まてぃの徒然映画+雑記

中華系アジア映画が好きで、映画の感想メインです。
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裏切りの戦場 葬られた誓い L'ORDRE ET LA MORALE

2013-01-05 23:07:56 | その他の映画(あ~な行)

フランス領ニューカレドニア、日本では「天国にいちばん近い島」でよく知られているが、1988年、今からほんの25年ほど前に、今でもフランス政府が否定する弾圧があった。

ウベア島のフランス憲兵隊詰所が襲撃され、フランス軍憲兵4名が死亡、30名が人質となる事件が発生した。フランス本国から、フィリップ・ルコルジェ大尉(マチュー・カソヴィッツ)率いる憲兵隊チームが事件解決のために派遣されたが、現地にはすでにフランス陸軍が展開し、フィリップたち憲兵隊チームも陸軍の指揮下に置かれる。

人質解放に向けて、フィリップは事件を起こした独立派のリーダー、アルフォンスと交渉し、2人の間にはうっすらと信頼関係もできて、事件は平和的に解決するかに見えた。しかし、間近に迫った大統領選挙で優位に立とうと、パリではミッテラン大統領派とシラク首相派の駆け引きが続き、フランス政府は強行策の武力制圧での短期決着を選択する。。。

フランス政府が否定しているとはいえ、実際の作戦に従事した将校が告発みたいな手記を発表して、それを映画にできるフランスの自由さを尊敬します。さすが市民革命の伝統があり、「自由、平等、博愛」を旗印に掲げる国です。映画化にあたっては、特にニューカレドニアの犠牲者遺族たちの心情が一番複雑なのでしょうが、歴史の暗部を明らかにする試みに賛同したことにも敬意を表します。そして、監督、脚本、主演のマチュー・カソヴィッツ、まさにこの作品は彼の熱意なくしては生まれなかったものでした。10年以上もの間、フランス政府やカナック族の遺族たちと信頼関係を築き上げ、作品を完成させて世に送り出したのですから。

フランスは南太平洋の島々を「海外領土」と呼んでいて、建前では現地人も当然フランス市民なんですが、実態は植民地的な扱いで現地人を見下しているのが明らかにわかります。フランス本土でギャングが30人の人質を取って立てこもった時に陸軍が出動するのか、という違いですが、陸軍は村長を虐待し、女性や子供だろうと意に介さず自分たちの任務を遂行します。現地人を同じ人間だとさえ思っていないのかもしれません。フランス陸軍がカナックの村で傍若無人に振る舞う様子を見ていると、たぶん米軍も沖縄で同じ感覚なんだろうな、とふと思いました。軍隊に入るくらいだから、兵士たちはもともと気性が荒いのでしょうが、最近の婦女暴行事件や民家侵入事件のニュース、またオスプレイの飛行制限が全然守られていなかったり、騒音訴訟の賠償金を払っていなかったりすることを聞くと、明らかに見下して考えているとしか思えません。

事件が発生してから強襲までの間、1日ごとにカウントダウンしていく流れが、緊迫感を効果的に演出していました。また、海外担当大臣やパリの大統領、首相など政治家の意向が絶対で、軍人はその指示に従って動くしかないところや、軍内でも上下関係による指揮命令系統が、司令部でも実際の戦場でも絶対なところは、自分の良心との葛藤が厳しいなあ、と思います。上官の指示に従って統制のとれた動きをしないと軍隊として機能しないけれど、自分の良心や一般的な正義に反する命令を受けたとき、どのような思いで作戦に向かうのか、厳しい職業です。

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