銀の人魚の海

日々の思いを好きに書いています。映画、海外ドラマ、音楽、本。
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愛を読む人~ドイツ語だったら、でも傑作

2009-06-28 | 2009年鑑賞新作映画
今年2作目のレイフ君、原作「朗読者」は出てすぐ読んだ。
2時間、日常を忘れてドイツの当時の世界に入れた映画だった。
レイフの代表作になると思う。

原作を超えたかもしれない?
原作では感じなかった疑問を持ったので長くなるが書いてみたい。

原作には当時の評も挟んであり、その後のベルンハルトの短編の記事も
あったので、かなり思いが強かった1冊。

作者は弁護士から作家、今は大学教授。
この映画にはエキストラとして出演している。

15歳の少年(松ケンみたい!)の恋のエネルギー、初めてのSEXへの
思いが前半はつまっている。
SSの21歳の元看守と短い間だが関係を持ってしまった、
この事実は彼にとり、どれほどの衝撃、重さだったろう。

想像できない。

理系へ進めば、であわなかったのにね(^_^)
法学部を選択したがために運命の再会とはそういうものだ。

ケイト(ハンナ)は文盲を隠し生きてきた上、SSの仕事までしていたという
同じような重さを若いころから抱えていた。
家族がいない分、もっと孤独だったはずで波乱の人生だ。

簡単に言えばメロドラマ+ドイツの戦争歴史と言えるが
原作との比較もしてみたい。

95年に出版され、すぐにミンゲラが監督したいと映画化権を取得する。
が、いろいろありS・ダルドリー監督になった。

彼の「リトルダンサー」は絶賛の中、嫌いな映画だったし、
他もそれほど強い印象はない。

ここではホンとミンゲラ、ポラック二人の製作に支えられての
映像化だと思う。
二人が完成前に亡くなり死、と因縁深い映画になってしまった。

クレジットに愛する二人へ捧げる、というようなものがでた。

とくにミンゲラは50代、もっと見たかったな~
レイフの「イングリッシュ~」も大好き。

二人は製作ではこれが遺作になるの?

タイトルは言われているように「朗読者」の方がいいが
仕方がない。誰がつけたの?

見ていないがゲイらしい平井堅のCMソングが使われていると。え!。

キャストの前に主なスタッフ。
監督もイギリスで半分がイギリス人。
ポラックなど3人位が米人のせいか、ヨーロッパ映画の仕上がりだった。

欲を言えばレイフにドイツ語を特訓してもらい
ドイツ人美人女優で製作してほしかった。

でもアンナ・スミスにならなかっただけでもいいか。
マイケルにしたのは×だけど。

キャスト。
レイフ。もう渋すぎで、ちょっと老け過ぎ?哀しく切なくうますぎ!
彼しかできない役。老けて苦悩の顔だが、少年のような純粋さも
感じ、奥深いライトグレーーの瞳に魅せられ、憂いをよぶ。
できすぎキャスティング。

次が「ハリポタ」のあの役とは、役者の変身ぶりってすごい。
ナレーションも抜群の声色。

マイケル役。D・クロスはどこかで見た?
ドイツ映画祭で見た「クラバート」に出ていたんだ。

普通のおぼっちゃんタイプ。「ノルウェイの森」決定の
ドイツの松ケンみたい?
原作では彼の父は哲学者なので、アカデミックな家庭で育った
文系ボンボンが似合い、だからこその苦脳となる。
難しい役を初々しく、のびのびと演じている。
SEXシーンは18歳で撮ったとあった。

ハンナが去り湖で一人で裸で泳ぐシーンでは
「イーストウェスト」での20代で急逝したSボドロフJRの泳ぐシーンを
連想したが、あれもかなり年上人妻(S・ボヌール)との不倫だった。

ケイト。
初めはN・キッドマンだった!まさか~失敗作になっていたよ。
信じられないが、妊娠でケイトに変更で良かった。

オーストラリア女優では、この役は無理だと思う。

ケイトは36から60代までのメイク、4時間もかけ、やったね!

文盲からのストレスか?怒り、イライラの爆発と思われる演技。
その後、急に優しくなる女性らしいふるまいなど「坊や」
という心はレイフ同様、申し分ない演技。

レナ・オリン。
久しぶり、ハルストレム監督の妻、ラスト、レイフとの会話は
凛とした態度で応じる。

B・ガンツ。
「天使」ではなく教授役、意外と出番あり。

若き日のレナ役、Aマリアララはどこかで?
「トンネル」「コッポラの湖蝶の夢」の人だった。

というドイツ人3人、ヨーロッパ人3人。
スタッフともにみると中年が多い映画だ。

映像から細かいところ。
冒頭、ブラジャーにアイロンををかけるハンナ。
初めてみた。かけないよね普通。

マイケルが読む本にドイツの好きな作家、ツバイクが入っているかと
気になったが、あった。

ツバイクでは「昨日の世界1,2」
他は「オデュッセイア」「ハックルベリーフィンの冒険」
「老人と海」「骨董屋」「チャタレイ夫人の恋人」
「変身」「エミーリアガロッティ」「タンタンの冒険旅行」
「アナトール」「ドクトルジバゴ」「たくらみと恋」
「戦争と平和」など。

のちにマイケルが刑務所へ送るテープに、1、2巻の印は
赤い丸がつけてあった。数字も読めなかったのか?
この辺りは後記。

マイケルが朗読ボランティアのように徹夜かで吹き込み
ベッドで疲れて、まるく寝ているカットは、若き日の彼の姿と重なる。

ハンナはチェーホフの「犬を連れた貴婦人」を5つの単語に分け
文字を知ることになる。
THEは多く出る言葉。
だんだんと単語を拾い学ぶ姿は賢いなと思う。
頭は良い人だったのだ。

そして当時のドイツの刑務所の待遇の良さに驚く。
個室に窓、本も読め壁にいろいろ張れる。
テーピレコーダーも使用可なんて、40年前位の自由なこと。
模範囚だったこともあるのか?

ハンナはここで文字を学び一人で静かに生きていこうと
思っていたのだろう。
それが恩赦か?出られることになり再会。

出てしまったら、もう自分の行き場はないと
本を積んでの自殺は皮肉としかいいようがない。

美術。
雨から雪に変わるシーン。ハンナの部屋、湖の光景、路面電車など
当時のドイツが残る「バベル」「アモーレス~」「21グラム」など
ベテランドイツ人の方の仕事がよい。

マイケルの家族は彼の行動に関してうるさくいわない。
家族と言えば「重力ピエロ」を思うが、ひと夏、どれほど
息子を心配しただろうか・・
どちらかと言えば、家族と距離があるマイケルで、誰もいないハンナと
似た感じもあった気もした。

心。
「ボーンアイデンティティ」を再見したが、人は過去の記憶がないと
生きていくのは大変だ。ないと何も語れない、考えられないから。

逆にマイケル、ハンナは過去が重すぎた、ありすぎた。
過酷過ぎた。そういう方もいるだろう。
二人は過去を見て生きていきたかったのか?それとも見ないで?

重い過去のない人生と、重すぎる過去の人生2つを想う。

消し難い記憶の渦に翻弄された二人。マイケルは若すぎた時期、
ハンナは逆にあきらめの境地での裁判だったと思う。

文盲に関して、なぜ、いわないか?命がかかっているのに?
への疑問。
監督の言葉が出ていたが、そうかな?
もし命がかかれば普通ならいうと思う。

ここでは、文盲を隠すというより、すべてにおいて
完結したかった彼女がいた、マイケルとの甘いひと夏も得て
もう人生はこれでもいいという気持ちが強かったのではないか・・

連合赤軍流なら「自己総括」ということだろう。

原作との比較。(ざっと再読)

冒頭、彼はしょう高熱ではなく原作では「黄疸にかかった」とあるが
黄疸は症状だから、訳がおかしい?
あとになると黄疸系の病らしく検査もしていて
1年かかるとあり、映画だと1年では無理になのでしょうこう熱にしたのだろう。

裁判シーンでは映画では目を合わせなかったような・・
原作では1回だけちらっと見つめ合う。

ラストは原作とは少し違う。
原作はドイツの教科書になっている。

傑作としての感想だが、ここからは映像というリアルになった時の疑問を
書きたい。
原作があってもリアルにならない、逆になるケースもあるが。
あえて不自然さを書いておこう。

ハンナの文盲について。

原作に「~ルーマニアで育ち17歳でベルリンに出てきてジーメンス社の
労働者になり21歳で軍隊に勤めたという。戦争が終わってからは、さまざまな仕事をして生計をたててきた。2、3年前から市電の車掌になった~家族はいない」
とある。

よくよく考えてみれば、ルーマニアの森(農業)の妖精(^_^)ではないし
貧しく学校にもいけなかった。だから読めない、書けないはわかるが。

でも17からは街に住み仕事も多々していたわけで、名もかけないというのは
あまりにも不自然すぎる、という事は本を読んだ時には感じなかった。

映像化されれば、買い物や仕事の面接での書類、読めない書けないでは
いくらなんでも疑問が起きる。

一人暮らし、昇進の話が出るとやめてるが、仕事ができるからこそで
市電の仕事だって、駅名、値段は?それも読めないは、ありえないと思う。

最低限自分の名前、よく使う単語くらいは読み書きができていいとは思った。
ずっと農業、単純労働だけならともかく、SSに入る時に何も書類がないなんて考えにくい。

あの裁判での書類はかけなかったとしてもいいが、
その辺りは小説だからこそ違和感無く突破できたと思う。

少なくとも20年位は町で働いていたのだから
耳が聞こえないならわかるが、町にいれば嫌でも覚えると思う。

彼女の人生を少し工夫すれば、原作、不自然にならずにはできたはず。

原作に8、9割は忠実なのでしかたがない。

記憶ではドイツの首相が、かなり前にナチの行いの謝罪を
世界に向けてしたと思うが・・

ドイツ人もナチの犯罪の重大さに気づき、61年にイスラエルで裁判。
ハンナのこれは63~65、フランクフルトでのアウシュビッツ裁判。

歴史のリアルさの割にはハンナの文盲が気になった。

原作では。

二人の旅は1週間で、ベッドにメモをマイケルがおくが
ハンナはない、という、これが読めないということになるが
映画にはない、入れればよかったと思うエピソードだ。

マイケルの父は哲学者で、本を書いていて、それもハンナに読んでいる。

ハンナは映画好きとあり、ドイツ以外も見ているが海外では字幕はないから
可能か?

マイケルはハンナの事実を父に相談しようとするがうまくいかず、
裁判長には会いに行っている。

マイケルが収容所跡を訪問する箇所もある。

マイケルは卒業後弁護士にはならず、法史学の教授のもとで働いていた。

ハンナが刑務所に入り4年目に初めての手紙がくきて
「僕は歓喜にみたされた」とある。

ハンナは18年で恩赦で釈放され、出る前日の午後もマイケルと電話で
話し、それが最後の会話となる。

重すぎる過去を背負った21歳差の男女。
二人の心の音色の余韻が残る。

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4 コメント

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報告書の記載者と認めた理由 (ヤマ)
2009-07-05 23:49:54
アリエルさん、こんばんは。
>文盲に関して、なぜ、いわないか?命がかかっているのに?
>への疑問。
>監督の言葉が出ていたが、そうかな?
とありますが、監督は何と言ってたんですか?

それと、アリエルさんの「文盲を隠すというより、すべてにおいて完結したかった彼女がいた」「もう人生はこれでもいいという気持ちが強かったのではないか・・」との御意見、なるほどなーと思いました。
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原作者は「オデュッセイア」にこだわっていたのに (かえる)
2009-07-06 01:11:26
こんばんは。
先日は当ブログへの訪問ありがとうございました。
私も映画を観た後に、本棚の奥から原作本を引っ張り出してみて、相違点を探してしまいました。
私は、『イングリッシュ・ペイシェント』、『ナイロビの蜂』のレイフが好きです。
Bガンツはスイス出身でAマリアララはルーマニア出身で、主要な純ドイツ人俳優はDクロスくんだけなんですよね。
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Unknown (アリエル)
2009-07-06 12:00:28
ヤマさんへ。
パンフから、監督の言葉の概略です。
「ずいぶん多数の文盲のリサーチをした。隠すことにどれほど努力をする人が多いかを知った。結婚後、子供もいるのにかくして一生を過ごした(ありえないと思うけど)
秘密を知られずの人生は行動学的にも深刻な問題だ。ハンナはSSでの行為より文盲を恥じていると思う。~」

これでは私は納得できませんでした。

ハンナは、若い無垢な少年との恋で、すべてが終わった、一時の幸せな時間をすごせ、それでもう後の人生はもう、どうなっても運にまかせるという気がしました。SS時代の罪の意識も含めて。

マイケルとの出会いは、ハンナにとって、一生で一番のできごとだったと思い、そんな感想を書きました。
返信する
Unknown (アリエル)
2009-07-06 12:04:23
かえるさん、ありがとうございます。

ずっとレイフ好きです。
「イングリッシュ~」最高でした。
だから彼もドイツ語でと感じました。
ハンナ役もドイツ人で。

そうですか、純ドイツ人はデビッドだけなのですね。そのわりには、ドイツの雰囲気は出ていたと思いました。
4月から映画をあまり見られなくなっていますが、これからもよろしく。

ミニシアター系のブログをお持ちのかえるさんです。
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