あいとポッポパーティー

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「男たちの大和YAMATO」と内藤先生

2006-01-11 01:10:50 | 映画
友人Tろ~くんに無料チケットをいただき、映画「男たちの大和YAMATO」を見に行きました。
題名だけ見ると挑発的な、戦争礼賛の映画かなと思いきや、いろんな評判を聞くと反戦メッセージも込められているという。好意的な評価が多いのです。

けれど結論から言えば、私は決して平和のための映画ではないと思いました。
大きな問題は、「死んだらいかん」「命を大切にしろ」という強いメッセージがありますが、でもあの戦争で中国はじめアジアの人々の命をいかに粗末に扱ったかということを思えば、非常に矛盾しています。
「戦争のために」「お国のために」死ぬことがいかに愚かか、というメッセージは正しいし、共感します。
しかし同時に、日本という「お国のために」無残に殺されていったアジアの人々の命を、なぜ大切にできなかったのでしょうか。

これは映画ですから、ひとつの戦争を描く上でいろんな切り口があります。
でも60年前までの日本の戦争を描くとき、特に戦場を描くとき、私は日本の「加害」抜きに語るべきことはないと思います。
少なくとも、多少なりともこれからの「平和」のためにというテーマを標榜するならなおさらです。

指摘すればキリがありませんが、せずにはいられません。
この映画が、決して平和のためのものではないと思った理由。
思いつくままに列挙してしまいます。

↓↓↓↓↓↓

映画では、敵はまるで米軍であるように描いています。
もちろん当時の「敵」はアメリカで、米軍と殺し合いをしていたのですが、日本軍がもっと殺したのはアジアに住む人々です。
おそらく日本軍にとってアジア諸国は「敵」ではなくて、支配の対象だったのだと思います。
映画にはアジアの姿はまったく見えません。日本の人々と、顔の見えない米軍という敵。
映画の冒頭で、「日本が中国を侵攻したためアメリカなどは日本を経済封鎖した。追い詰められた日本は真珠湾攻撃を決行」などとナレーションが入ります。
いったい何のために戦ったのか、とてもあやふやです。

そこで、死を前提とした戦いの、いろんな理由付けを、各場面で試みています。
たとえば長嶋一茂演じる大尉の「死に方用意」の話。
「負けて目覚める」。日本は進歩を軽んじた。負けて目覚め、新生日本を築こう。そのために我々は先駆けて死のう。
とか何とか。
いよいよ迫る死を目前にして、「新生日本のために」とでも思わなければやり切れない、という気持ちはあると思います。
けどやはり、なぜ新生日本のために若い彼らが死ななければならないのか、なぜ米軍と殺し合いをしなくてはならないのか、なぜ中国人を殺さなければならないのか。
妥当性がありません。
普通の市民だった多くの兵士や住民が死に、侵略先の住民を殺すことでそこから教訓を得、新生日本が生まれるなんて考えられるでしょうか。
もし何らかの教訓が得られるとしても、勝手に殺しておいて傲慢ではないでしょうか。


他にも、まるで当時の作戦が無謀だったからたくさんの兵士が犠牲になったのだ、という描き方。
作戦が無謀だったのは事実です。大和を援護する戦闘機もなしに、特攻船として沖縄へ出撃するのだから。
渡哲也演じる長官も、無謀な命令に対して一応抵抗してみせる。前述の長嶋一茂の言葉も、無謀な上層部に対する抵抗、と読み取ることもできる。
私はこの流れを見て、当時のような無茶な命令をする日本軍だからよくなかったのだ、という印象を持たせるのではと感じました。
結局、無茶な軍部の犠牲になった兵士たちの死の上に、新生日本があるのだと。そして新生日本が持つべき軍隊は、冷静で合理的な組織がふさわしい、と。
たとえば最近民主党が話題にする「シビリアンコントロールが効いた軍隊(と言ってたかはあやふや)を」という主張につながるような。
まるでシビリアンによる統制の下にある軍隊なら、無茶な戦争はしない、というような。
けれど今のアメリカを見たらわかるように、シビリアンコントロールが効いた下での軍隊が、世界中で一体何をしているか。


いかん。長くなりすぎ。

映画の中で勇敢に戦う彼らを見て、家族や恋人との別れを惜しむ彼らを見て、靖国神社へ行かねば、と思った人も多いようです。
彼らの死の上に今の日本がある、感謝せねば、と思うようです。
アジア人の死の上に今の日本があるのでしょうか。アジア人にも感謝するのでしょうか。
彼らの死の上にできた今の日本は、憲法9条を変えて自衛隊を「闘える軍隊」にし、イラクで大殺戮を行った米軍のような国にするために懸命に画策しています。
それが負けて得た新生日本なのでしょうか。
自分の家族や恋人、そして正義のようなものを守るために、なぜか見知らぬ土地へ行って大義を振りかざして見えない「敵」を探し歩いて掃討していくのでしょうか。


…なんて、まるでケチをつけるようですがそんなつもりもありません。
家族や恋人との別れを惜しむシーンは真実なのだと思います。
「死んだらいけん」というメッセージも正しいですが、万人に普遍的であるべきだと思います。


見出しの内藤先生とは、日本平和委員会代表理事で弁護士の内藤功さんのことです。この映画を観たらしく、その評を昨日聞いたのでした。
戦争体験を持つ先生の感想は、より現実味を帯びていました。

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27 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
敗れて目ざめる (安頓)
2006-01-11 18:17:11
映画を見た人はこの言葉を思い出すのではないでしょうか?

最近長渕剛のClose your eyes♪を聞く度にあの戦闘シーン、そして大切な人との別れ、そしてけっして沈まないはずの大和の沈没シーンが浮かびます。



TBしましたので、よろしく。
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Unknown (ゴレンジャー)
2006-01-11 19:47:38
確かに中国人をたくさん殺していますよね日本軍は。でもそれは中国があまりにも弱すぎるからじゃないかと思います。最大の責任は日本にあります。日本は最低最悪です。でもそんな日本に侵略された中国も悪いような気がします。弱い国は侵略される。それが当時では当たり前だったからです。しかし日本は絶対に許してはいけません。このまま何千何万年と中国にお金と土下座を捧げるべきです。ヨーロッパやアメリカの侵略は許されても日本だけは許されません!!侵略しといて世界でもトップレベルの国になるなんて矛盾してます。
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戦争 (武蔵)
2006-01-12 03:40:49
いつの世も「勝てば官軍 負ければ賊軍」ですから。



真に客観的に観た場合、戦争とは一方的にどちらが悪いなんてものではないでしょう。



日本は勿論悪いです。



しかし人を多く殺している点では、中国は日本を遥かに凌駕しています。しかも自国の民衆を大量にですよ。



戦後、日本は、例え形式上とは言え「戦争放棄」を表明しましたが、どこかの国は着々と軍備を増強してきましたね。



いまだに国民への洗脳教育に血道をあげる一党独裁国の言い分は、いずれ世界から信用されなくなり、自分で自分の首を絞めることとなります。
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ドラマか歴史ドキュメントか (おはぎ)
2006-01-12 05:14:13
映画評としては色々問題がある記事でした。



 まずひとつ。

 「大和」を主題(といってもさらに少年兵に焦点が絞られてましたが)に作られた作品に、中国やアジアの関連を深く盛り込むのは難しいです。

 ご覧になったならご承知と思いますが、この作品は乗組員の視点を中心にしており、歴史背景も大和に関わる最低限のものを提示してます。それは歴史作品としては情報不足ですが、今回の個々人の人間のドラマをテーマとしている作品では必要十分です。

実際の戦争の背景・情勢を一方に偏ることなく説明するには、ドキュメンタリーですら膨大な時間をそれに充てる必要があります。

 例えばこちらの記事でおっしゃってる旧日本軍の行動は事実でありながら、すべてを語っていないがために日本の一面しか見えてこない。要約した情報だとそうなってしまい、またドラマ仕立てだと中立的な表現が難しくなります。

 何故日本がアジアに進出したか、日本が中国そのたアジア諸国でどのようなことをしたか、アジア諸国が日本に対してどうどう考え、どう応じたか。アメリカや西欧諸国はその背景でどう動いていたか。

それらをきちんと説明せずに「日本は中国やアジアを蹂躙した」とひとまとめにしてしまうのは、この映画で中国のことを描かないこと以上に乱暴であり、歴史を正しく伝えたいと願うこちらの記事の意図にも反しているはずです。



 私見としては、「男たちの~」は個々人を描いた人間ドラマであり、歴史・戦史にとっての収穫は、この映画を観た人がそうした背景に興味をもち、色々考え、多少なりとも戦時の情報に触れようとすることにあると思います。指摘の通り、この作品だけでは歴史や背景の情報量は十分ではないのです。だからこそ。



 この映画を観て靖国に礼拝したいと言う人も「アメリカやアジアの人の死には感慨が無い」なんてことは無いはずです。かれらのしたことではなく、彼らの歴史の果てに今の自分の生と社会があることを重く受け止めているのです。この映画は嘘の歴史を広めるための作品ではありません。命について考えるための作品と捉えては如何ですか?
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Unknown (teru)
2006-01-12 08:38:58
某サイトでは

この映画を観た後に「靖国に参拝したい」という人間が続出してましたが?
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Unknown (teru)
2006-01-12 08:39:48
おっとすんません。

パッと見ただけでコメントしちゃいました。
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ちょっと違う見方 (日本)
2006-01-12 12:46:03
この映画は平和を表\現する映画より戦争の悲惨さを表\す映画です。間接的に平和もテーマになりうるかもしれませんがメインテーマではありません。

日本は中国韓国に侵略をしました。それは事実です。左翼系の人間は過剰なまでに平和を叫びます。しかし、戦争は外交の最終手段としてしなければならないときはしなければならないのです。左翼の人間のいうことを聞いていては湾岸戦争の日本非難などにもつながります。また侵略を正当化するわけではありませんがダム建設、発展などよい側面もあったわけです。後にマッカーサーはあの戦争(太平洋)は日本は孤立化し、戦争をせざるをえない状況であったと言っています。また戦犯と呼ばれる人も我々日本人にとっては戦犯ではないのです。死んだ人間には敬意を払う。人として日本人として当然です。小泉さんが問題なのは一国の宰相としての立場だからであり、参拝行為としては当然のことです。
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ちなみに (日本)
2006-01-12 12:51:31
パールハーバーもアメリカの視点で描いております。戦争映画は平等に描くのは難しいのです。
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なるほど (すすむん)
2006-01-13 00:20:31
映画の感想として気持ちが伝わってきました。読んでいて長く感じませんでしたよ。

反戦メッセージなど好意的な評価が多いけれど平和のための映画ではないと感じられた理由を、とても興味深く読み、面白かったです。

私も一度、映画の感想をちゃんと書いてみようかな~。
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へーと。 (ぶり)
2006-01-13 01:02:17
とても、今までの映画評のなかで、一番共感して読ませていただきやした。って、まだ映画観てないけど。。。



そして、たくさんのコメントになるほどー、と思ってしまいました。





そうですねー。戦争によってはどっちが悪いということができないものもあるんでしょうね。でも、戦争の中の一つ一つの出来事を見ていくと、やはり悪はあるんではないでしょうか?

日本によるアジアの侵略は悪です。中国による天安門事件などの市民弾圧は悪です。「お国のために」といって若者たちを殺した当時の日本軍国主義も悪です。



そして、弱いから侵略されても仕方がない、というのはどうなのでしょうね。いじめ問題でいう「いじめられる方にも問題が」ってやつですね。

わたしは体力的にも人間的にも知的にも社会階級的にも弱い立場にあるので、いつ攻撃されても仕方ない。でも、わたしは人から攻撃されたり殺されたり罵倒されたり無視されたりしたくないから、さらに自分より弱いと思っている人に対しそういうことはしない。

基本は、されたくないことはしない、だと思うのですけどね。



ということで、多分映画は行きませんけど、興味深く観察していきます!
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