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ラミ・デュ・ヴァン・エフ シェフのブログ ~言葉の錬金術~

フランス料理に限らず、色んな話のブログ内容です。

年末特別企画、迷惑を顧みない5000字ブログ 君は読破できるか?

2008-12-31 23:03:11 | Weblog
 今日は年末特別企画「迷惑を顧みない5000字ブログ、君は読破できるか!」と題して長文の自己記録を更新したい思い、先ほど4000字ほどまで書いたのですが、こちらの不手際で全て消去してしまう、というアクシデントに見舞われてしまいました。
 普通ならばここで諦めるものなのですが、やはり、年末ですからね、諦めの悪さも今年を締めくくるにはいいのではないでしょうか?(強引)
 
 今年最後の営業は31日ギリギリまでする事になりました。
 理由としては、31日でなければ御節を取りにこれない方、31日にオードブルの盛り合わせを注文された方、今年最後にカウンターでワインを飲みたいと申し出た方、寂しい方、の為に当店は開けております。
 お陰様で御節の方も無事、引渡しが終わり、ホッと一息ついているところであります。
 御節を注文された方からメニューの開示を要求されておりますから、この場をお借りいたしまして御節のメニュー内容、解説をいたしたいと思います。
 今回ご注文を躊躇された方もこれを見て食べた気分を味わい、そして、来年、また御節を販売する際はご予約をしてみてはいかがでしょうか。
 因みに、今回の御節をご注文された方で「来年の予約もいいですか?」という一年前予約を敢行しようと目論んでいた方もいらっしゃいましたし、お重の業者さんからも「是非、来年もうちのお重を使ってください。そして、来年の御節の予約をお願いします。」との声が上がってしまい、今年大変な思いをしたため「来年はどうしようかな・・・」と弱気になっていたのですが強制的に続行する事が決定してしまいました、いや、決められてしまった、という表現の方が的確かもしれません。
 それでは、御節の説明、解説、行ってみましょう!


     マチルダベイ  特製御節 2008

     一の重

・伊勢海老のフレンチ具足焼き
(半割りした伊勢海老は具足に例えられます。因みに、具足とは足につける甲冑の事であります。
 ソース・ベシャメル(ホワイトソース)を作り、ソース・アメリケーヌ(海老のソース)と牛乳で延ばしていきます。塩で味を調えたらミックスチーズを入れソースとします。
 伊勢海老をボイルし、半割りにしてソースをかけてオーブンで焼き上げます。
 お伊勢様を重ね合わせた伊勢海老は縁起物といえるのではないでしょうか。)

・仔羊もも肉のロティ
(骨抜きした仔羊もも肉はにんにくと一緒にローストし、十分に休ませてからラップで包み冷蔵庫で保存します。
 この料理の正式名は「ジゴ・ロティ」と言い、「ジゴ」は仔羊のもも肉を刺します。
 つまり、この料理に込められた願いは、事故(ジゴ)のない一年を、というものです。オヤジギャグですか?いいんです、オヤジなんですから。)

・ブロッコリーとベーコンのソテー
(付け合せ的な要素が強い一品ですが、こういうシンプルなものがワインを誘発させる、と私は考えます。
 太陽の光を浴びて育ったブロッコリーのように伸びて欲しい、という強引な願いが込められているのです。)

・白身魚、サーモン、海老のテリーヌ
(テリーヌ作りが得意な私を「テリーナー」と誰かに呼んで欲しい、とどうでもいい事を思ったのですが、どうでしょう?
 白身魚のすり身をフードプロセッサーにかけ、卵白、生クリーム、ポマード状にしたバター、と共にムース状にし、デ(5ミリ角)にカットしたサーモン、小さくカットした海老を混ぜテリーヌ型に流し、蒸し上げます。
 型に納まらない一年になるよう、そして、四角い仁鶴がまぁるく収める、という願いも込められております。)


    二の重

・鶏肉のガランティーヌ
(鶏胸肉と鶏の白レバーをミンチにし、マデラ酒とコニャックで風味をつけたファルス(詰めるもの)を開いた鶏もも肉で巻き、更にラップで巻いて成型し、蒸し器で蒸し上げます。
 出来上がったガランティーヌは切るとメダル型であります。ですから、メダル=お金、と考え、お金に困らない一年に、という願いが込められています。それは勿論、私も困らないよう願をかけての事であるのは言うまでもないでしょう)

・帆立と玉子のジェノワーズ ロール仕立て
(先日、ブログにも載せたこの料理、伊達巻を洋風に作れないものか、という発想から来ております。
 和風では淡口醤油や上白糖が結構入りますが、甘すぎないよう砂糖の分量を抑え目にしてみました。
 それでも結構甘いと思うのですが、日本酒でもイケるのではないか、と勝手に思っております。
 黄色という色は「金色」を連想させる事から、金運に恵まれますように、という願いが込められております。
 一の重でダブル金もの。これで金運がアップする事を願って止みません。そして、その暁にはどうか当店をご利用ください。)

・烏賊のリングフライ
(何の事はない料理かもしれませんが、衣の付け具合が意外と難しいのです。
 なぜイカリングなのか?リングの穴から覗いて見てください、見通しがいいでしょ、そうです、見通しの良い年になることを願ったのです。)

・大海老のポシェ
(一本しか付いていない為、喧嘩になることも想定できますが、私は民主主義的に話し合いで決めていただきたい。その方が遺恨を残さない、と考えます。
 尻尾から竹串を刺し背筋をピンと延ばした海老のように、緊張感のある一年の出だしとしていただきたい、そんな願いも込められております。)


     三の重

・豚肉のリエット
(豚もも肉は塊のまま塩漬けにし、塩を洗い流して水から2時間茹でていきます。別鍋にラードを入れ、玉葱のスライスを炒めていきます。
 茹でた豚もも肉、白ワイン、茹で汁、ローリエと共に2時間煮込んでいきます。煮込み終わったら大きなボールに移し、底を氷で冷やしながらスパチュール(木へら)で繊維質に崩し、脂とゼラチン質が固まってきたら練っていき、ペースト状にします。
 手間の掛かるつまみですが、手間をかけただけの一品であると思い、そして、白ワインを合わせて欲しい、と密かに考えております。
 「リエット」の「リエ」は、「繋ぐ」という意味を持ち、人の和を繋いでいく一年にしてください、との願いが込められている事は、案外知られていないでしょう。なぜなら、今考えたからです。)

・鯵のエスカベージュ
(3枚に卸してそれを半分にカットした鯵を素揚げして、野菜たっぷりのマリナージュ(マリネ液)でマリネします。
 マリナージュの野菜には、人参、玉葱、セロリがあり、見た目は紅白。ナマスにも見える野菜で意味を理解していただきたいと思います。紅白は縁起物ですよね。)

・野菜のギリシャ風煮込み
(フランス語で言えば「グレッグ・ア・ラ・レギュウム」となりますが、今回の御節のテーマの一つとして「バランスの取れた御節内容」というのを考えました。
 保存を目的としている最近の御節は、揚げ物や肉物が多く、栄養のバランス的にどうなのか、という疑問が前からありました。
 野菜というと申し訳程度に添えられているレタスだったり、キャベツの千切りだったりするのを目の当たりにして疑問を通り越し怒りさえ覚えたものです。
 シンプルな野菜料理には食べ飽きさせない、そして、ホッとさせるものがあります。それで、このメニューにしてみたのですがいかがでしたでしょうか。
 カリフラワー、小玉葱、人参、セロリ、アルティショー(アーティチョーク)などは、個々に掃除をし、剥くものは剥き、形を整えます。この作業は真夜中の静かな厨房で行われた為、お寺で座禅を組んでいるかのような錯覚に陥ったものです。
 その時、思うのです。人参はどのように剥かれたいのか?セロリはどんな形に仕上げられたいのか?カリフラワーは何処まで火を入れたいと思っているのか?色即是空、空即是色、色は肉体、空は精神、肉体は即ち精神であり、精神は即ち肉体である、肉体だけが特出できない、精神だけが特出する事はない、それは、肉体と精神のバランスである。技術だけでは料理は出来ない、理論だけでも料理が出来ない、そのバランスは、どちらのベクトルに向き過ぎても成立する事はなく、そしてそれは、永遠の課題でもある。
 そんな事を思いながら、調理したものです。シンプルなものほど考えさせ、シンプルなものほど苦しませる、そんな想いに駆られ、料理はだから楽しいのである、と再確認されられました。
 そんな個人的な想いを載せた料理が皆様の幸せを見守れる事を願っております。合掌。)

・チョリソーとキャベツの酢漬け
(フランスはアルザスの田舎料理をイメージして作ったこの一品は、白ワインを大量に飲んで欲しいという願いが込められております。
 人生とは時としてチョリソーのように辛く、キャベツの酢漬けのように切ないものです。
 味覚というのは色んなことを教えてくれます。冷たいもの、温かいもの、甘いもの、そして、塩辛いもの。
 その中には思い出として残る料理もあり、それが記憶に組み込まれ、「美味しい」という言葉が出てきます。
 その言葉は風に乗って、街を抜けて、森を通り、海に着き水蒸気に乗り雨となってまた土に返ります。その土からは虫が這い出て葉っぱを食べます。
 食べられた葉っぱはまた土に返り・・・もう止めます、何を書いているのか判らなくなってしまいました。
 いや、そのような願いと共にこの御節は作られたのだ、という事を書こうと思ったのですが、かなり遠い世界に行ってしまったようです。)

 以上が、今回、作らせていただいた御節の内容でありました。
 
 今回、作ってみて想像を絶する大変さを体感し、来年はどうしようかな?と考えたのですが、御節を注文された方に「来年の予約もお願いしたいのですが・・・」や、お重の業者さんに「来年の御節、うちの分もお願いしたいんですけど・・・そしてまた、来年もうちのお重を使ってください。」などのお言葉を頂き、もう、来年の御節も決定されてしまったのだろうか、と思い、そして、来年も頑張らねば、という強い意志を持った次第でした。
 
 今回の御節は「フロム*ヤマガタ」様からの依頼で決行する事になりましたが、実は自分自身が一番勉強になり、そして、これからもこの気持ちを大事にして料理を作りたい、と再確認できたものです。
 クリスマスも絡んでいましたので1週間ほど店に泊まり、シャワーを浴びに帰る以外はずっと厨房に詰めておりました。
 毎日、「出来るのだろうか?」との恐怖と戦い、そして、そのギリギリの中で料理を作る事が忘れていた修行時代を思い起こさせたのです。
 もうこの年ですし、誰も教えたり叱ったりしてくれません。ですから、その意志を持ち続けるのがどれだけ難しいのかも一人で考えさせられました。
 一人でもがき、一人で美味くいったのを喜び、一人で深く考えるのもいいのではないか、と思いながら、来年は、お客様やスタッフの為にどれだけの事が自分は出来るのか、それが店の為になると考えました。
 
 そういった意味でも、来年も当店「マチルダベイ」、そしてこのブログを今まで以上によろしくお願いいたします。

 今年はあと少しで終わります。しかし、また新しい年と共に新しい生活が始まるようなそんな気分でもあります。

 今年は色んな方からお世話になりました。心から御礼を申し上げたいと思います。

 そして、今回のブログは5000字であります。どう考えても挫折された方がいらっしゃるのではないか、と予想されます。
 
 ですから、たどり着いた方はかなりのマニアか、速読法を身に付けてらっしゃる方なのではないか、と勝手に思いました。

 この時点で4935字、新年へのカウントダウンのように文字数のカウントダウンも始まります。

 あと20字・・・あと15字・・・あと10字

 5000字になりました!

 ゴール!

 お疲れ様でした。お目を大事にしてください。

 ありがとうございました。







 
    

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6 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

コメント日が  古い順  |   新しい順
謹賀新年 (通りすがりのママレードボーイ)
2009-01-01 00:45:07
明けましておめでとうございます。

ブログ5000字もおめでとうございます。

今年もよろしくお願いします。

返信する
今年もよろしくお願いします。 (フロム*ヤマガタ)
2009-01-01 09:56:54
nagaokaです。
お疲れさまでした。
思いのほか苦行の年末だったようで、その一因を作ってしまった僕ではありますが、職種に限らずクリエイティブな仕事をする人と言うのは、すべからく“ドM”なんだなぁと思う次第です。
そんなわけで、今年のおせちを今から楽しみにしてます。
返信する
Unknown (suzu)
2009-01-02 00:29:57
思いと手の込んだお節ですね!
今年の年末は予約できるように…
がんばって働こうと思いました(^ω^;)

次第に長文になってきているblogも、毎回楽しみにしております♪

年末かなりハードだったでしょうから、身体お大事になさってくださいね
返信する
Unknown (uganda)
2009-01-02 08:49:56
〆飾りお買い上げありがとうございました。
初詣もご一緒できて「今年はマチルダベイにもっと行きなさい!」と神様に言われたような気がします(笑)。
今年はより一層厳しい年になりそうですが、がんばって働いてマチルダベイで自分へのご褒美ができるようがんばります。
今年もよろしくお願いします。
返信する
コメントありがとうございます (マチルダベイ)
2009-01-05 20:34:38
  >通りすがりのママレードボーイ様

明けましておめでとうございます。
そして、ご丁寧なご挨拶ありがとうございます。
何かとお忙しいかとは思いますが、またランチにでもいらして頂ければ幸いです。

今年もよろしくお願いいたします。



  >フロム*ヤマガタ様

明けましておめでとうございます。
年末の荒行を終えて憑き物が取れたような気がしました。(大げさ)
「ドMですね」とよく言われますが、ただ単に「極端な意地っ張り」なのではないか、と思います。

今年もよろしくお願いいたします。



   >suzu様

長文が好きであろうsuzu様の為に長めにしている事は案外知られておりません。
読み手あっての当ブログでありますから。
今年も御節はブログでお伝えいたしますので、読み逃す事のないように!(大げさ)
体のご心配までしてくださってありがとうございます。体は人より丈夫に出来ておりますので今年も乗り切れる、と判断しました。

今年もよろしくお願いいたします。



   >uganda様

年末、年始、そして、新聞上でもuganda様をお見かけできて何かの縁を感じました。
私も今年は一番大きな〆飾りを購入できるよう頑張って働きたいと思います。

今年もよろしくお願いいたします。



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「極端な意地っ張り」 (フロム*ヤマガタ)
2009-01-06 04:05:20
…にならざるを得ない(もしくは、好んでそうする)状況に自分を追い込むのが「ドM」かと。
どれだけ意地を張れるか、ダメかも、そのギリギリに快感を覚える(時には不快感さえも)わけですよ。
「ドMATILDABAY」?(笑)
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