の超心理学」だ。
Parapsychology in the twenty-first century (McFarland 2005)

マイケル・ソルボーンとランス・ストームの編集で、十数人の超心理学者
が研究の未来を語っているエッセイ集である。

序文はノーベル物理学賞を受賞したジョセフソンが書いている。彼は、
提唱者のウェゲナーが死んでから正当性が明らかとなった大陸移動説に
なぞらえて超心理学の現状を語っている。科学は必ずしも気持ちのよい
ものではなく、真実を追究する理性的な営みであり、絶えまない自己批判
が必要と述べている。

参考:ジョセフソンの著書⇒読書ガイド18を見よ


イアン・スティーヴンソン追悼シンポジウム

2007-10-22 | 論文ガイド
<PA2007(34)>

イアン・スティーヴンソン追悼シンポジウム

本年2月8日に逝去されたイアン・スティーヴンソン博士を偲ぶ
http://www.healthsystem.virginia.edu/internet/personalitystudies/

以下の4名のパネルがあった。
N・ジングローン(超心理財団 ニューヨーク)
E・ハラルドソン(アイスランド大学 レイキャビック)
C・S・アルヴァラード(超心理財団 ニューヨーク)
J・パーマー(ライン研究センター ダーラム)

イアン・スティーヴンソンは生まれ変わり研究で有名:
http://www.kisc.meiji.ac.jp/~metapsi/psi/7-3.htm


実験超心理学への寄与:チャールズ・エドワード・ステュアート

2007-10-19 | 論文ガイド
<PA2007(33)>

超心理学の隠れたパイオニアを偲ぶ⑥
●「実験超心理学への寄与:チャールズ・エドワード・ステュアート」
 ナンシー・ジングローン(超心理財団 ニューヨーク)

C・E・ステュアート(1907-1947)は、デューク大学の超心理学研究室の
有能なアシスタントだった。彼は学部時代に、強制選択ESP実験に参加し
ラインの本で「スター被験者」とされるほどの結果と、顕著な下降効果を
残した。学部は数学専攻であったが、博士課程で心理学に進み、カード
テストのスコアの偏りの分析で博士号を取得した(1941)。統計に詳しく
分析面での学界への寄与は大なるものがあった。また、ラインの「60年後
のESP」の刊行に際しての貢献も大きい。さらに、ワルコリエの描画実験
を改良して、自由応答実験の動機づけを向上させる工夫や、批判に対応
した実験の厳密化の工夫などを行なった。

彼は第4代のトマス・ウォルトン・スタンフォード心霊研究ファンド研究員
として、2年間(1942-1944)スタンフォード大学に滞在してもいる。
(参考)
初代ジョン・クーヴァー(1912-1937)
2代ジョン・ケネディ(1937-1939)
3代ダグラス・エルソン(1939-1942)


アルゼンチン超心理学の開祖:オランドー・カナヴェシオ

2007-10-18 | 論文ガイド
<PA2007(32)>

超心理学の隠れたパイオニアを偲ぶ⑤
●「アルゼンチン超心理学の開祖:オランドー・カナヴェシオ」
 アレジャンドロ・パラ(アルゼンチン)

ブエノスアイレスで生まれた神経外科医のクリストフ・シュレーダー
(1915-1957)は、心霊研究の医学・生物学的側面に注目し、超能力者
研究の協会を設立した。

彼は能力者と呼ばれる人々の、発揮状態の脳波測定を行ない、それは
深い睡眠状態から意識集中の覚醒状態まで多岐におよんだ。こうした
成果で彼は、コルドバ大学の医学博士号をとっている。

彼は精神病理研究所長になって、霊性運動が精神衛生に与える影響を
研究した。また南米の超心理学の普及につとめた。1950-55年には
霊媒師によるPK実験にかかわった。

38歳で事故でなくなってしまうが、「超能力研究のない生物学は
翼のない鳥のようなものだ」という言葉を遺した。


欧州超心理学研究の要:クリストフ・シュレーダー

2007-10-16 | 論文ガイド
<PA2007(31)>

超心理学の隠れたパイオニアを偲ぶ④
●「欧州超心理学研究の要:クリストフ・シュレーダー」
 ピーター・ムラッツ(ウイーン)

ベルリン大学教授で昆虫学者のクリストフ・シュレーダー(1871-1952)
は、1930-41年まで「メタ心霊研究論文誌」の編集をし、自宅に研究所
を開設していた。彼は、テレプラズマ(エクトプラズマ)やテレキネシス
(念力)で有名な霊媒マリア・ルドルフ(じつは彼の義母であった)の
研究報告で有名である。またこの間、現在のPAの前身に位置づけ
られる数回の国際会議(とくに1927年のソルボンヌでの会議)に参加し、
各国の研究者と交流した。ドイツ版の「超心理学論文誌」が1934年に
姿を消したのに対し、彼はドイツの研究活動を長く存続させたといえる。


メタ心理学者:エミル・マティーセン

2007-10-15 | 論文ガイド
<PA2007(30)>

超心理学の隠れたパイオニアを偲ぶ③
●「メタ心理学者:エミル・マティーセン」
 エバーハルト・バウワー(IGPP ドイツ)

エミル・マティーセン(1875-1939)は、幼いときから音楽の
才能を見せ、作曲家としても有名な学者である。1896年に早くも
ライプチヒ大学で哲学の博士号を取得し、多様な宗教や文化を
調査しに世界中を回った。

1914年にロンドンで書いた「神秘体験のメタ心理学入門」では、
超常現象を、現象学や心理学、さらに宗教体験や神秘体験と統合
した視点から宗教心理学に新たな基盤を与えた。彼は、超常現象
をメタ心理学的事実と、今日の変性意識状態をトランスリミナル
と呼んだ。

1925年からは田舎にこもって、死後生存の証拠を議論する本を
執筆した。彼の著作は2100ページにもなるが、すべてドイツ語で
英語圏で顧みられることはあまりなかったのである。


アメリカでの心霊研究の普及:R・O・メイソン

2007-10-14 | 論文ガイド
<PA2007(29)>

超心理学の隠れたパイオニアを偲ぶ②
●「アメリカでの心霊研究の普及:R・O・メイソン」
 カルロス・アルヴァラード(超心理財団 ニューヨーク)

R・O・メイソン(1830-1903)は、1869年からニューヨーク市で開業
していた内科医で、催眠の治療効果や多重人格の研究で知られる。
心霊研究書としては「テレパシーとサブリミナル・マインド」が有名。

メイソンは心霊研究協会に、催眠中に現れたESP、自動書記、夢遊
などの事例研究を報告している。また、霊的媒体が心を結びつけて
テレパシーが起きると説明している。

彼の研究は1893年ニューヨークタイムズに心理学の最先端としてとり
あげられた。またフレドリック・マイヤース(1843-1901)のサブリミナル
・マインドの考えに注目し、潜在的な自己がテレパシーを媒介して
意識的な自己へ伝えると論じた。


超心理学の名づけ親:マックス・デソアール

2007-10-13 | 論文ガイド
<PA2007(28)>

超心理学の隠れたパイオニアを偲ぶ①
●「超心理学の名づけ親:マックス・デソアール」
 ゲルト・ヘーベルマン(マールブルグ ドイツ)

マックス・デソアール(1867-1947)は、ドイツの天才的哲学者であり
心理学者で、1889年の論文で「超心理学」という用語を初めて提案した。

彼は18歳のときにすでに心霊研究協会のメンバーになり、著名な霊媒
ヘンリー・ブレードの交霊会に会席している。19歳のときには、その
協会(SPR)の論文誌に英語で論文を発表している。21歳で早くも
催眠に関する論文集を発刊している(この本は2002年にアメリカで復刊
されている)。

24歳では「二重自我」という本を出し、フロイト(1856-1939)の精神分析
理論の先駆者として評価された。2年後には、「心理学の見取図」という
本のなかで、奇術の心理学とその心霊研究との関係を議論している。

彼は、26歳になる前にすでに、学術博士と医学博士を取得し、まもなく
ベルリン大学の哲学教授に就任する。霊媒に関する本を多く出版したが、
物理現象を引き出す霊媒の懐疑的分析も行なった。

また彼は、1920年代にラジオを使った通信教育を開拓した。執筆した本は
美学芸術学、哲学史、日常心理学、講演の技能など、多岐にわたった。

1933年にナチに職を追われ、45年にはベルリンの空爆で、自宅や資料を
焼失した。ケーニッヒシュタインに逃れて47年に逝去するが、そこでは、
超心理学にかんする見方も綴った自叙伝を書きのこしている。