今日の出来事

毎日のことを少しづつ。

よみがえる着物

2007年12月23日 | 着物のこと
今年の4月に祖母から譲られた着物で唯一「いい着物」だという
「大島紬もどき」のお直しを葉さんの和裁の先生にお願いすることになりました。

「大島紬もどき」というのは実は初め地元の呉服店にお直しの相談に出した時に
「これは大島と違いますなあ。昔はこんな真似したものがよう出回りましたんや」
と言われてしかもあまりの状態の悪さに
めんどくさそうに直すのを嫌がるので大変不快な思いをしたものでした。

ちなみにその店の前には「昔の着物を直して着ませんか?」大きな看板が出ているんですが・・・

しかし倹しい祖母が行商に来た呉服商からきっと
「大島でいいもんですよ」と薦められて買ったものではないかと思い
たとえ違ってもそういう祖母が「清水ステージ」したかもしれないものを
なんとか着ることはできないだろうか?
そう思っていました。

ちょうどその頃葉さんが和裁教室で
骨董市で買ったものをコートにしたり、
小さな着物を羽織に直したりする「繰り回し」で
着物を楽しんでいることを聞いていました。

私がその先生について自分で仕立てることが出来たら一番いいと思うのですが
どう考えても難しいので一度先生に無理は承知でお願いしたのでした。

先生は快くそのお願いを引きうけてくださり
生地を見ていただいたところ「大島だと思う」ということ、
やはり生地の状態があまりよくないので洗い張りに出した段階で無理であれば
もしかすると仕立てることは不可能かもしれないこと。

そして時間は過ぎました。
長い時間が経ったのできっともう洗い張りで無理になり出来なかったのだろうと
諦めていました。
そんなある日先生から久しぶりに連絡があり
「洗い張りが終わって生地が帰ってきました。仕立てに入ります。
胴裏は正絹にしますか?化繊にしますか連絡ください」

びっくりして「大丈夫だったのですか?」と返事すると
洗い張りの方が長い時間をかけてカケハギして下さっていたとの事。
先生も今から仕立てに入りますがいいところを接いで作りますと言って下さいました。

そしてとうとう仕立てあがってきたのです。
受け取るため知立まで行って来ました。
葉さん、ことりさんも一緒に付き添ってくださいました。

「すごくよくなったのよ」

先生がそうおっしゃっていたので皆でわくわくしながら。

畳紙を広げると祖母の着物が。
それは洗い張りされて綺麗になってそして着物としてまた新しく仕立てられて
違う着物のようでした。

最初に見たときはもっと地味な着物に見えたのに
汚れがとれて色は地味ですが柄が綺麗に浮き出て可愛らしい着物に見えました。

先生は
「もう洗い張りの人も大変だったって。私も使えるところをいろいろ継ぎ合わせて考えてパズルをしているようだったのよ」
と笑っておっしゃいます。

洗い張りになんとか耐えましたがかなり生地が薄くなって
使える部分は着物のほうではほとんどなかったとか。
対になっていた羽織のほうで繰り回し、カケハギした部分が
着用した時に出ないように、まさにパズル。
「こういうところを接いであるのよ」と
先生が光に透かして見せてくださると胴裏から接いだ部分がよく分かりました。

先生とは裾回しの色などは打ち合わせは出来なかったので
全てお任せにしました。
「ピンクや黄色を付けてもよかったけれど、生地を考えるとこの先もう
洗い張りは出来ません。このままで着続けてね。
だから長く着られるように辛子色にしておきました」

そして着物のほうの生地かかなり残りました。
先生は「もうかなり薄くて着物には出来ない。でもこの着物と同じように
パズルで接いで行けばもしかしたら袖なしのちゃんちゃんこは出来るかも」
と言ってくださいましたが、私はその力がありません。

その時思い出したように先生が
「そういえばね。昔着物とお揃いの帯っていうのが流行ったことがあるのよ。
仕立ての仕事を始めた頃に何度か作ったことがあったの。
この生地なら帯にしてもいいかもね」

するとそばにいたことりさんが
「じゃあ、わたしがつくりましょうか?」
と言ってくださいました。

もちろん私としては嬉しい申し出!
そのまま残り布は今度はことりさんのところへ。
そして羽織の裏は「バッグの裏地に出来ると思うから帯で生地が残ったら
バッグも作ってみるわ」

先生が
「ね?布って捨てるところがないでしょう?なんでも作り変えられるものでしょう?」

こういうことがなければ我が家の箱の中で着られることもなく
消滅していったかもしれないものが
生き返ってきたのでした。

古くて状態のよくない着物。
そういうものを「無理です」「直す価値はないと思います」と断ることも出来たと思います。
でも洗い張りの方が弱っている生地であることを承知でカケハギまでしてくださったこと
先生がそういう生地であることを承知で着物として蘇らせてくださったこと
そして、そういうことを手伝ってくださる先生を紹介してくださった葉さん
本当に、本当に「着物縁」を紡いでいただいて心から感謝です。

8 コメント

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わんだほー ()
2007-12-25 17:31:44
 撫子大島の復活、すごいよねー!

 前見たときにもかわいい柄だなぁとは思ったけど、mayさん言うとおり色は地味だなあと思っていました。なんか、全体的にくすんでたよね。
 それが洗ったら灰色部分は青く冴えてくるし、茶色部分はなんかピンクっぽく華やかになった。洗い張りってのもすごい専門技術だわ。

 そして、先生の繰り回しパズル!見た目にはまったく普通に反物から仕立てたみたい。こういう技術を見ると、ほんとうにプロの技だと思うよね。

 甦った撫子大島。着姿見せてね!!
 帯も楽しみだね!!
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拍手! (おーこ)
2007-12-26 11:30:19
着物って 布って すばらしい~
それを何度もよみがえらせる人達 すごい!
そうやって 大切に使う人 mayさんも素敵!
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素晴らしい!! (桃葉)
2007-12-26 13:19:33
年末に素晴らしいお話を聞かせて頂きました。
本当に布地って捨てることは出来ませんね~。
こうやって、人の手を加わって
大事に長く受け継いでいける着物って
本当に素晴らしい文化で、世界に誇れる衣装だと思います。
よくお似合いですよ!!
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素敵♪ (ぽんご)
2007-12-26 15:54:01
葉さんのブログで知って、感激しましたが、
詳しいお話を知って、益々感動

暖かい手仕事が何人もによって加えられ、mayさんのもとにやってきたんですね!
お祖母様もきっと感激されていると思います

mayさんの優しさからよみがえった着物。こうして拝見できる私も嬉しい気持ちです☆

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皆様のおかげです。 (may)
2007-12-26 20:41:50
葉さん
今回「も」本当にありがとう。
洗い張りってただ解いて洗うだけでなく
そういう技術もあるってすごいなあと感動しました。
本当に綺麗になってびっくりしました。
そして先生に引き合わせてくれて本当にありがとう!

帯、帯。
どんな風に着ようかな~ふふふ・・・
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職人さん (may)
2007-12-26 20:45:28
おーこさん
まさに職人技です。
きっとこの着物もこれで朽ちていってしまうのだけど
その前にもうひと頑張りしてもらえて嬉しいです。

私のケツ圧(すうざんさんより引用)で
早期退職させないように大事に着ねば…
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引き継ぐ布 (may)
2007-12-26 20:52:15
桃葉さん
そういえば桃葉さんも沢山甦らせている物がありますよね。
いつもは消費、浪費している生活しているのですが
ちょっとだけでもこうやって布を受け継ぐ作業に携われたことでなんとなく幸せです。

で、どんな帯がいいでしょうか(爆)
またよろしくコーディネートアドバイスのほどを
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予想の反応 (may)
2007-12-26 20:56:08
ぽんごちゃん
きっと私のこの行動を母も祖母も
「ばかねえ…」と言うと思います(笑)
古い着物にお金をかけるなんてって。

でもいいんです。
私が嬉しければそれで良しよ(笑)
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